多言語化、外国人無料、進むインバウンド戦略日経エンタテインメント!

中国人観光客の「爆買い」が報じられるなど、注目度が増す訪日客向け市場。エンタテインメント界でもこうした「インバウンド消費」への対応が活発化してきた。

東京ワンピースタワーの中心施設は登場キャラクターをテーマにした8つのアトラクションと、ライブエンタテインメントショー。(C)尾田栄一郎/集英社・フジテレビ・東映アニメーション

2015年3月13日に東京タワー内にオープンした「東京ワンピースタワー」も、訪日客の恩恵を受ける施設のひとつ。人気アニメ『ONE PIECE』を基にしたこのテーマパークは、4月末に入場者数が10万人を突破したが、運営に携わるアミューズクエスト取締役の柏木伸裕氏は「肌感覚ですが、約2~3割が海外からの観光客」と言う。

「東京の中心となる場所に、仲間との絆や夢への挑戦を描いた日本文化を代表する作品をテーマとしたものを作りたかった」(柏木氏)として、『ONE PIECE』では初となる常設の施設が実現。世界35以上の国と地域でマンガが販売されているとあって、中国や台湾などアジアの観光客を中心に、欧米からの来訪も目立つ。

英語、韓国語、中国語で書かれた再入園案内。
レストランとグッズショップは入園料不要のため、外国人比率はさらに高まる。

アトラクションなどを説明するパンフレットは、英語、韓国語、中国語(簡体字・繁体字)版を用意。また、旅行会社のJTBもこの事業に参画し、台湾や韓国などで施設の案内をするほか、海外からのチケット販売・予約にも対応している。柏木氏は「オープンして間もないこともあり、海外に向けてのPRはまだ十分ではない」と言うが、予想を上回る訪日客人気に手応えを感じているようだ。

外国人だけで7000人動員

こうした訪日客対応は、海外人気の高いマンガやアイドル周辺で動きが早い。『NARUTO』などマンガを題材にしたミュージカルを上演する「AiiA 2.5 Theater Tokyo」では、英語や中国語の字幕を投影する眼鏡型端末を導入。2015年8月1、2日に開催した女子アイドルの祭典「TOKYO IDOL FESTIVAL」では、500人まで外国人を無料とした。

一方、インバウンド需要の底上げを目指し、情報発信する場の整備から始めたのがアソビシステム。所属するきゃりーぱみゅぱみゅの世界ツアーを2度開催するなど、早くから海外を意識してきたが、「日本に関するイベントは乱立気味で情報も拡散しがち。1社でできることにも限界がある」(アソビシステムの畔柳涼吏氏)と、2014年に「もしもしにっぽんプロジェクト」を立ち上げた。これは「ファッションや音楽、食など、日本のポップカルチャー全般をオールジャパンでアピールするのが狙い」(畔柳氏)。

昨年9月の「もしもしにっぽんFESTIVAL」は約1万5000人を動員。(写真左・右)
SNSでの拡散などを期待して、パスポート提示で入場無料とした外国人が約7000人に上った

他のコンテンツ企業やメディアと組み、ウェブやイベントなどを連携しながら「ニッポンファン」の拡大を目指すという。

2014年9月にはライブやファッションショーを組み合わせたイベント「もしもしにっぽんFESTIVAL」を開催。外国人は無料とし、約7000人を集めた。12月には海外からの旅行者のための「MOSHI MOSHI BOX原宿観光案内所」をオープンした。

2015年は3月のニューヨークから、11月の東京まで、7カ国8カ所でイベントを展開。開催地には「MOSHI MOSHI BOX」の海外版を設置し、現地メディアでも情報発信を行う予定。ここから7言語対応を予定するプロジェクトの情報サイトへつなげる目論見だ。

日本政府観光局によれば、2014年の訪日外国人客数は過去最高の約1341万人。2015年はそれを上回るペースで推移し、4月は前年同月比43%増の176万人が来日した。国内市場が頭打ちとなる中、成長が見込めるインバウンド向けの施策はさらに広がりそうだ。

(日経エンタテインメント! 山本伸夫)

[日経エンタテインメント! 2015年7月号の記事を再構成]

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