銀座・伊東屋、実は野菜工場もある高級ホームセンター

日経トレンディネット

建て替えのため、2013年から仮店舗での営業を続けていた銀座・伊東屋の新店舗が完成。創業111周年を迎える伊東屋の創業日でもある6月16日にグランドオープンした。

銀座通り沿いの看板と大きな赤いクリップは健在だ

オープンに際し、伊東屋の伊藤明社長は「銀座らしさを向上させ、『ここが自分の場所』と思える、心地良い場所と空間をお客様に提供することが新たな使命」と抱負を語っていた。

その具体的な形として各フロアごとにテーマを設け、文房具を中心にしつつ、「働く」ことをサポートする提案を行っている。ここでいう「働く」とはビジネスだけではなく、家事など生活の活動全体が含まれるという。それらを楽しむ人々に向け、文房具や道具だけでなく、「食べる」「移動する」といったことに関する商品も扱う。

銀座のど真ん中に野菜工場

特徴的なのは、11階の「FARM」と名付けられたフロア。ここは、何と野菜工場だ。ステンレスビルと呼ぶ旧本店の窓枠を使ったウィンドウ越しに見えるのは、水耕栽培の野菜。フリルレタスを中心に、ルッコラ、ケール、ミントが完全無農薬で栽培され、収穫された野菜は最上階である12階のカフェ&レストラン「Cafe Stylo(カフェ スティロ)」で提供される。銀座で作られた野菜を銀座で食す、銀座に根ざした伊東屋の新しい姿勢だ。

11階の「FARM」。この金属製の窓枠は旧伊東屋ビルで使われていたもの。
12階のカフェ&レストラン「Cafe Stylo(カフェ スティロ)」。営業時間は8時~22時(ラストオーダー21時)

Cafe Styloは8時から22時まで営業するアメリカンスタイルのカフェ&レストラン。店名のStyloはフランス語でペンを意味し、「働く人を身体の中からサポートする」がコンセプトだ。「エッグベネディクト」などの米国の定番朝食やパスタ、ウルグアイ産牛肉を使ったビーフステーキなど、朝食からディナーまで幅広いメニューを提供する。この二つのフロアを見ても、いわゆる文具店ではない、何か新しいスポットを目指していることが伺える。

ドリンクバーは朝8時から営業

建物は間口8メートル、高さ56メートルのスレンダーなビル。1階は銀座通り(中央通り)とあづま通りをつなぐ「開かれた道」として機能させる構造になっている。高い天井と全面ガラス張りの壁面、大きく開いている扉は開放的で、銀座の表通りと裏通りをつなぐ。まるで屋台のようなデザインの陳列棚には、グリーティングカードや季節商品(取材時には扇子や手ぬぐいなどが並べられていた)が賑やかに並び、「Drink」という名前のドリンクバーも用意されている。物販は10時からだが、このドリンクバーは8時から営業していて、レモネードやベリーティー、コーヒーなどを提供。待ち合わせ場所としても機能しそうだ。

1階は銀座通りとあづま通りをつなぐ道としても機能する。手前左側にドリンクバー「Drink」が見える。
オープン時、1階ではグリーティングカードや扇子が売られていた

2階から8階までは文房具を中心にしたフロア。2階は「SHARE」、3階は「DESK」、4階は「MEETING」、5階は「TRAVEL」、6階は「HOME」、7階は「FINE PAPER」、8階は「CRAFT」と、それぞれにテーマが設定されている。これらのフロアへのアクセスとして昇りのエスカレーターが設置されたのは、エレベーターと階段だけだった以前の店舗からのファンにはうれしいところ。もちろん、エレベーターと階段も用意されている(9階より上はエレベーターか階段のみ)。

売り場で手紙を書いて投函までできる

2階フロアの「Write&Post」スペース。右側にあるポストに手紙を投函できる

まずは、SHARE(シェア)がテーマの2階フロア。ここは「感謝と喜びを伝える。人とのつながりをかたちにする場所」。つまり、レターセットや便せん、ハガキ、封筒、ガラスペンやシールの道具、プチギフトに慶弔品などが並んだ売り場。それだけでなく、「Write&Post」と題されたスペースには、購入した便せんやカードを使って、ゆったりと手紙が書ける机と椅子を用意。伊東屋オリジナルデザインの切手も購入できるし、ポストも用意されているから、その場で投函もできる。

珍しいペンや万年筆も試し書きし放題

3階はDESK(デスク)、つまり「快適なデスク環境を提供する場所」。クリエイティブな環境をサポートするための各種ステーショナリーがそろう。デザインセンスの良いファイルフォルダ、切れ味の良いハサミ。ルーペや目覚まし時計といったデスク回りの小物から、リフレッシュのためのミントまで、クリエイティビティを刺激し、仕事をサポートする品が並ぶ。

ずらりと筆記具が並ぶ「Pen&Ink Bar」コーナー
仕事のテンションが上がるデザインの良い文房具もそろう

そして、このフロアの目玉になるのが「Pen&Ink Bar」。ずらりと並ぶ700種類の筆記具が全て試し書き可能。ノートとの相性もチェックできる。また、カウンターの向こうに並ぶ小さな扉の群れは、全てリフィル(替え芯)が入っていて、探しているリフィルを素早く提供。ボールペンだけでなく、シャープペンシルや万年筆も自由に試せるのは魅力的だ。

