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明るい高架下、都心変える 未利用空間を実験場に

2015/6/14

薄暗く近寄り難いイメージが強かった鉄道などの高架下の風景が変貌してきた。実験的な商業施設の開業が各地で相次ぎ、新たな流行の発信拠点に生まれ変わりつつある。

東京・秋葉原駅と御徒町駅の間にあるJRの高架下。ここに、JR東日本グループがご当地グルメの祭典「B―1グランプリ」の食堂を7月上旬にも開業させる。富士宮やきそば(静岡県)など、歴代グランプリの味を都心でも気軽に楽しめるようになる。

秋葉原―御徒町間の高架下は2010年以降に再開発が相次いだ。革製品などの専門店が並ぶ「2k540」、全国のローカルな食材をそろえた「CHABARA(ちゃばら)」が誕生。新たな人の流れを生み出している。

現場に近い仲徒一丁目町会(東京・台東)の会長、熊倉健二さんは「以前は高架下にゴミを捨てられたり落書きされたりして苦労してきた。今は明るくなって町が活性化している」と歓迎する。

こうした動きは東京だけではない。大阪市の中心部にある南海電鉄のなんば駅から南に歩いて約7分の高架下でも昨春に「なんばEKIKANプロジェクト」と銘打った商業施設が新たに開業した。

この場所も長らく倉庫として利用され、周囲に人通りは少なかった。現在は日曜大工(DIY)の専門店や自転車店などが軒を連ねる。なんば中心部の半分以下という安い賃料もテナントにとって魅力の一つだ。DIY店が女性に人気で「溶接女子」という言葉が生まれるなど、新たな流行の発信源になっている。

都心部に残された数少ない未利用空間をうまく活用して街の回遊性を高め、沿線イメージの向上や乗客の増加につなげたい――。こんな鉄道会社の思惑が再開発の背景にはある。とはいえ駅から離れた薄暗い空間に、駅前や「駅ナカ」と同じような商業施設を作っても勝ち目はない。

秋葉原―御徒町間の開発を手掛けるジェイアール東日本都市開発の千葉修二常務は「高架下の施設にはわざわざ足を延ばしても行きたくなるテーマ性が必要」。南海電鉄の座古達郎主任も「10人に1人でも熱心なファンを作り、繰り返し通ってもらえる施設づくりを目指している」と口をそろえる。高架下が鉄道会社にとっての“実験場”となり、ユニークな施設の開業につながっているというわけだ。

東京大学の小泉秀樹教授(都市工学)は「人口の都心回帰も高架下の活用を後押ししている」と話す。秋葉原を抱える東京都千代田区の場合、人口は90年代末以降に一時4万人を下回ったが、現在は約5万8000人まで回復。なんば駅の南にある大阪市浪速区も、過去20年あまりで人口が4割近く増えた。

大都市圏で90年代以降に人口の都心回帰が始まったのはバブル崩壊で地価が下落し、マンションなどの開発が進んだのが発端だ。国立社会保障・人口問題研究所の小池司朗室長は「単身者や共働き世帯の増加も影響している」とみる。郊外の庭付き一戸建てをゴールとする「住宅すごろく」の価値観が崩れ、職住近接の利便性を好む人が増えた。都心に新たな需要が生まれ高架下の利用価値も高まった。

東急電鉄も昨春、東横線の学芸大学―祐天寺駅間で、フランスで人気の古着屋などが入る商業施設を開業させた。感度の高い住民を呼び寄せるために、東急沿線では昔ながらのスナックなどが入居する高架下施設をリニューアルする計画が今後も目白押しだ。

近年は保育所や医療施設を鉄道の高架下に開設する動きも相次ぐ。道路の高架下も規制緩和が進み、様々な活用が模索されるようになった。長らく見過ごされてきた高架下が社会構造の変化とともに、都市生活の利便性を支える土地の供給源として重要性を高めてきている。

短文投稿サイトのツイッターでは高架下の変化に関する多数のつぶやきがみられた。

5月1日~28日の内容をみると「秋葉原高架下に広がる超絶オシャレ物作り系商店街を発見した!」「すごいおしゃれな雑貨屋さんいっぱいあった――――初めて知った!!」「仕事で東小金井に行ったら駅高架下がお洒落になっていてたまげた」など、町を歩いていて偶然発見した人からの驚きの声が目立った。

このほかに、「ステキな所教えて貰ったので来てみました」「行きたかった高架下のおしゃれカフェやっと行けた」など、友人同士の口コミやメディアでの紹介を見聞きして足を運んだとみられるつぶやきがあった。新規開業した商業施設が、新たな人の流れを生み出している様子がネット上からも浮かび上がった。

調査はNTTコムオンライン・マーケティング・ソリューション(東京・品川)の分析ツール「バズファインダー」を用いた。

(本田幸久)

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