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遺言書を書けば節税に? 遺言控除の行方に注目 司法書士 川原田慶太

2015/7/17

 「遺言書なんて書いてみたところで、何か得することがあるのか」。このような問いに対する答えとして、これまではリスク対策やトラブル防止などを理由に挙げる説明が多かったと思います。しかし、そうした既存の説明を覆すかもしれない新しい制度の設計が話題になっています。

生前に遺言書を作成すると残った家族の相続税負担を減らせる制度が検討されている

 自民党の「家族の絆を守る特命委員会」が打ち出した「遺言控除」と呼ばれる仕組みで、日経電子版でも「『遺言控除』で相続トラブル防止 自民特命委が新設要望へ」(7月9日付)と報じています。亡くなった人が生前に遺言書を作成していて、かつ、遺言に基づいて相続を行えば、かかってくる相続税について一定の優遇が受けられるというものです。遺言書の作成の有無が条件になるという点で、かつてなかったタイプの減税措置だといえるでしょう。

 「どれくらいの優遇幅となるのか」「認定が受けられる遺言書のタイプは」など、具体的な制度設計はこれからなので、現時点でこの制度の有利不利を論じるのはいささか時期尚早です。しかし、もしこれが実現すれば、遺言書を作成するインセンティブになるのは確かだと思います。

(日本公証人連合会、司法統計、厚生労働省の統計を基に作成)

 とはいうものの、実はこの制度が導入されるかどうかにかかわらず、近年、遺言書は増加傾向にあります(グラフ参照)。

 「公正証書作成件数」は、日本全国にある公証役場で「公正証書」として作られた遺言書の総数です。「すぐに使える遺言書を作るには」でも紹介したように、遺言書には複数の形式が存在します。このうち、国の正式な機関に属する公証人が本人から聞き取りを行って、公証人の手によって作成するのがこの公正証書による遺言です。

 グラフにはありませんが、最新の2014年のデータによると、遺言書の件数はついに10万件の大台を超えました。ここ数年、増加の幅が大きくなっているのは、15年にスタートした相続増税を見据えての「駆け込み」需要なのかもしれません。

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