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脂肪肝に効く「1日30分の速歩」 コーヒーも効果的

2015/8/16

日経ヘルス

脂肪肝の患者は国内に約1000万人いるといわれる。その1~2割は慢性的な炎症を起こす非アルコール性脂肪肝炎(NASH)という病気に移行するが、自覚症状はない。NASHになると命を脅かす肝硬変や肝がんのリスクが高まる。脂肪肝を発症するメカニズムと、それを食い止める方法を2回に分けて紹介しよう。今回は脂肪肝の予防や改善につながる食事や運動などを解説する。

脂肪肝が疑われたなら、すぐに悪化の予防、改善に着手しよう。女性の場合は特に更年期以降に脂肪肝のリスクが高まる。「閉経前は女性ホルモンが内臓脂肪をたまりにくくし、余ったエネルギーは皮下脂肪として蓄積してくれる。だが、閉経後は男性と同様に内臓脂肪として蓄積されやすくなる。閉経前と同じ食習慣を続けることは危険」と、慶應義塾大学保健管理センターの横山裕一准教授は話す。

(イラスト:いいあい)

食事では、「脂肪や糖分を抑え、大豆製品や青魚、赤身肉など良質なたんぱく質が豊富な食事を取るのがお薦めだ」(三越診療所の船津和夫医師)。

また、脂肪肝の原因の一つと考えられているのが酸化ストレス。そのため、抗酸化作用のあるビタミンやポリフェノール類を含む野菜や果物を取るのもいいという。なかでも手軽なのが飲料で、近年、コーヒーの作用が注目されている。船津医師は健診データをもとに、よくコーヒーを飲む群は脂肪肝の発症率が低いことなどを明らかにした(下グラフ)。

さらに、「運動を組み合わせることで、脂肪肝を改善する効果はよりアップする」と船津医師。これを示したのが2015年3月に肝臓専門誌に掲載された筑波大学の研究。正田純一教授らのグループは、NAFLDの患者を対象に、早歩きなど少し強めの運動を1日に30分以上行ってもらったところ、体重や腹囲に変化はなくても、肝臓の症状が改善すると報告した(下グラフ)。

169人の男性(BMI25~40)に、やや強めの運動(速歩など)を3カ月行ってもらった。速歩の効果は多くの人に現れたが、とくに週に250分以上を目安に歩いた群では体重に明確な変化はなくても、肝臓の脂肪が減り、脂肪肝の進行の指標となる血液中の線維化マーカーなどの値も低下した(出所:Hepatology;61,1205-1215,2015) (イラスト:いいあい)

睡眠も重要だ。睡眠の状態が悪くなると、血糖値のコントロールが難しくなるなどの事実が明らかになっている。その結果、脂肪肝と糖尿病を併発するケースが多い。横山准教授は「肝機能と睡眠の関連を、健診受診者755人について調べたところ、睡眠不足は肝機能の状態を悪くすることが分かった」と話す。

残念ながら、「脂肪肝対策に王道なし」(横山准教授)。脂肪肝の予防・改善に「これだけやれば」という方法は存在しない。毎日、コツコツと食事・運動・睡眠の改善に取り組むことだ。

NASHは、無症状で進む怖い病気だ。放置すると肝細胞が死滅・減少し、線維組織に置き換わる「線維化」が起こる。それが進んだ結果、肝臓が硬く変化し、正常な機能が失われた状態の「肝硬変」に至る。

NASHの経過に関する臨床研究では、5年で4人に1人、10年で半数に線維化が進行していることも分かってきた。さらに「肝がん」を発症する率は年2~4%とされる。

NASHになってしまうと、薬物治療はビタミンE剤などに限られ、健康な肝臓に戻すことは非常に困難となる。また、肝がんに至った場合、進行具合によって異なるものの、切除や肝移植などが主な選択肢となる。

■肝がんの治療に「切らない治療」も

肝がんの治療法は、外科的な肝切除、肝移植などが主な選択肢となる。ただ、がんが3cm程度以下なら、ラジオ波熱凝固療法などの切らない治療も適用になる。これは皮膚の外から肝臓に針を刺し、その先端にラジオ波を加えて「がんを焼く」治療だ。

■肝硬変の治療は症状の進行防止処置が基本

いったん線維化した肝臓組織を元の状態に回復させるのは難しい。治療は肝硬変で起こる貧血やビタミン不足を補いながら、線維化がそれ以上進まないようにする薬物療法が中心。具体的にはビタミン剤などの投与だ。アルコール性の場合、禁酒で肝機能が改善するケースもある。

■この人に聞きました

船津和夫さん
三越厚生事業団 三越診療所に所属する医師。専門は消化器(肝臓)。慶應義塾大学医学部卒業後、東京歯科大学助教授などを経て、三越総合健診センター所長に就任。12年6月から現職。「肝機能の値が気になる人は、2年に1度は腹部エコー検査を受けて」。
横山裕一さん
慶應義塾大学保健管理センター准教授。慶應義塾大学医学部卒業後、米国マウントサイナイ大学留学を経て、06年より現職。「閉経後の女性の体は、ホルモンバランスの変化が起こり、脂肪肝になりやすい。食事、睡眠、運動習慣を見直すことで防ぎたい」。

(ライター 荒川直樹)

[日経ヘルス2015年7月号の記事を再構成]

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