自転車のヒヤリなくそう 悪質違反に講習義務付け保険やヘルメット普及へ条例も

自転車の事故が後を絶たない。歩行者にぶつかって加害者になる例もあり、6月から危険な違反を繰り返す人に講習を義務付ける改正道路交通法が施行された。自治体は条例をつくり、保険やヘルメットの普及に力を入れる。安全に自転車に乗るにはどうしたらいいか。

6月上旬の日曜日、東京都世田谷区のスーパー、サミットストア成城店で、自転車安全教室が開かれた。画面を見ながらハンドルを操作する自転車シミュレーターを使い、都が派遣したスタッフが乗り方を指導する。成城警察署は改正道交法のチラシなどを配って事故防止を呼びかけた。

参加した59歳の女性は「加害者にも被害者にもなりたくない。普段から気をつけているが、より気をつけないと」と話す。

自転車は買い物や通勤・通学の足として、多くの人が利用する。警察庁によると、自転車が関連する事故は2014年、約10万9千件あった。10年前に比べ約4割減ったが、交通事故全体の2割を占める。自転車と歩行者の事故は約2600件で、10年間でほとんど変わっていない。

中でも問題なのは、自転車乗用中の死傷者の6割以上の人に、安全不確認などの法令違反があったことだ。ルール徹底は必須だ。

道交法改正もあり、参加者の交通ルールへの関心は高い(東京都武蔵野市)

こうした事態を受け、6月から改正道路交通法が施行された。「信号無視」「一時不停止」など14項目の危険行為で3年以内に2回以上、摘発された人には、安全講習の受講を義務付ける。講習は1回3時間で、5700円。一定期間内に受講しないと、5万円以下の罰金を科す。

講習義務付けはいわば最終手段だ。自転車に乗る一人ひとりが日ごろからルールへの意識を高めることが欠かせない。安全教室は子ども向けに学校で開くことが多いが、一般向けのイベントも少なくない。やり方は地域により様々だ。

武蔵野市は古くから力を入れてきた。武蔵野警察署と連携し安全利用講習会を年20回、開く。参加者は市の駐輪場を優先的に利用でき、専門家による整備・点検を受けた際に加入できる「TSマーク付帯保険」の費用補助の特典がある。

5月末の講習会に参加した約50人は自転車事故の状況や、道交法の改正内容に耳を傾けた。会社員の男性(63)は「駐輪場の優先権がほしいと思い参加したが、ルールを守らないといけないと実感した。保険にも加入したい」と話す。

条例をつくり、安全対策に力を入れる自治体が増えてきた。兵庫県は4月、「自転車の安全で適正な利用の促進に関する条例」を施行した。都道府県レベルの条例は全国で5番目というが、最大の特徴は10月から損害賠償保険への加入を義務づけることだ。

自転車の保険にはTSマーク付帯保険、自動車保険や火災保険の特約、専用の自転車保険などがある。兵庫県の加入率は同県の調べで24%ほど。一方、県内では小学生が60代の女性とぶつかり、裁判で保護者が約9500万円の賠償を命じられる例があった。

保険は万一の備えになるが、狙いはそれだけではない。「保険加入をきっかけに、安全への意識を高める。それが事故を減らすことにつながる」と県の担当者。県の交通安全協会は4月から年齢制限なく加入でき、示談交渉を受けられる保険を用意した。県によるとすでに2万件を超える申し込みがあったという。

ヘルメットの利用を掲げる自治体も多い。道路交通法は08年から、13歳未満の子どもを持つ保護者に対し、子どもにヘルメットをかぶらせる努力義務を課した。条例では、かぶる人の範囲を広げる例が目立つ。

14年10月に条例を施行した堺市は、すべての利用者に対しヘルメット着用を努力義務にした。今年度から購入補助付きの講習会を始める。小学生と保護者向け、高齢者向けの2種類がある。講習は7月から始まるが、7月分の高齢者向けがすぐに満員になるなど、応募が相次いでいる。

「大事なのは事故を発生させないこと。ルールへの理解を深めてほしい。1人でも多くの人にかぶってもらえる環境をつくっていきたい」と同市は話す。

これまで大丈夫だったからと油断することなく、備えを尽くし、安全に、安心して乗りこなしたい。

自転車乗用中の負傷者の約2割、死者の約6割を占めるのが高齢者だ。

日本自転車普及協会・自転車文化センターの学芸員、谷田貝一男さんによると高齢者の場合、加齢に伴う運転技術・体力低下に注意が必要だ。自動車や歩行者にぶつかるような事故に至らなくても、ひとりで転倒し、けがをすることがある。

転倒しやすいのは、段差や雨でぬれた路面。自転車をこぎ始める際は、ふらつきやすい。

対策の一つは自分に合った自転車に乗ること。車輪の小さな自転車の方が低速でもふらつきが少なく、足を楽につけるという。持っている自転車はサドルとハンドルの位置を低くする。サドルだけ下げるとバランスが悪くなるため、自転車整備店で調整したい。すれ違いの際は無理をせず、両足をついて止まるのが大事という。

「『自分の運転能力はまだ大丈夫』という過信や『この道は毎日通っている』といった慣れが危ない。事故の可能性は常にある。気をつけて自転車に乗ってほしい」と谷田貝さんは話していた。

(編集委員 辻本浩子)

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