思わずうっとり、「国際ゴカイの日」が制定される

2015/7/19
ナショナルジオグラフィック日本版

インドネシアとフィリピンの間のセレベス海で2007年に発見されたゴカイの仲間の「スキッドワーム(イカムシ)」。頭部にある10本の「触手」を使って水中の小さな餌を捕らえる。(PHOTOGRAPH BY MICHAEL AW)

ゴカイ類(多毛類)は地味な生きものだが、その日が来るのは時間の問題だった。2015年から7月1日が「国際ゴカイの日」になったのだ。第1回の今年は、オーストラリア博物館、英ロンドン自然史博物館、米国のスミソニアン自然史博物館など、世界各地の博物館でゴカイ類のすばらしい世界が紹介されている。

スミソニアン博物館のカレン・オズボーン氏は、「ゴカイ類は食物網の中で極めて重要な役割を担っています」と言う。「ゴカイ類はあらゆるものに食べられ、あらゆるものを食べるのです」

彼女が今回、国際ゴカイの日を制定しようと奔走したのは、スミソニアン博物館に36年間勤務し、2015年4月に心臓発作で急逝したゴカイ類研究者のクリスティアン・フォーカルド氏を記念するためだ。

フォーカルド氏は多くの人々に慕われていた。「彼はゴカイ類についての本を書いていたので、この分野の研究者で彼のことを知らない人はいません。無脊椎動物の研究者の間でもよく知られています」とオズボーン氏は言う。

「ですから私たちは、退屈な記念行事で彼をしのぶ代わりに、彼が心から愛したものについて世界中の人々に知ってもらう機会を作りたいと思ったのです」

幸い、ゴカイ類に関係がありそうな記念日は7月15日の「グミワーム(注:ミミズの形をしたお菓子のグミ)の日」しかなかったので、研究者たちはフォーカルド氏の誕生日である7月1日を「国際ゴカイの日」と定めることにした。

「ゴカイ類を気持ち悪いと思ったことは一度もありません」とオズボーン氏は言う。ゴカイ類の中には、特殊な剛毛をはためかせて泳ぐものや、体が半透明で、筋線維が光を反射してきらきら輝くものもいる。うごめく虫のなかで、賢者が最後に行き着く生物だ。「生きて動いている彼らを見ていると、うっとりします」

1万分の1

(PHOTOGRAPH BY INGO ARNDT,MINDEN/NATIONAL GEOGRAPHIC)

南極に近いウエッデル海で発見されたVanadis 属の多毛類。スミソニアン国立自然史博物館のカレン・オズボーン氏によると、現時点で約1万種の多毛類が知られているという。

透明

(PHOTOGRAPH BY INGO ARNDT,MINDEN/NATIONAL GEOGRAPHIC)

南極の近くの海で見つかったオヨギゴカイ(Tomopteris)の仲間。ちょっかいを出すと、オールのようないぼ足から火花のように輝く黄色い粒子を発射することがある。

まなざし

(PHOTOGRAPH BY INGO ARNDT,MINDEN/NATIONAL GEOGRAPHIC)

ウキゴカイ(Alciopidae)の仲間。内部にレンズがあるまん丸なオレンジ色の目がウキゴカイの特徴だ。この個体は、体の外に透明な口を突き出している。

ガラス細工

(PHOTOGRAPH BY DAVID LITTSCHWAGER,NATIONAL GEOGRAPHIC CREATIVE)

この小さく透明な生物もオヨギゴカイの仲間である。米国カリフォルニア州サンフランシスコのゴールデンゲート橋の下の海で採集した。

蛍光オレンジ

(PHOTOGRAPH BY INGO ARNDT,MINDEN/NATIONAL GEOGRAPHIC)

道路標識のコーンのような蛍光オレンジ色をしたこの動物はTravistopsis 属の多毛類で、南極半島の東のウエッデル海に生息していた。

(文 Jane J.Lee、フォトギャラリー Sherry L.Brukbacher、訳 三枝小夜子、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2015年7月7日付]

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