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一見、玩具・双眼鏡 不思議な北九州市の公共建築

2015/7/13

カラフルなブロック玩具を積んだような会議場に、双眼鏡を思わせる美術館――。北九州市内を巡ると、風変わりなデザインの公共施設が目に付く。特に目立つのが市の経済や文化、芸術を象徴する4つの施設。いずれも世界的な建築家、磯崎新氏の手によるものだ。工業都市のイメージが強い北九州市で、公共建築物がなぜ個性派ぞろいなのか探ってみた。
円柱が帆船のマストを思わせる「西日本総合展示場」

JR小倉駅の新幹線口から海側に10分ほど歩くと、ピンク色の外壁に、円柱が林立する建物が見えてくる。1977年に完成し、高度成長時代から市の産業振興に一役買ってきた「西日本総合展示場本館」だ。

円柱は帆船のマストを思わせるが、「単なる飾りではなく、内部に柱のない建物の屋根をつり橋のように支えている」と北九州活性化協議会の山崎朖(あきら)専務理事は解説する。同館は北九州市の外郭団体が運営。山崎さんはその前身の団体で建設に関わった。

円柱の根元は板が集まった形になっている。どのような方向から力が加わっても、円柱が一定方向に動くことでロープの張力で支えやすくしている。

カラフルなブロック玩具を積んだようなデザインの「北九州国際会議場」

その展示場と道路を隔てて建つ「北九州国際会議場」も磯崎氏の作品だ。完成は90年。黄色や赤茶色のブロック玩具を積み上げたようなビルは大型船の艦橋をイメージし、波打つ屋根で海を表現したとされる。帆船のような外観の展示場と統一感を演出している。

このほか「市立美術館」(74年完成)と「市立中央図書館」(同)も磯崎氏が設計した。美術館は2本の直方体が飛び出した形が特徴で、「丘の上の双眼鏡」とも呼ばれる。中央図書館は緑色のカーブしたカマボコ型の屋根が印象的だ。

双眼鏡を思わせる「市立美術館」
緑色のカマボコ型の屋根が印象的な「市立中央図書館」

「市の経済・芸術・文化を代表するそれぞれ重要な施設を、当時新進気鋭の建築家だった磯崎さんが手掛けたことになる」と山崎さん。「磯崎作品のような斬新な建築に、都市としての求心力や誇りを求める考え方が行政にあったのではないか」と話す。

北九州市で異彩を放つ公共施設は磯崎作品だけではない。98年に完成した「北九州メディアドーム」もその一つだ。主に競輪などの会場に使われており、菊竹清訓氏が設計した。一見すると普通の屋根付き競技場だが、航空写真では競輪選手のヘルメットの形になっていることが分かる。

上空から見ると競輪選手のヘルメットのような形をした「北九州メディアドーム」

こうした「個性派建築」が市の関連施設に多いことについて、建築物に詳しい北九州市門司麦酒煉瓦(れんが)館の市原猛志館長は、北九州市の成り立ちとの関連を指摘する。同市は63年に門司、小倉、八幡、戸畑、若松の旧5市が対等合併により発足した。

「磯崎作品の多くは2代目市長、谷伍平氏の任期に重なる。北九州市発足から約4年後に就任したが、住民意識はまだバラバラ。市民がまとまる象徴として、従来にない斬新なデザインの建物が必要だったのでは」と市原さんはみる。

北九州市発足から既に半世紀が過ぎたが、市民意識はまだ完全に一つになったとはいえない。磯崎作品後もメディアドームなど個性的な公共建築が登場する背景には、建築物という形に市民一丸の象徴を託す行政の思いが今も残っているからなのかもしれない。

(北九州支局長 青木志成)

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