おしっこの色が濃くなったら…それは脱水のサイン

日経ヘルス

紀元前の古代エジプトで、糖尿病はすでに、おしっこにアリが群がる病気として文献に記載されていたそうです。おしっこから、体の不調や病気がわかります。注目ポイントは色、頻度、量、におい、そして泡です。
(イラスト:江田ななえ、以下同)

今や、トイレの大半は洋式。排泄物を目にすることなく処理できてしまう。「からだのお便り」を確認するうえでは残念な状況だ。

排泄物には、体内の状態を示すさまざまなサインが現れている。見もしないで流してしまうなんて、実にもったいない。

今回のテーマは「おしっこ」。不調や病気のサインを、日本医科大学名誉教授の飯野靖彦さんに教えてもらおう。

おしっこの黄色、もともとは血の色

おしっこといえばまず目につくのは、色だろう。「あれは、古くなった赤血球を分解する過程でできる成分です」と飯野さん。赤血球は内部に、ヘモグロビンという赤いたんぱく分子を大量に含んでいる。血液が赤く見えるのは、ヘモグロビンの色だ。

古くなった赤血球は、脾臓で壊される。ヘモグロビンも一緒に分解され、ビリルビンという成分になる。ビリルビンは黄色。分解によって色が変わるのだ。

面白いのはこのあと。ビリルビンは肝臓を経て腸へ捨てられ、大部分が便として排泄されるが、一部は腸内細菌の作用でウロビリノーゲン(黄色)となったあと、再吸収されて腎臓にたどり着き、尿に捨てられる。便の中ではさらに代謝が進み、ステルコビリン(褐色)になる。「つまり尿と便の色は、両方ともヘモグロビンに由来するのですよ」

古くなった赤血球が分解されるとき、ヘモグロビンも分解されてビリルビンになる。これが便の中でステルコビリンに変化し、便の色になる。一方、一部のビリルビンは腸内細菌で分解されてウロビリノーゲンになり、再吸収されて血液に入り、腎臓から排泄されて、尿の色になる

へー、どちらも元は血液の色素か。飯野さんによると、通常、壊される赤血球の量はほとんど変動しないので、おしっこの色が変わるのは、排泄される水分量が変化するためだという。

「体液の濃さを一定に保つため、腎臓が尿の水分量を調節するのです。体内の水分が多いときは尿が増えて色が薄くなり、水分が少なければ尿量が減って濃い色になります」

つまり、おしっこが濃いのは脱水気味のサイン。「よく“疲れるとおしっこの色が濃くなる”などといわれますが、原因は単なる疲労ではなく、脱水です」。

脱水というと夏の症状という印象があるが、冬も水分摂取が減りやすく、意外に脱水しやすい。「汗があまり出ない季節でも、1日1~2Lの水分摂取が必要です」。

もっとも、朝一番のおしっこの色が濃いのは正常。睡眠中は尿量を減らすしくみが働き、尿を濃縮しているためだ。もし日中にも朝と同じぐらい濃い色だったら、すぐに水分を摂取しよう。

なお、ビタミンB群などが入ったサプリメントやドリンクをのんだときは、尿本来の色より鮮やかな濃い黄色のおしっこが出ることがある。これはサプリ成分の色なので、問題はない。

歯をかみ締めると、舌が口腔の上面(口蓋)にくっついて、鼻とのどの通路が閉じる。唾液が出てきて舌の奥の空間にたまるので、ゴクンと飲み込みたくなる。このとき、同じ空間に封じ込められた空気も一緒に飲み込む

泡が目立つのは病気のサイン?

次に注目したいのは、おしっこの頻度。標準は1日7~8回。何十回も行くのは頻尿だ。「主な原因として、膀胱に炎症などの刺激があることが考えられます」

細菌感染による膀胱炎の場合、尿が白っぽく濁る膿尿が出ることもある。そんなときはすぐ病院に行こう。寒さの刺激で頻尿気味になることも。下半身を冷やさない注意も大切だ。

赤やコーラ色のおしっこ(血尿)は、膀胱炎のほか、膀胱がんなどの重い病気の可能性もある。これもすぐに病院へ行った方がいい。

量とにおいにも注目しよう。以前よりおしっこの量が多い(または少ない)とか、甘酸っぱいにおいがする場合も、腎臓系の病気や糖尿病のサインかもしれない。

意外なところでは、妙に泡が多い場合も要注意だという。「泡は、たんぱく尿や尿糖の特徴です」。なるほど、いつも観察していれば、こんな異常もすぐに気がつくだろう。トイレで流す前に、一目見る習慣が大切です。

■この人に聞きました

飯野靖彦さん
日本医科大学名誉教授。専門は腎臓病学。「おしっこに注意を払えば、腎臓や膀胱の病気を早めに見つけられます。色や頻度、量などに異常を感じたら、一度検査を受けることをお薦めします」。

(ライター 北村昌陽)

[日経ヘルス2014年2月号の記事を再構成]

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