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お酒は飲まない、なのに脂肪肝 運動不足は要注意

2015/8/9

日経ヘルス

脂肪肝の患者は国内に約1000万人いるといわれる。その1~2割は慢性的な炎症を起こす非アルコール性脂肪肝炎(NASH)という病気に移行するが、自覚症状はない。NASHになると命を脅かす肝硬変や肝がんのリスクが高まる。脂肪肝を発症するまでの経緯と、それを食い止める方法を2回に分けて紹介しよう。今回は、飲酒しなくても脂肪肝になるメカニズムを解説する。
(イラスト:いいあい)

脂肪肝は、飲みすぎ、食べすぎ、運動不足などが原因で肝臓に脂肪がたまり、“フォアグラ”状態になる病気。飲酒習慣が原因のアルコール性と、飲酒しなくても発症する非アルコール性(NAFLD)に分けられるが、これまで医師が注意喚起を行ってきたのは主に前者だった。

大量飲酒の場合、肝臓に慢性炎症が起こり、やがて肝硬変、肝がんを発症するリスクが高い。対してNAFLDは、症状は脂肪の蓄積にとどまると考えられていたからだ。

この“常識”に疑問が呈されたのは80年代以降。三越診療所の船津和夫医師は「飲酒習慣がないのに肝硬変を発症する例などの研究が進み、NAFLD患者の1~2割が、肝硬変や肝がんに移行する、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)になることが分かってきた」と話す。

健康診断受診者を対象に腹部エコー検査で脂肪肝の有無(有病率)を調査。女性は20代では数%だが、閉経後(一般に50歳以降)に20~30%まで高まる。なお、男性では30代から60代まで年代差はほぼなく30~40%だった。(出所:J Gastrotenterol.;47,5,586,2012)
3つ以上該当する場合は要注意。健康診断の血液検査の結果などを確認しよう

肝臓は、食事でとった脂肪分を中性脂肪に変えて全身に供給するが、「運動不足などで消費するエネルギーが減ると、中性脂肪が肝臓にたまる。これが脂肪肝の状態」(船津医師)。このとき自覚症状はほぼない。

(イラスト:三弓素青、画像提供:船津医師)

そのうえ、「脂肪肝からNASHに移行するかどうかは体内の炎症性物質や糖代謝の変化などが複雑に関与しており、予測は難しい」と慶應義塾大学保健管理センターの横山裕一准教授は明かす。NASHに移行した場合、黄疸(おうだん)や全身の倦怠感などを自覚する人もいるが、症状を自覚したときには、既に肝硬変や肝がんに至っているケースも多いという。

脂肪肝は食事や運動で改善が可能。NASHになると健康な肝臓に戻すことは難しくなる(イラスト:いいあい)

とはいえ、怖い脂肪肝炎(NASH)も怖くない脂肪肝(NAFL)も始まりは同じ。「炎症を起こす前段階のNAFLD状態なら、食事や運動の改善で健康な肝臓に戻せる」と船津医師は話す。

そのためには早期に脂肪肝を発見することが重要だ。船津医師は、「健康診断の血液検査の数値に異常があれば、エコー検査を受けてほしい」と薦める。明確な診断基準がないため、エコーで肝臓の画像を見て、医師が総合的に判断するしかないからだ。

次回は、脂肪肝を予防・改善するための生活習慣について解説する。

肝機能の指標「AST」「ALT」の数値が一つの目安となる。ALT値がAST値を上回ると非アルコール性脂肪肝や慢性肝炎が疑われる。LDLコレステロールが急上昇している場合も要注意

■この人に聞きました

船津和夫さん
三越厚生事業団 三越診療所に所属する医師。専門は消化器(肝臓)。慶應義塾大学医学部卒業後、東京歯科大学助教授などを経て、三越総合健診センター所長に就任。12年6月から現職。「肝機能の値が気になる人は、2年に1度は腹部エコー検査を受けて」。
横山裕一さん
慶應義塾大学保健管理センター准教授。慶應義塾大学医学部卒業後、米国マウントサイナイ大学留学を経て、06年より現職。「閉経後の女性の体は、ホルモンバランスの変化が起こり、脂肪肝になりやすい。食事、睡眠、運動習慣を見直すことで防ぎたい」。

(ライター 荒川直樹)

[日経ヘルス2015年7月号の記事を再構成]

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