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能登のグルメに舌鼓 観光列車でのんびり

北陸鉄道紀行(中)

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NIKKEI STYLE

新幹線の魅力がスピードならば、のんびり走ることを売り物の一つにしている列車もある。のと鉄道が4月末に運行を始めた観光列車「のと里山里海号」だ。石川県の七尾―穴水間33.1キロを普通列車で約40分のところを、景色の良い場所で停車したり徐行したりしながら約70分かけて走る。15日から穴水町で「まいもん(うまいもの)まつり・夏の陣」が開催されていると聞き、観光列車に乗ってプチグルメの旅に行ってみた。

「鳥総(とぶさ)立て 船木伐るといふ 能登の島山 今日見れば 木立繁しも 幾代神びそ」(鳥総を立てて船用の材木を伐採するという能登の島山よ 今日見ると木立がしげって幾多の年月を経てなんと神々しいことか)

奈良時代の貴族で歌人だった大伴家持は、越中の国守だった際に能登を訪れ、こう読んだそうだ。古代より風光明媚(めいび)な場所として知られていた能登半島。七尾―穴水を結ぶのと鉄道は能登半島の東側、七尾湾に面した海岸線に沿うようにして走っている。

眠い目をこすりながら金沢駅を午前6時56分発の普通電車に乗って揺られること約1時間半、終点の七尾駅に到着した。金沢方面からだと里山里海号はこの七尾が始発となる。同9時1分の出発までまだ30分あるが、待合室はけっこう人が集まっていた。金沢などから同じ電車に乗ってきた人のほか、観光バスで穴水駅にやって来たツアー客もいるようだ。

有名シェフのスイーツプランも

改札口近くに設けられた臨時切符売り場でチケットを購入。スイーツプランは運賃込みで大人3000円(子供2500円)で、乗車のみの基本プランは同1500円(同1000円)。スイーツプランは車内でNHKの連続テレビ小説「まれ」で製菓指導をしている辻口博啓氏のロールケーキなどが味わえる。東京・自由が丘の洋菓子店「モンサンクレール」のオーナーとして有名な辻口シェフは石川県七尾市出身。そうした縁もあって今回、里山里海号とのコラボが実現したそうだ。

出発時間の10分ほど前になって、里山里海号がホームに入ってきた。日本海の青い海をイメージした濃いブルーにえんじのラインが入った車体は、初夏の日差しを浴びて鮮やかに輝く。まだ運行開始から約2カ月の真新しい車体は、鉄道ファンでなくてもカメラに収めたくなる。運転士の畑中小百合さんがちょうど来たので、車両の横に立ってもらい写させてもらった。畑中さんはのと鉄道で10人いる運転士の中で紅一点。「楽しんでくださいね」と笑顔で声をかけられると、旅行気分も自然に高まる。

里山里海号のゆったりコースの運行時刻表
列車名七尾発和倉温泉発穴水着プラン
1号9:019:0810:12スイーツプラン
3号12:2212:2913:35
5号15:3315:4516:46ほろ酔いプラン(土曜のみ)
列車名穴水発和倉温泉着七尾着プラン
2号10:4711:5612:02
4号14:1415:1115:17スイーツプラン

(注)土曜日曜祝日と、7月25日~8月31日に運行。水曜運休

2両編成の車内に乗り込むと、海側の景色がよく見えるようにと一部座席は窓の方を向いて座るようになっている。6人程度まで並んで座れるボックスシートもあり、これも海側の窓を向いている。通常の列車にある対面座席もあるが、窓側を向く座席が人気なようだ。

車内で目に飛び込んでくるのは能登地方の伝統工芸品の数々。珠洲焼、能登島ガラスなどが陳列ケースに並ぶほか、車内の間仕切りは田鶴浜建具の組子細工の中に輪島塗のパネルを組み込んだ豪華なもの。「里山里海号を工芸品が並ぶギャラリーとしても楽しんでもらいたい」と、のと鉄道旅行センターの東井豊記さんは話してくれた。建造費は2両で3億円かかったそうだ。

七尾駅を出発して7分ほどで和倉温泉駅に着く。ここはプロが選ぶ日本の旅館で35年連続総合日本一になった加賀屋があることで有名だ。

里山里海号にはアテンダントが乗り込み、車窓から見える風景の説明や、スイーツプランの場合はコーヒーなどのサービスをしてくれる。車内の工芸品も「組子細工の模様にはいろいろ意味があります。一番上の麻の葉には魔よけの意味があって、赤ちゃんのおむつの模様に使われることもあるそうです。2段目は機織り機の筬(おさ)で、3段目は……」とわかりやすく解説してくれる。

そうした説明を聞くうちに、最大の楽しみであるスイーツが配られる。ロールケーキは能登ミルクを使ったクリームがたっぷり使われ、口の中にほどよい甘みがフワッと広がる。「これが世界の数々のコンクールで優勝した辻口シェフの味か」と思いながらじっくり味わう。珠洲の天然塩を使った塩サブレ、石川県産のイチゴのコンフィチュール(ジャム)を使ったマカロンは、土産として持ち帰ることにした。

