息子の夜泣きがきっかけでパパサークル設立
<カランカラン♪ ドアが開く♪ にぎわう店内>
そこは夜な夜な各地からイクメンが集う知る人ぞ知るバー。今宵(こよい)も、子育てトークに花が咲いているようです。
<シャカシャカ、ジャッジャッ♪料理をする音>
カウンターの中には、パパ料理研究家・滝村雅晴さん。ああ、今日は滝村さんがお店の厨房を取り仕切る月に一度のイクメン異業種交流会「イクメンCero」の日のようですね。滝村さんの向こうには、月替わりで滝村さんのサポートをする日本パパ料理協会の飯士(はんし)。この月は根岸パパ飯士が担当です。どんな料理を作ってくれるのか、楽しみです。
育児をしているパパ達の集まり「パパ会」や「パパサークル」。保育園や小学校などでは既にそういう団体が多く作られていますが、震災後地域との結びつきが見直されている中、最近では地域をつながりの場としたパパ団体も増えてきているといいます。
そんな中、今日のCeroのカウンターでスタイリッシュに飲んでいるのはその一つである「横浜パパ会」の代表をしている橋本亮介さんじゃないですか。ちょっとお話を聞いてみましょう。
子ども好きを自覚し、新しい自分が開ける気がした
――横浜パパ会って今、何人くらいで活動しているんですか。
橋本さん(以下敬称略)「会員制ではないのではっきりとした人数は分からないですけど、サイトに登録してくれているのは70人くらいです。でも、中心メンバーは自分を含めてほんの数人ですよ」
――橋本さん自身は元々部活のキャプテンとか、こういうリーダー的なことをやってきたんですか。
橋本「そういうわけでもないんですけど、最初にイベントをやるってことになった時に自分が言いだしっぺだったから、やらなきゃいけないかなと。そしたら思いのほか楽しかったので、続けてきちゃったような感じです」
――何かが覚醒したような。
橋本「あー、自分は相当子どもが好きだな、と。新しい自分が開ける気がしました」
――元々子どもが好きだったんですか。
橋本「いや(笑)。でも、奥さんは昔から子どもが好きでしたね」
――それが変わったきっかけはあるんですか。
橋本「本当に生まれた瞬間からですね。あ、俺、子ども好きだったんだって。自分でも意外でした。それからは奥さんと『こっちのほうが子ども好きだ!』って意味もなく争っています(笑)」
――家事・育児もやるようになったり?
橋本「そうですね。スタートは今3歳になる息子の夜泣きです。本当にひどかった。仕事を終えて帰ってくるともう奥さんがクタクタで自分がやるしかなかった。選択肢はなかったですね。泣いている子を抱っこして家の中を歩き回って、たぶん2キロくらいは歩いたんじゃないかな(笑)」
――大変だったんですね・・・
橋本「それが、そうじゃなかったんですよ。やってみたら夜泣きの対応が苦じゃなかった。そこでまた覚醒したんですよ」
夕食を毎日作って、お風呂に入れて寝かしつけも
――何が覚醒したんですか。
橋本「親としての感覚みたいなものですかね? 新しい自分が開けて気がしました」
――へぇー!
橋本「あ、おいしそうな料理ができたみたいですよ」
――アボカドディップとさっぱり野菜のマリネ。おいしいですね。
橋本「そうですね、どうやって作るんだろう」
――料理もするんですか。
橋本「夕食は毎日作ってますよ」
――僕と一緒じゃないですか!
橋本「そうなんですよ。夕方6時に奥さんと子どもが帰ってくるので、その前にご飯を作ります。その後、お風呂に入れるのも寝かしつけもやりますね」
――そうするとやっぱり奥さんとの距離も近くなりますね。奥さんってどんな人なんですか。
橋本「僕と同じ35歳で学校の先生をしているんですけど、デザイン系のことをやっているので、かなり感性の人ですね」
――うちの奥さんもデザイナーですけど、「感性の人」ってすごくわかります。
橋本「ねー、言ってみれば『天才』というか(笑)。実は元々同じようなことをしていたんですけど、奥さんを見ていたら同じことはできないかな~って思って転職したんですよ。今は、人事評価のクラウドサービスを開発・販売・運営しています」
――そうなんですか!もしかして橋本さん自身も感覚的な人なんですか?あまりそういう感じはしないですけど…。
橋本「思いっきり『理屈の人』ですね。すごく対照的」
――そういう状況だと、一緒に暮らしていくの大変じゃないですか。僕はそういう部分ではとても大変だと感じていますけど…。
橋本「確かに大変なところはありますよね。とにかくいろいろと合わないことが多いですから。でもなんか友情に近い感じというか、違うことがあっても、一緒にやっていくような」
パパ会の企画は夫婦でも話し合う
――奥さんは横浜パパ会の活動についても関わっているんですか。
橋本「どんなことをやるか、という企画は一緒に話し合っています」
――意見が違うことはないんですか。
橋本「ありますよ。でも、やっぱり奥さんが『これはいい!』って言ったものは確実に評判がいいですね。『理屈の人』と『感性の人』が両方面白いって思えると強いですよね」
――これからの横浜パパ会の野望はありますか。
橋本「野望はないです(笑)。でも、どうしようかとあまり考えこまずに、続けていくのがいいと思っています。いろいろやっていく中でパパ会というものが発展していくことがでたらいいなぁと漠然と思っています」
今、育児や家事をしているパパの中に、果たして結婚前からやる気満々だった人がどれだけいるでしょうか。世代、ということもあるかもしれませんが、かなり少ないのではないでしょうか。子どもの誕生などいろいろなきっかけで育児家事に目覚めたり、パパ会活動に目覚めたり、男だってどんどん変化していくものなんだと改めて感じました。橋本さんの次なる覚醒は何なのか。楽しみにしています。また、イクメンCeroでお会いしましょう。
●旗の台BAL Cero
東京都品川区旗の台5-6-10
営業時間 平日20:00~2:00 週末&休前日20:00~4:00 定休日なし パパ達が集う「イクメンCero」イベントは毎月第三水曜日 著者がカウンターに立つのは毎週月曜日(イクメンCeroの日も)
兼業主夫放送作家。1976年生まれ。日本大学芸術学部在学中から放送作家としての活動を始める。2002年に結婚。2004年に長女、2011年に次女が生まれる。長女が年長になるタイミングで、それまで保育園任せで二人ともフルに働き乱れてしまった生活リズムを戻すために仕事を減らして「兼業主夫」へ。家庭での担当は「夕食」「トイレ掃除」「ふろ掃除」その他、洗濯や掃除全般。NPO法人「イクメンクラブ」社員、NPO法人「Fathering Japan」会員、子育て親子情報番組TOKYO FM「DOCOMO LOVE Family」構成担当。「旗の台BAL Cero」では毎週月曜日担当。月に1回、各界のイクメンによる交流会「イクメンCero」を開催中。新著に『新ニッポンの父ちゃん~兼業主夫ですが、なにか?~』
[日経DUAL2014年9月4日付の掲載記事を再構成]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
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