マネー研究所

相続トラブル百科

相続税だけではない 富裕層狙い撃ちの課税強化 司法書士 川原田慶太

2015/7/3

 「相続増税」スタートの年となった2015年も折り返し地点を過ぎました。相続税の非課税枠(基礎控除)が大幅に減り、多くの家庭に影響するということで注目を集めましたが、実はその裏であまり騒がれることもなく、静かに進行を続けている資産への課税強化策があります。

 7月1日からは、いわゆる「出国税」と呼ばれる「国外転出をする場合の譲渡所得等の特例」の制度がスタートしました。のちほど紹介しますが、ターゲットはズバリ「1億円以上の有価証券等」を所有する富裕層です。こうした富裕層を対象とする新たな負担増は、始動間近のマイナンバー制度とも連動しながら、15年に入って一気にトーンを強めているといえるでしょう。

富裕層への課税強化がいよいよ本格的に始まった

 端的で分かりやすいのは、最高税率の引き上げです。所得税・相続税、ともに15年からいちばん高額な課税となる層への税率がアップしました。所得税は課税所得4000万円超の部分について税率が40%から45%に、相続税は資産6億円超の税率が50%から55%にそれぞれ引き上げられました。

 「たかだか5%」の上昇ではありますが、その5%が乗ってくる元の所得や資産が非常に大きいという前提があります。実質的に増える負担はかなりのものでしょう。

 もうひとつ、重点化されている課税テーマとして「国外」があります。世界にはさまざまな国や地域があり、そこを治める行政機関ごとに多種多様な税制があります。日本より所得税や相続税の負担が軽い、あるいはゼロに近いという国や地域は少なくありません。こうした税制や税率のギャップをうまく利用して、できるだけ税金の安い国で暮らしたい、負担のゆるやかな地域で資産運用を行いたいという動きが出てくるのは不思議ではないと思います。

 もちろん「富裕層とその保有資産が、税率の低い国外へ移っていく」というのは、去年や今年に始まった話ではなく、昔から存在していた流れのひとつではありました。国も対応すべく、以前から国外の居住者や国外財産に対して課税を強化するルールの整備を進めています。

 しかし、課税には大きな問題がありました。金融機関や行政の窓口などから豊富なデータがとれる国内とは異なり、いったん国外に出てしまったヒトやカネの動きは、そう簡単には捕捉できません。母体となる資産などの情報自体がよくわからないとなれば、いざ税金を取るといっても、なかなか実効力を持たせることは難しくなります。

 こうした問題に対処するために、14年からは「国外財産調書制度」が始まっています。非永住者を除く国内の居住者を対象に、5000万円以上の国外資産を保有する場合、毎年、期限内にちゃんとリスト化して、なにがいくらあるかを報告しなさいという制度です。15年からは、調書を出さなかったりウソの記載をしたりした場合の罰則が強化され、ケースによっては懲役刑が科されるという取り扱いまで始まりました。

マネー研究所新着記事

ALL CHANNEL