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スマホ使った位置情報ゲーム、本能直撃し愛好者急増 実際の街を舞台に“戦闘”

2015/6/14

スマートフォン(スマホ)を使って無料で遊べる位置情報ゲーム「Ingress(イングレス)」(ナイアンティック・ラボ)の人気が急伸している。2012年11月にアンドロイド版でスタートしたが、14年夏のiOS版開始以降、一気にプレーヤーが増えた。自治体がまちおこしに活用するなど、展開は広がりを見せている。

イングレスは地球閲覧ソフト「グーグル・アース」などを手がけたジョン・ハンケ氏が生みの親。位置情報を使い、青と緑の2つの陣営が、現実の街に設定された「ポータル」と呼ばれる拠点をネット上で奪い合う。日本のプレーヤー数は公表されていないが、15年2月にはダウンロードが世界で1000万を超えたと発表。うち日本のダウンロード数は世界2位だ。

14年12月に東京、15年3月に京都で開かれたイベントにはそれぞれ約5000人、約5600人が集まった。東京では日比谷公園に集結後、新橋、麻布、恵比寿などのエリアを練り歩きながらゲームを楽しみ、終了後には渋谷でアフターパーティーも開かれた。

「ダイエットやいい運動になると聞いて、始めました」。こんな軽い気持ちでインストールした人も多いだろう。スマホを片手にポータルを目指し、寺院や銅像、公園などをひたすら歩き回る。「熱中するあまり気付くと数時間歩いていた」というプレーヤーも多く、確かに健康効果は実感できる。だがしばらくやり込むうちに、それがこのゲームの本質ではないことに気が付くはずだ。

「人間の本能を直撃するゲーム」。立命館大学映像学部教授でゲームクリエーターの飯田和敏氏はこう評する。自分のポータルが敵に攻撃される、味方に補強される、などがリアルタイムで分かり、他者の存在が強烈に感じられる。敵とその場で“戦闘”になることもある。「イングレスはポータルを占拠し、フィールドを作って陣地を拡大していく。そこに敵が侵入してきた時に感じる不快感に動物的な本能が反応し、思わずポータルを取り返しに出かけてしまう」(飯田氏)。

ゲームの拠点となるポータルは世界中に点在しており、イングレスのために海外に行く人も多い。国をまたいでプレーヤーが協力し合い、巨大な陣地(フィールド)を作るなど、これまでのゲームとはスケールが桁違いなのだ。

味方との協力もイングレスの重要な要素だ。ポータルを最高レベル(レベル8)に強化するためには、同じ陣営の仲間8人が、そのポータルを訪れなければならない。これを達成するため、プレーヤー同士はチャットアプリなどを駆使して、助け合うことになる。同じものを体験しているのに、一人でやるより複数でやった方が断然楽しい。行動経済学における「関係財」の概念を、イングレスは多分に取り入れているようだ。

ゲームの力を応用して、社会問題の解決を目指す――。数年前に「ゲーミフィケーション」という言葉が耳目を集めた。象徴的な事例はなかなか出てこなかったが、飯田氏は「イングレスはゲーミフィケーションの魅力的な概念を体現する作品になっている」と語る。

「引きこもり」「人と人とのコミュニケーション不全」「運動不足による健康悪化」……。イングレスはこれらの社会問題を同時に解決しつつあるとも言えそうだ。

観光客誘致に活用しようと、自治体もイングレスに熱い視線を送っている。

岩手県はイングレスなどのゲームを県のPRに活用するための研究組織を設け、地元の祭りに合わせたイベントなどを実施した。神奈川県横須賀市は自治体として初めてイングレス特設ページを開設。集客策の一環で市内の無人島・猿島への渡航料金をプレーヤー限定で半額にしたところ、12月~2月の土日・祝日に計455人が利用した。岩手と横須賀の広域連携による「ミッション」(ゲーム内スタンプラリー)も始まった。

たった1つのポータルを占拠、あるいは攻略するため、プレーヤーは陸路を走り、海さえ渡る。イングレスは地方に人を送り込むツールとしても効果を発揮し始めている。

(「日経トレンディ」7月号の記事を再構成、文・日経トレンディ編集部)

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