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会計士・弁護士… 「なでしこ士業」に時代の追い風

2015/6/6

公認会計士、弁護士など資格を持つ女性の活躍の場が広がっている。専門領域の枠組みを超えて連携したり、社外取締役や国会議員などの候補としても注目を集めている。政府が女性の活躍を後押しする時代、士(サムライ)業の女性に追い風が吹いている。

5月末の夕刻、公認会計士、平林亮子さん(40)の都内・銀座にある事務所に、4人のサムライ女子が集まった。司法書士の藤田真弓さん(42)、社会保険労務士の石井清香さん(45)、税理士の木村三恵さん(47)だ。ここに弁護士の六波羅久代さんが加わり、女性士業のネットワーク「ソフィアネット」が発足したのは2007年。平林さんの呼びかけで始まった。

女性士業プロジェクト「ソフィアネット」の(左から)藤田、木村、石井、平林の各氏(東京都中央区)

平林さんの現在の主な仕事は経営コンサルタントだ。最近、相談内容が多様化し、自分の専門知識や情報だけでは対応しきれない案件が増えてきた。例えば、多い相談が事業の承継だ。跡継ぎがいない自分の会社をどうするか。税金に関する助言はできても、不動産の登記などは手に余る。これは専門家のネットワークを作るしかないと考えた。

知人の紹介で司法書士の藤田さんと会い、初対面から会社法談議で意気投合した。カフェで楽しそうに語らう2人の女性が、実は「種類株をどう活用するかで盛り上がっていた」(平林さん)とは、周囲は夢にも思わなかっただろう。

女性だけで集まるのは、緩く、細く、長く、つながろうと思ったからだ。男性に持ちかけると、「それは業務提携ですか」などと形式論が重視され、ネットワーク以外の人に仕事を紹介したら問題視されかねない。ソフィアネットでは仕事を紹介し合っても手数料は発生しないし、「こんなことを聞いてもいいのかと思うレベルの疑問を気軽に聞ける」(木村さん)。

女性を売り物にするのはいかがなものかと、参加を断る女性もいたが、士業女性は数が少ない。公認会計士の場合、約3万4千人のうち15%程度。だからこそ集まれば目立つだろうとも思った。狙いは当たり、5人そろっての起業セミナーの要請が来たり、中小企業大学校や明治大学から5人が交代で話す講座の依頼があった。女性ばかり4、5人まとめてやってくると、それだけで場の雰囲気が和む。

ソフィアネットの5人が士業を志した理由はほぼ同じだ。「資格を取れば仕事があるから」。平林さんは1994年4月、お茶の水女子大に入学後、2日目のガイダンスでショックを受けた。「皆さん、4年後に就職先はないと思って下さい」。努力して大学に入ったのに、いきなり夢も希望もなくなった。

資格を取るしかないと翌日、大学生協からパンフレットをごっそり持ち帰った。大学1年の春から昼間は授業、夕方から専門学校のダブルスクール生活が始まった。サークル活動や合コンといった優雅な女子大生生活とは無縁だったが、大学3年で公認会計士試験に合格した。

藤田さんも同様だ。世は就職氷河期、芸術やスポーツの才能がない自分ができるのは勉強だけだと、立教大学卒業後すぐに司法書士試験に合格した。

社労士の石井さんと税理士の木村さんは大卒後、会社勤めをしながら資格を取った。石井さんは第一生命保険で収益管理の仕事をしていた。人事部に社労士が1人もいないことを知り、30歳で士業デビューした。木村さんは西友で輸入関係の仕事をしていた。通関の業務に関わるうちに税理士を志し、同じく30歳で合格した。

当初5人で活動していたソフィアネットだが、弁護士の六波羅さんは12年11月、産後の体調悪化で急逝した。最年少の33歳、妹のような存在だったので、「訃報を聞いた日は一日中、涙が止まらなかった」(平林さん)。5人で始めたのだから、弁護士枠は永久欠番のような位置づけになった。

女性士業、なでしこサムライには追い風が吹いている。1月に相続税法が改正され、遺産に関する相談が増えているが、「遺族は女性というケースが圧倒的に多い。相談相手は女性の方が話しやすい」(藤田さん)。企業では女性管理職が増えている。人事、労務管理などで今後、女性視点からの助言が必要になるため、女性社労士の出番は確実に増えそうだ。「パートを含め働く女性が増え、働き方も多様化している。働く女性のトラブルは女性の方が親身になって話を聞ける」(石井さん)

公認会計士で女性士業プロジェクトソフィアネットのプロデューサーの平林亮子さん

会社法の改正などを受けて、経営者からの税務相談も増えている。「男性税理士は指導的な立場から助言しがちだが、女性税理士はまさに経営者の女房役として助言する」(木村さん)

平林さんは女性公認会計士のネットワーク、「CPA745(なでしこ)クラブ」を設立した。10人で始動し、千人規模の女性公認会計士の全国網を目指す。企業の社外取締役、社外監査役の依頼を受け、会計人材の派遣、講演要請に対応する。

6月に始まったコーポレートガバナンス・コードにより、上場企業の多くは2人以上の社外取締役を登用する見込み。女性の社外取締役が人気だが、なかなか候補はいない。日本総研副理事長の翁百合さんやソフィアバンク代表の藤沢久美さんは、すでに3社の社外取締役を兼務しているのに、就任依頼が後を絶たない。なでしこサムライは今後、社外取締役や社外監査役の有力な候補になるだろう。

平林さんには昨年暮れの衆議院総選挙で、野党から出馬要請があった。与野党とも女性議員を増やそうとしている。時代の追い風は、ますます強まっている。

(編集委員 鈴木亮)

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