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スマホに関する知っておきたい法律知識

2015/7/13

日経ウーマンオンライン

最近のわたしたちの生活に欠かせないスマートフォン(スマホ)。そのスマホがきっかけとなって起こるトラブルも増えてきているようです。スマホにまつわる法律トラブルをアディーレ法律事務所の正木裕美弁護士がご紹介します。
Question: スマホを使いながら歩いたり、何かをすることを、「歩きスマホ」「ながらスマホ」などと最近よく呼びますが、「歩きスマホ」って法律的に禁止されているんでしょうか。また、自転車に乗っている時のスマホ使用や、車を運転している時の通話など、法律的にどのような罰則が定められているのでしょうか。

Answer: 「歩きスマホ」は、アメリカのニュージャージー州では規制される地域があるようですが、日本ではまだ規制されていません。日常生活とは今や切り離せないスマホですが、歩きスマホは、他の歩行者との接触や転倒などの危険があり、駅のホームからの転落事故も発生しているそうです。

それでは、乗り物に乗っている場合についてはどうでしょうか。

まず、自転車運転中のスマホ操作の場合は、道路交通法に基づいて条例で規制され、5万円以下の罰金になる恐れがあります。

次に、車の場合は、運転中の通話使用と画面をずっと見る行為が、道路交通法で禁止されています。これにより交通の危険を生じさせたときは3カ月以下の懲役又は5万円以下の罰金、交通の危険が生じなかったときは5万円以下の罰金とされています。

また、携帯電話使用等(交通の危険)は反則金9000円と2点減点、携帯電話使用等(保持)は反則金6000円と1点減点です(普通車の場合)。

「ながらスマホ」は命にかかわる重大事故を起こす危険をはらんでおり、いったん事故が発生すると多額の賠償責任を負うことも。ながらスマホは慎み、法律とマナーを守って利用するのが大切ですね。

Question: 飛行機では通常、携帯・スマホの使用を禁止されていますが、実際、機内で使用した場合、法律的にどのような罰則が定められているのでしょうか。また、飛行機にトラブルが起きた場合はどういった責任を取らなければいけないのでしょうか。

Answer: 航空法で、飛行機の運航の安全に支障を及ぼす恐れがある、携帯やスマホなどの通信用電波を発する電子機器を、正当な理由なく作動させることは禁止されています。携帯の使用をやめない場合、機長は禁止命令を出すことができ、命令に従わないと50万円以下の罰金や拘束、降機となりますし、逮捕された人もいます。

通常、各航空会社の旅客運送約款では、電子機器の使用禁止や、守らなかったときに損害賠償させることが明記され、旅客はこれに同意して搭乗しているので、携帯を使って飛行機にトラブルが起きたときは航空会社が被った損害を賠償しなければいけません。遅延や欠航のみならず、人命にかかわる事故になれば賠償額は莫大になることもあり得ます。

携帯が原因とみられるトラブルとして、衝突防止装置の誤作動、自動操縦の上昇中に急に傾斜、空中待機時に高度の逸脱、自動操縦で滑走路に進入中にコース表示が大きくぶれて戻らない、無線機の交信不能など、深刻なものも報告されています。

離陸前に飛行機のドアが閉まったときから着陸後の滑走終了後までは、電源を切るか機内モード厳守です。

Question: スマホには録音機能も入っており、わざわざレコーダーを買わなくても簡単に録音できるようになりました。先日、納得できる理由もないのに、いきなり上司から退職を要求されました。少し考えさせてほしいとその場は終わらせたのですが、返事をしなければいけません。その際、何かトラブルになった時のために会話を録音しようと思うのですが、相手に断りなく録音してよいものでしょうか。何かトラブルになった際は、証拠として断りなく録音した記録を使用できますか。

Answer: 無断録音は、秘密録音と法律では呼びますが、秘密録音を犯罪とする法律はありません。でも、上司に対するプライバシー侵害となる可能性があります。では、プライバシー侵害を伴う録音を証拠にできるのかというと、犯罪などの刑事事件の場合は、違法に収集されたものは証拠にできないルールがあり、秘密録音は、証拠にできないのが原則です。

これに対し、今回のように民事事件の場合は原則として証拠にできますが、秘密録音が相手の人格権侵害となり得るため、録音の手段方法が著しく反社会的と認められるときはNGとされています。こちらが暴力をふるったなどの事情もなく、単に相手に無断で録音しただけであれば証拠にできる場合が多く、実際に裁判でもよく証拠として使われています。

なお、裁判では、録音全体の音声データとその録音反訳(テープ起こししたテキスト文章)を提出します。雑音で音が悪くて肝心なところが聞き取れない…なんてこともあるのでご注意を。ちなみに、いったん退職に了承してしまうと後で争うことは難しくなるので、本当に退職する気持ちがないのであれば絶対にOKしてはダメですよ。

Question: 私の浮気が心配で、夫が私の携帯電話に勝手に遠隔操作アプリを入れていました。遠くにいても私が今どこにいるのか分かるGPS(全地球測位システム)機能や、私が電話で誰かと話している内容が盗聴できるアプリです。いくら夫婦でもさすがに勝手にこの様なアプリをインストールするのは法的にどうなのでしょうか。

Answer: パートナーのスマホの位置情報やバッテリー残量を監視する「カレログ」なんてアプリも以前話題になりましたが、今回のケースは法的にはNGでしょう。

実は2015年4月、妻の携帯に遠隔操作アプリを勝手に入れ、GPSアプリで居場所を確認、通話を盗聴、録音、メールを盗み見していた夫が、不正指令電磁的記録供用罪で逮捕された事案があります。

耳慣れない「不正指令電磁的記録供用罪」ですが、本来はコンピューターに不正の指令を与えるコンピューターウイルスの提供を想定した犯罪です。妻の行動を監視するために無断でインストールした遠隔操作アプリは、子供や老人の見守り、紛失携帯の捜索といった本来の目的とは外れており、携帯使用者の妻の意図とは無関係に携帯を動作させることができるので、ウイルスと同様の犯罪となりました。また、民事的にも、プライバシー権の侵害で損害賠償請求できる可能性があります。

技術の進歩とともに色々なことができるようになりましたが、夫婦でも恋人でも互いに対等で、相手への信頼が根底にあってこそ成り立つもの。監視や支配とは違いますよね。彼の歪んだ愛に不安を覚えたときは、弁護士や警察に相談するのも一つの手です。

この人に聞きました

正木裕美(まさき・ひろみ)
弁護士(愛知県弁護士会所属)。男女トラブルをはじめ、ストーカー被害や薬物問題、ネット犯罪などの刑事事件、労働トラブルなどを得意分野として多く扱う。身内の医療過誤から弁護士の道 へと進む。2012年には衆議院選挙に愛知7区より日本未来の党の公認候補として出馬し、「衆院選候補者ナンバーワン美女」とインターネットや夕刊紙で話題に。2015年にアディーレ法律事務所へ入所。ブログ「弁護士正木裕美のまっさき通信」も更新中。

[nikkei WOMAN Online 2015年5月19日、6月2日付記事を再構成]

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