雨の日に出やすい痛み 酔い止め薬と除湿が効くめまい、片頭痛、関節痛…「天気痛」対策ガイド(下)

日経ヘルス

雨が降る前に頭痛や神経痛が出たり、めまいを感じる人はいないだろうか。天気と痛みには関係があることは経験的に知られているが、最近の研究で、気圧の変化に耳の中の“気圧センサー”が反応した結果、症状が起こることが分かってきた。ここでは、代表的な症状の起きるメカニズムと対策を2回に分けて紹介しよう。今回は、片頭痛と関節痛について解説する。

【片頭痛】 自律神経が乱れ、血管が収縮して痛む

低気圧で内耳の気圧センサーが働くと交感神経が活性化する。そこから血管が収縮して痛みが出たり、副腎髄質を経由して痛覚線維の活動が亢進され、痛みが発生するなど、複数のルートがある

頭痛の中でも天気と関係するのは片頭痛。内耳の気圧センサーが作動し、自律神経が乱れることが一因だ。

應義塾大学医学部神経内科非常勤講師で、健康気象アドバイザーの舟久保恵美さんは、片頭痛が発生するメカニズムをこう説明する。「交感神経の興奮で収縮した血管がその反動で拡張。血管を取り巻く頭部の感覚神経である三叉神経が刺激を受けて痛み物質が放出され、血管の周りに炎症が発生する。ヒスタミンなどの炎症物質により、さらに血管が拡張し、三叉神経への刺激が強まって片頭痛が悪化する」。

痛みはできるだけ予防したい。まず、自分の頭痛が天気の影響を受けるタイプか確認しよう。「頭痛があった日と天気を書き込む天気日記を書くのがお薦め。天気痛の頭痛なら、予兆を感じたタイミングで酔い止め薬や頭痛薬を服用すると、痛みを抑えられる」(舟久保さん)。天気予報と連動して気圧変化を知らせるスマートフォンのアプリも登場している。

額や首の後ろを冷やしても痛みが和らぐ。マッサージは血管を広げるので逆効果だ。

【関節痛】 低気圧×高湿度×気温低下で悪化する

炎症が起きている関節は天気の影響を受けやすい。代表的なのが膝痛(しっつう)だ。

「ひざの軟骨がすり減る変形性膝関節症や、免疫異常で関節に炎症が起きるリウマチなどの疾患を持つ人は、雨が降る前に痛みを訴える人が多い」と自由が丘整形外科の天本藤緒院長は話す。普段は痛くないのに悪天候でひざが痛む人は、隠れリウマチの可能性もあるので注意が必要だ。

関節の天気痛は、気圧の変化に湿度や気温の変化が加わることでも悪化しやすいと分かってきた。「気圧と湿度の関節痛への影響を調べた実験では、高湿度と低気圧の両方を同時に負荷すると痛みが悪化した。また、気温の低下で皮膚表面の温度が下がることでも痛みが強くなるようだ」と天本院長。

そのため、「湿度の高い梅雨どきなどは、除湿が大切。除湿機やエアコンの除湿機能を使うなどして室内の湿度を調節した方がいい。エアコンを使う場合は、ひざに風が直接当たらないようにひざかけの活用を。痛みが出たら温める。手でさするだけでも効果がある」と天本院長はアドバイスする。

■この人たちに聞きました

舟久保恵美さん
 慶應義塾大学医学部神経内科非常勤講師。名古屋大学大学院医学系研究科博士課程修了。専門は「低気圧と痛み」。現在、ミサワホーム健康保険組合で社員の健康指導も手掛ける。
天本藤緒さん
 自由が丘整形外科(東京都世田谷区)院長。日本整形外科学会専門医、日本リウマチ学会専門医。膝関節、関節リウマチなどを専門し、難治症例の治療にも取り組んでいる。

(ライター 海老根祐子、構成 日経ヘルス 羽田光)

[日経ヘルス2015年7月号の記事を基に再構成]

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