そうするうちに能登中島駅に到着、この駅には明治から昭和にかけて活躍した鉄道郵便車が保存されている。かつて全国の津々浦々に郵便物を運んだ鉄道郵便車だが、高速道路網や飛行機の発達とともに徐々に姿を消していき、1986年に廃止となった。能登中島駅にあるのは「オユ10」の車両で、日本では2台しか残っていないそうだ。この駅では10分余り停車するので、じっくり鉄道郵便車の見学もできる。

同駅を発車すると、七尾市深浦地区の漁港、能登島にかかるツインブリッジ、ボラ待ちやぐらの3つの場所で徐行または一時停止する。ビュースポットに来ると、車窓にはカメラが鈴なりになる。

ボラ待ちやぐらはかつて七尾湾で行われていた伝統漁法のため、海に建てられた建造物だ。漁師はこのやぐらの上でボラが来るのを待ち、通った瞬間に仕掛けた網を引き上げていたそうだ。こうした漁法は一時行われなくなっていたが、近年復活した。穴水町出身の力士、遠藤が締める化粧まわしにはこのボラ待ちやぐらが描かれているものもあるという。

終点の穴水駅に近づいてきた。直前のトンネルでちょっとした「プレゼント」も用意されている。トンネルに入るとトンネル内のイルミネーションが点灯。満天の星の中を通り抜けるような感覚に、あちこちから「きれい」との歓声が上がった。

午前10時12分に穴水駅到着。辻口シェフのスイーツに舌鼓を打ち、能登の豊かな自然を眺めあっという間の約70分だった。「能登は都会とは違い何にもないが、その何にもない良さをみなさんに伝えたい」とアテンダントの1人、角間裕子さんは話す。女性運転士の畑中さんは「車内で飲み物のサービスもしているので、なるべく揺れないように気をつけて運転している」と苦心を語る。土曜の午後3時33分七尾発は能登の地酒やワイン、地ビールなどが楽しめる「ほろ酔いプラン」(3500円)もある。

穴水駅で降り、「珍しいものがある」という来迎寺に行ってみることにした。同寺は嵯峨天皇の勅願により814年に創建され、平安末期から鎌倉時代の武将、長谷部信連によって本堂が再建された。本堂前のライコウジキクザクラは春には花びらが何百枚もある花が咲く見事な桜で、石川県の天然記念物に指定されている。

「変わったもの」とは幽霊の2幅の掛け軸だ。そのうちの一つは円山応挙の作と伝えられ、もう一つは竹文の作という。「竹文という人がどういう人かは分からないが、この掛け軸はかつて能登半島を旅していた行商が、商売がうまくいかずに供養してほしいと預けていったもの。寺で2つ並べて供養したところ、商売がうまくいくようになり、それならこのまま続けてほしいと置いていったそうだ」と住職の加波祐正さんが由来を話してくれた。来迎寺は池を配した中庭も見どころの一つ。「池は上から見ると『心』の字のようにも見えるので、心を映す鏡の池ともいわれている」と加波住職はいう。

穴水町でサザエのフルコース

来迎寺を後にすると、ほどよくおなかがすいてきた。穴水町では7月15日まで、サザエのフルコース(税別3800円)が味わえる「まいもんまつり・夏の陣」を開催している。「まいもん」とは能登の方言で「うまいもの」のこと。10軒の飲食店(一部店舗は単品のみ)が提供し、フルコースは前日までの予約が必要だ。

「サザエは年中とれるが、冬は身が固くてやせている。今ごろの時期が一番うまい」と料理店の雁月の主人、岡本正之介さんは話す。フルコースのメニューは各店共通で、サザエの造り、酢の物、つぼ焼き、サザエご飯など8品。ただ店舗によって多少違いはあり、雁月は「炊き込みのサザエご飯でなく、サザエの刺し身と海藻をわさびじょうゆでまぶしてから、それを白米にかけて食べてもらう」のがこだわりだという。

サザエの刺し身のコリコリとした食感がたまらない。つぼ焼きにしようと網にのせると、サザエがピュッと塩を吹いたのには驚いた。岡本さんから「まいもんまつりは、秋は牛肉、冬はカキ、春はイサザ(白魚)と四季折々の旬の食材でやっている」と聞き、また訪れたくなった。

能登の景色と食を満喫できる能登の旅。ゆっくりと列車で出かけるのもいいかもしれない。

のと里山里海号は土曜・日曜・祝日と7月25日~8月31日の夏休み期間は時間をかけて走る「ゆったりコース」を運行(水曜運休)。「スイーツプラン」や「ほろ酔いプラン」がある。空席があれば当日でも購入できるが、予約した方が無難だ。

平日は「カジュアルコース」(同)として、通常の普通列車に観光車両を1両連結して1日6便運行。ビュースポットでの徐行などはせず、通常と同じ40分程度で走る。乗車券のほかに300円の整理券が必要で予約は不要だ。

(金沢支局長 鉄村和之)

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