350円で自分好みのノートをオーダー

4階は「MEETING(ミーティング)」のフロア。個人のクリエイティビティを支えるのがDESKなら、ここでは、人と人とのつながりによって生まれる発想をサポートするという。つまりは、ノートやシステム手帳、持ち歩けるホワイトボードなどのミーティングツールのフロアだ。

セミオーダーのノートが作れるサービス「Note Couture(ノートクチュール)」のコーナー
ノートのスタイル(リングノートか中とじか)と中紙、表紙、リングの色を選ぶ

さらに、ミーティングをサポートするものとして、コーヒーサーバーやコーヒーメーカー、コーヒー豆までも取り扱う。また「Note Couture(ノートクチュール)」という、紙と表紙とスタイルを選んで自分好みのノートをその場で作ってくれるコーナーも設置。安いものでは1冊350円からオリジナルのノートが作れる。

旅がテーマのフロアに仕事スペースも

5階「TRAVEL(トラベル)」フロアにはカバンや革小物が並ぶ。カバンとペンケースが同じ棚に並ぶ店は珍しい

5階は「TRAVEL(トラベル)」。旅だけではなく、旅も含む「移動中、移動先でも、お気に入りのものの中で過ごす」モノを扱うフロアだ。

外で働くことをサポートするペンケースやポーチのほか、財布や名刺入れ、IDカードケースなどの、いわゆる革小物もこのフロアで扱われる。

また、レインコートやカバン、腕時計やサングラス、モバイルツールまで、外で使う道具がそろう。

さらに、「Nomad's Nook」と名付けられたワークスペースも用意。電源コンセント付きのデスクや陽当たりのよいベンチが自由に使える。

テラスチェアやガーデニング用品まで

6階は「HOME(ホーム)」。家の中での仕事をサポートするフロアだ。

テーマは「物の整理から思い出の整理まで」。カップやスプーン、ジューサーや鍋敷き、包丁まで幅広く扱うキッチンツールから、リビングで楽しむテーブルゲーム類、アメニティグッズ、テラスで楽しむためのチェアやガーデニング用品までそろい、ありそうでなかった「高級ホームセンター」という印象。さらに、思い出を整理するためのアルバム類がずらりと並ぶ。これだけ上質なアルバムを選べる店も珍しい。

6階「HOME(ホーム)」のキッチンツールのコーナー。デザインとアイデアに凝った製品がそろっている
掃除用具や水回りのアイテムなども

プロが常駐、相談できる「紙の専門店」

7階は「FINE PAPER(ファイン ペーパー)」。ここは、紙の専門商社竹尾と伊東屋のコラボレーションによる「竹尾見本帖 at Itoya」のフロア、つまりは「紙の専門店」だ。

1082種類の紙が用意され、ずらりと並んだ色見本から選ぶ「色で選ぶ」コーナー、目的別に紙が分類されたファイルから選ぶ「目的で選ぶ」コーナー、そして、竹尾の社員が常駐し、相談しながら紙が選べる「相談して選ぶ」コーナーに分かれており、目的にピッタリの紙が購入できる。

主に取り扱われているのは四六判の4切サイズ(545×394mm)。好きなサイズに切ってもらうことも可能だし、A4などのサイズの紙も扱っている。また、窓側には紙をテーマにした展示スペースがあり、オープニング時には「計算するオリガミ」展が開催される。

1082種類の四六判の4切サイズの紙が並んでいる様は圧巻だ
壁面いっぱいに並べられた色見本から好みの紙を選ぶ「色で選ぶ」コーナー

専門のスタイリストがギフトラッピング

8階は「CRAFT(クラフト)」。「紙を形へ、気持ちをかたちに」をコンセプトに、デザインペーパーやクラフトのための道具を揃えたフロアだ。エンボスや型抜きのためのツールやハサミ、カッターナイフ、定規、デコレーション用のリボンなどのほか、製本のためのツールや部品もそろう。さらに、窓側のスペースには、クラフト教室などが行われるワークショップ用のスペースも用意される。

また、膨大な種類のラッピング用紙やクラフト用アイテムを使い、専門のスタイリストがギフト用ラッピングを製作してくれる「Wrapping Stylist」のコーナーもある。

9階はオフィスとバックヤード。10階は「BUSINESS LOUNGE(ビジネス ラウンジ)」。いわゆる貸し会議室だ。最後は地下1階の「HALL(ホール)」。壁に吸音材を使い、天井高6メートルの多目的ホールだ。

全体を通していえるのは、製品ジャンル別に商品が並ぶ従来の文房具店とは大きく異なり、用途やライフスタイル、ビジネススタイルからモノを選ぶ店舗になっていること。高級筆記具や画材、名刺印刷といった従来の伊東屋でも充実していた部分は近くにある店舗「K.Itoya」のほうに移し、新店舗ではテーマ別のフロアで思いがけない商品に出会え、さらにそのアイテムを時間をかけて試し、選べるスタイルになっている。「何時間でもいたくなる店」といったところだろうか。

(ライター 納富廉邦)

[日経トレンディネット 2015年6月16日付の記事を基に再構成]

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