歌でベルーガをおびき寄せる
世界一の動物写真
海面近くを泳ぐベルーガ
デジタル写真の普及で最も大きく変わったのが、水中写真です。1回の潜水で撮影できる枚数が劇的に増えたため、フィルム交換のためにいちいち浮上する必要がなくなり、シャッターチャンスを逃すことが少なくなったのです。もちろん、水中ならではの難しさは、まだまだあります。アクアラングが必要なので撮影できる時間には限りがあるし、光の当たり方も地上とはまったく違います。漂う波間では、カメラを三脚で固定するわけにもいきません。しかし、見たことのない光景がまだまだあり、未知の生物も多いことから、水中写真は今でも最も驚きの写真が期待できる分野です。
この写真は、海面近くを泳ぐベルーガ(シロイルカ)をとらえた1枚。太陽の光が真っ白な体を柔らかく照らしています。ベルーガをこのようにクリアに撮影できる季節は限られています。写真家ダグ・アランは、音に敏感で好奇心旺盛なこの動物が人間の歌にも反応するのではないかと考えました。マウスピースを加えたまま"ハッピーバースデー"を歌ったところ、ベルーガが集まってきて、この一枚を撮影できました。
極楽鳥の求愛ダンス
一見、何の写真かわからないかもしれませんが、これはニューギニア島にすむ「極楽鳥」と呼ばれる鳥のしっぽです。体を逆さまにして、針金のような飾りをアピールしながら求愛のダンスを行い、交尾相手を誘っています。ウルトラマリン色の脚と真紅の羽、緑に輝く尾のコントラストが見事です。
それにしても、こんな構図を切り取るとは、写真家ティム・レイマンの優れたデザイン感覚には驚かされます。デジタル写真が登場してから、構図や色調を大胆に修正できるようになりました。しかし、この写真のように自然のありのままの姿をとらえ、芸術的な作品に仕立てられるかどうかは、写真家の本当の力量が問われるところです。
(日経ナショナル ジオグラフィック社)
[ナショナル ジオグラフィック『世界一の動物写真』を再構成]
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