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川遊び、都会でクールに 規制緩和で寄せる人波

2015/7/12

かつては排水で汚れ、見向きもされなかった都会の河川が変わってきた。河川敷を活用した飲食店などの進出が相次ぎ、水上スポーツを楽しむ人々の姿も増えてきている。

大阪市の中心部、市役所や歴史的建築物が立ち並ぶ中之島の近くを流れる土佐堀川。川べりの涼しげなテラス席では親子連れがくつろぐ。これは、河川敷の空間を有効活用した「北浜テラス」だ。

従来、河川敷は自治体などの管理下に置かれ自由に使うことはできなかった。しかし「水都大阪」を掲げる大阪では、オフィス街の飲食店など3店舗が連携し、2009年に社会実験として河川敷の常設利用を開始。現在は9店舗まで拡大している。

大阪などでの成功を受けて11年には河川法に基づく規則が改正され、全国的に民間利用ができるようになった。東京・隅田川沿いの喫茶店や徳島市の船着き場など、14年度までで23件の活用事例があり、水辺に新たなにぎわいを生む起爆剤になっている。

都会の河川は川辺だけでなく水面の活用も進む。横浜市の中心部・桜木町にほど近い大岡川では6月、サーフボードで川下りを楽しむ若者らの姿があった。会社員の福岡達也さん(25)は「川沿いの町並みがとても新鮮で、海よりも楽しめた」と満足げだ。

■川サーファー出現?

これはハワイ生まれの「スタンドアップパドルボード(SUP)」というスポーツ。ボードに立ち、パドルを使って前に進むので、波のない川でも気軽に楽しめる。大岡川で講習会などを手掛ける「水辺荘」の山崎博史さんによると、この近辺で活動を始めたのは12年9月から。「公共の桟橋を利用しやすくなったことがきっかけ」だという。

大岡川は護岸で囲まれ、重いサーフボードを持ったまま水面に下りられる場所がなかった。自治体がもつ船着き場や桟橋は鍵がかかり、使うには煩雑な手続きが必要だった。しかし近年は中心部の活性化をめざす横浜市などが主導し、市民が利用しやすいように手続きを簡素化。SUPのほかにもカヤックなど様々な水上スポーツ団体が盛んに活動するようになってきた。

大阪市も水面活用では負けてはいない。歩行者天国(ホコテン)のように、船舶が通らない時間帯に限り、市民がSUPや手こぎのボートを楽しめる「手こぎ天国(テコテン)」が実現しているのだ。

大阪市内でSUP教室を実施する日本シティサップ協会の奥谷崇代表は「川を利用する人々の間でルールを話し合う場所が整い、我々の意見も聞いてもらいやすくなった」と背景を説明する。11カ所ある公共の船着き場はNPO法人の大阪水上安全協会が管理し、一般人も1回100円で利用できる。河川を行き交う船舶と事故を起こさないよう、狭い場所を通過する場合の優先順位といった独自の航行ルールも策定している。

■東京五輪、試金石に

日本の大都市は舟運を支える河川とともに発展してきたが、高度成長期以降の水質悪化によって“厄介者”となり周囲の建物も川のある側に大きな窓やテラスを設けなくなった。下水道整備で水質が改善しても、川辺の活用はなかなか進んでこなかった。日本大学の岸井隆幸教授(都市計画学)は「川を利用する人が増えれば川をもっときれいにしようという動きにつながり、周囲の建物も川を向くようになる」と水辺活用の好循環につながる動きを歓迎する。

人が集まる魅力的な水辺の創出は世界の街づくりの潮流だ。東京都も今後10年の政策目標をまとめた昨年末の「長期ビジョン」で、隅田川沿いにテラスや夜間照明を整備するなどの施策を盛り込んだ。法政大学の陣内秀信教授(建築史)は「日本は海外と比べて水辺の活用が遅れている。20年の東京五輪を控えた今は大きく変わるチャンスだ」と指摘している。

■川の変化に驚き・喜びの声 新たなレジャースポットに

短文投稿サイトのツイッターでは、川の変化を示すつぶやきが数多くみられた。

4~6月には「街のど真ん中を流れる川で1人SUPしてるおっさんが!」「職場の窓から外を見たら鶴見川をカヌーで上って行く人がいた」と驚く声があった。また「リバーSUP新規開拓。新しい川を下るのはワクワクしますね」と楽しむ声や、川でSUPを楽しむ人を見つけ「ウチの近くは川に安全に出るポイントがない」と嘆く声も。

東京の隅田川などは「今日の午後は2回目のランニングデートでした」といった川沿いのランニングに関するつぶやきも目立ち、皇居と並ぶ一大スポットになっている様子がうかがえた。また「神田川にスズキがいた~ 川きれいになったんだね」と、純粋に水質改善を喜ぶ声もあった。

調査はNTTコムオンライン・マーケティング・ソリューション(東京・品川)の分析ツール「バズファインダー」を用いた。

(本田幸久)

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