東京・二子玉川の商業施設「二子玉川ライズ・ショッピングセンター・テラスマーケット」(以下、テラスマーケット)内に2015年5月3日、生活提案型家電店をうたう「二子玉川 蔦屋家電」(以下、蔦屋家電)がオープンした。
その名の通り、同店を手がけるのは「TSUTAYA」を展開するCCC(カルチュア・コンビニエンス・クラブ)。同社は“本屋が作る街”をコンセプトにした複合商業施設「T-SITE」を代官山や湘南に展開しているが、今回のテーマは“ライフスタイルを買う家電店”。「ライフスタイルを強力に一変させる家電に目をつけた」(CCC)という。
なぜ二子玉川で、しかも家電店なのか。同社によると、「この街に欲しい施設は何か」という質問に対し、代官山で1、2位となったのが「カフェ」「本」だったのに対し、二子玉川では「映画館」「家電量販店」だったそうだ(映画館はすでに同じテラスマーケット内にオープンしている)。
まず「どんな奇抜な家電店なのか」と期待に胸を膨らませて1階正面から店に入ると、第一印象は「家電が見当たらない」。
本の売り場がさまざまなレイアウトで広がっていて、その回りにカフェや音楽レンタル、iPhoneを中心にしたモバイル機器、文具、電動アシスト自転車などのコーナーがある。本売り場がさまざまなジャンルの売り場と連動したT-SITEの蔦屋書店と同じような印象だ。
2階はおしゃれなセレクトショップのイメージ
一方、2階に上がるとフロアが明るくなり、美容・健康器具や掃除機、洗濯機、冷蔵庫、空気清浄機などの白物家電が並ぶ。木の質感を生かしたテーブルやじゅう器に商品がゆとりをもって並べられており、おしゃれなセレクトショップというイメージだ。
さらに、同じフロアに高級家具の「アルフレックス」、高級オーディオビジュアル機器の「バング&オルフセン」、ボタニカル(植物)を扱う「ソルソ ホーム」なども出店。それぞれの商品を組み合わせて展示したスペースもあり、利用シーンが想像しやすい売り場になっている。
蔦屋家電は家電店じゃない?
全体的にはゆったりした空間で居心地が良かったが、本の売り場を中心にさまざまなジャンルの売り場との融合を図っているT-SITEと変わらないというのが正直な感想。家電を買う気マンマンで訪れると、「これが家電店?」と拍子抜けしてしまうかもしれない。
ただ家電量販店と決定的に違うのは、各フロアに必ず店員(コンシェルジュ)が立っており、こちらの事情やニーズを聞き取ったうえで、それに合った商品を提案してくれること。家電量販店では売り場に店員がいないことが多く、我々はそれを当たり前として買い物をしている。しかし、家庭環境や家族構成などによって選ぶべき商品が変わる家電だからこそ、相談できる店員が必要だと改めて気付かされた。
また、アップル製品などモバイル機器の展示コーナーにイスを設けたり、フロアの中央に大きな休憩スペースを用意するなど、「家電店」という前提で考えるとユニークなポイントがたくさん目に付く。蔦屋家電というネーミングの狙いはまさにここにあったのでは、とも感じた。
(日経トレンディネット 山下奉仁)
[日経トレンディネット 2015年5月14日付の記事を基に再構成]