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ブームの予感(日経MJ)

佐藤でよかった ミスコン・飲み会…限定イベント

2015/7/19

金の表札を手に記念写真に納まるグランプリの佐藤麻衣さん(中)=4日、東京都渋谷区

全国で最も多い人口を誇るという「佐藤」さんに限定したイベントが注目を集めている。ミスコンテスト、企業の採用、飲み会……。佐藤の姓を名のっていれば、誰でも参加できる。ありふれた姓にこれまで本人たちのこだわりはさほど強くはなかったらしい。だが、スポットライトを浴びるうちに、佐藤さんたちは自らのアイデンティーに目覚め始めたようだ。

■採用、面接官も全員佐藤さん

「優勝しちゃいました。佐藤麻衣です」。4日、青山学院大(東京・渋谷)の会議場。舞台上で金色の「佐藤」の表札を抱えた仙台市の大学4年、麻衣さん(22)は照れながらも喜びを隠しきれない。麻衣さんと並んだ6人の20代女性も同姓。佐藤さん限定のミスコンの決勝で、麻衣さんは「ミス佐藤」に輝いた。

7人の佐藤さんはエプロン姿でポーズを決めたり、得意料理を作る動画を上映したり……。佐藤食品工業などの協賛企業、観客、インターネット中継の視聴者が投票した。

企画したのは同大のウェブデザインサークル「PIXEL」。「年齢、職業を問わず勝つことができるミスコン」を掲げ、5月に募集を開始し、応募数は全国各地の0歳~58歳の約300人と、想定を超える盛況ぶり。

友人に応募を勧められた麻衣さんは人生で初めてミスコンに参加。佐藤という姓について「印象に残らないとよく言われ、好きではなかった」。だが、優勝を果たしたことで「佐藤でよかった。就職活動に生かせるかも」と自分の名字に誇りを抱いたようだ。

人材不足、集客に悩む企業や飲食店も佐藤さんに着目する。コンテンツ事業を手がけるカヤック(神奈川県鎌倉市)では、5月中旬から1週間限定で佐藤さんに絞って募集した。5人の面接官はもちろん佐藤さんだ。

「佐藤さん飲み会」に集まった佐藤さんたち(東京都台東区のライブハウス「上野音横丁」)

「自分も佐藤だし、おもしろそうだった」。転職を検討中の東京都世田谷区の会社員、愛さん(38)は深く考えずに応募。面接では志望動機などの一般企業でもよくある質問に回答した。

学校、会社、どこに行っても必ず同姓がおり、少なからず煩わしさを感じていた。内定まで至らなかったが「佐藤が取り上げられたことがうれしかった」と満足げだ。

28人の応募者のうち内定者はゼロだったが、同社では「本来なら応募しなかった人も当社に興味を持ってくれたのでよかった」(担当者)。

8日夜、上野駅(東京・台東)から徒歩2分のライブハウス「上野音横丁」の飲み会。一角では5人の男女に結束が生まれていた。胸の名札に共通して書かれていたのはここでも「佐藤」だ。

東京都中野区の自営業、真実さん(29)は「珍しい姓の『勅使河原』とか『御手洗』とかに憧れる」と語る。東京都中野区、周作さん(35)は「一文字違えば元総理大臣の『佐藤栄作』、小説家の『遠藤周作』なのに」とつぶやいていた。

佐藤さん専用のグッズも登場する。フィギュアなどの製造のラナ(大阪市)は8月に「佐藤専用」のロゴが入ったノート、クリアファイル、ステッカー、Tシャツ、ボールペンの発売を予定。「佐藤さんへのプレゼントとしても広まりやすい」(担当者)と計算する。

■鈴木・田中…おなじみも続々

ラナが発売予定の佐藤専用ノート、クリアファイルなど

佐藤さん以外の動きも出始めた。2013年12月の明治安田生命の全国同姓調査によると、最多の「佐藤」姓の人口は約196万人。2位に「鈴木」(約186万人)、3位に「高橋」(約144万人)が続く。

今秋にも青山学院大では鈴木さん限定のミスコン、京都府では田中さん限定の街歩きツアーを開催。鈴木さん専用のグッズの発売も予定する。鈴木さんたちとのスポーツ対決を画策する佐藤さんもいるらしい。全国各地で名字で盛り上がる人々はこれからも増えそうだ。(小田浩靖)

[日経MJ2015年7月15日付]

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