アジア投資銀への参加見送りは正しい(安東泰志)ニューホライズン キャピタル会長兼社長

2015/7/5

カリスマの直言

「AIIBへの参加は、日本にとって利点が少なくむしろ多くの問題がある」

中国が提唱するアジアインフラ投資銀行(AIIB)への出資の是非についてここ数か月、内外で盛んに議論されているが、参加を見送っている政府の方針は正しい。安倍政権は、アジア開発銀行(ADB)と連携して今後5年間で約1100億ドルを「質の高いインフラ投資」としてアジア地域に投じるとしており、その過程でAIIBと協力できる部分があれば協力すればよい。筆者がそう考える理由は以下の通りだ。

中国は、国際通貨基金(IMF)やADBにおいて、新興国が経済力の拡大に応じた発言権が確保されていないことをAIIB設立の理由の一つに挙げている。しかし、ADBの融資のうち、実に4分の1以上は中国向けであり、中国とインドだけで半分を占めている。自分たちが最大の借り入れ国であるADBにおいて両国が発言権を強めることは利益相反である。

そもそも、こうした国際機関の融資は、出資金で賄われるわけではない。その融資のほとんどは、一定以上の高い格付けを持った当該国際機関自身が債券を発行して調達している。たとえば、ADBは最上級のトリプルA格を保有しており、低利調達が可能であるからこそ、融資先にも低利の資金を提供できるのだ。

なぜADBが高格付けを得ているかといえば、その運営に透明性があり、長年の実績(トラックレコード)もあることで、健全な銀行経営ができる機関だと世界の投資家から広く認知されているからだ。

中国はAIIBで域外諸国の出資比率を25%以内にする方針であり、現時点で中国の出資比率は30%超、インドは8%台になる。この2国を含め、全体の75%がアジア諸国からの出資であり、運営にもその比率が反映されるとなると、結局のところAIIBは、「アジア諸国、特に中国とインドが、自らのインフラ整備のために、自ら資金調達を行う」という根源的な利益相反構造を持つ機関だということになる。

この利益相反構造が存在する限り、AIIBが高格付けを得ることは難しいと言わざるを得ない。中国がAIIBに日本を誘い込みたがっているのは、端的にいえば、この利益相反構造を薄め、少しでも高格付けを得て低利の資金調達を実現したいからに他ならない。

加えて、国際機関は継続的に増資を行っていくのが普通であり、これまでの国際機関では、その都度、経済力などに応じて多くの先進国が負担を分けあってきた。仮にAIIBに日本が参加したとしたら、参加時点では日本の出資比率は12%程度になるとされており、これに伴って中国の出資比率は若干下がるかもしれないが、圧倒的であることに変わりない。

しかし、中国は今後永続的にその負担を続けられるのだろうか。仮に何らかの事情で、そうできなくなった場合、「域外国25%」の枠で参加している欧州諸国と違って、「域内国」である日本は、中国の尻拭いをしなければならなくなるが、日本はそこまで中国の将来を信頼できるのだろうか。逆にいえば、欧州諸国は「域外国」として、わずかな出資で済み、将来何かあったときの責任も軽くて済むからこそ安易に参加表明できるのであって、「域内国」日本は、慎重な上にも慎重に参加の是非を検討すべきなのだ。

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