電車の遅延で会社に遅刻、賃金カットもあり得る

日経ウーマンオンライン

こんにちは、社会保険労務士の佐佐木由美子です。毎朝、満員の通勤電車で出勤されている方は多いと思いますが、想定外の電車遅延で困った経験はありませんか。今回は電車遅延と遅刻について考えてみましょう。

突然、電車が動かない

最近、電車遅延の場面に遭遇することが何度かありました。人身事故などは以前から時々ありましたが、気になるのが「お客様対応」という理由が増えたこと。

たとえば、スマートフォン(スマホ)を線路に落として緊急停止ボタンが押され発車が大幅に遅れたケース。また、車内で身体が触れた・触れないといった乗客同士のトラブル。このときも非常停止ボタンが押され、さらに当事者が言い争って電車を降りないことから、出発ができない事態に…。いつどこで、こうした「お客様対応」に私たちが巻き込まれてしまうかわかりません。

電車が何らかの理由により定刻通り運行できなかったときに、鉄道会社は電車が遅延したことを証明するために「遅延証明書」を発行してくれます。

この様式は鉄道会社によって異なりますが、多くは手のひらに収まる小さな紙片で、発行会社名と駅名、遅延した日付と遅延時分などを記載するものが多いようです。

通勤ラッシュ時には、短時間に大量の証明書が配られるため、遅延時分の記載のないまま発行される場合も珍しくありません。一部の交通機関では、インターネットを経由して、証明書を入手することもできます。

電車遅延で賃金カットも

一般に、始業時刻までに仕事ができるように出社するのが社会人としての基本です。朝寝坊で遅刻するなら、自分の不注意だと気をつけるでしょう。

遅刻した場合、その時間分の労務提供義務を果たしていないわけですから、不足時間分について給与が受けられない、というのは原則的な考え方です。

しかし、始業時刻に十分間に合うように家を出たにもかかわらず、突然の事故などで電車の運行がストップしたらどうでしょう。

復旧しても、その後電車に乗り込もうとする大勢の人混みにもまれ、大変な思いをして会社に到着することになります。

このように、自分に落ち度のない遅刻で、公共交通機関からの「遅延証明書」があるときには、遅刻扱いは免除されるものでしょうか。

遅刻理由が電車の遅延であり、遅延証明書を会社へ提出したとしても、ノーワーク・ノーペイの原則は適用されることから、遅刻した時間分について給与をカットするのは、法律上の原則に従ったものと言えます。

つまり、特別な配慮を受けられずに給与をカットされても、特段問題にはならない、ということです。

もっとも、人身事故で1時間も遅刻したときに、1時間分の給与を差し引かれるのは、本人に落ち度がないのに厳しすぎる、という意見もあるでしょう。

そこで、鉄道会社等が発行する遅延証明書の提出を条件として、遅刻扱いとせず、給与カットも行わないとするルールを定めている会社も多くあります。

これは、あくまでも会社の裁量によって行われるものなので、以前勤めていた会社と今の会社のルールが違うからといって、問題になるわけではありません。

会社によっては、15分以下の遅刻は遅延証明書の提出があっても認めない、インターネット経由の証明書は不可、など独自のルールを設けていることもあるので、一度確認しておくとよいでしょう。

朝の通勤ラッシュには、常に電車の遅れはつきもの。ギリギリに出勤するのではなく、遅れを見越して出社するのが、大人のマナーといえるでしょう。

佐佐木由美子(ささき・ゆみこ)
社会保険労務士。米国企業日本法人を退職後、社会保険労務士事務所等に勤務。平成17年3月、グレース・パートナーズ社労士事務所を開設し、現在に至る。女性の雇用問題に力を注ぎ、「働く女性のためのグレース・プロジェクト」でサロンを主宰。著書に 「知らないともらえないお金の話」(実業之日本社)をはじめ、新聞・雑誌、ラジオ等多方面で活躍

[nikkei WOMAN Online 2015年6月23日付記事を再構成]