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不動産リポート

不動産情報の囲い込み横行 売り主の対策は 不動産コンサルタント・長嶋修

2015/5/27

 不動産仲介会社が売却物件情報を隠蔽して売り主の利益を阻害し、自社の利益を優先する、いわゆる「物件情報の囲い込み」を証明するデータが業界内外を駆け巡り話題を呼んでいる。「物件情報の囲い込み」とは売り手側の不動産仲介会社が売り主・買い主双方から手数料を両手取りするために、ウソをついて自社顧客への売却を優先させる行為だ。

■業界で公然と行われてきた行為

筆者が独自ルートで入手した「物件情報囲い込み」に関するデータ

 業界では公然と行われながらも、これまでこうした“証拠”のようなものは存在しなかった。しかし、今回筆者は、現場で具体的にどのような行為が行われているのかを詳細に記録した調査報告書を入手した。報告書には会社名はもちろん担当者名、やり取りの内容、物件名、日時まで克明に記録されている。音声データもある。

 こうした典型的な「業界の常識は世間の非常識」といえる行為は、不動産仲介の世界では公然と行われてきたにもかかわらず、業界団体も国もこれまでこの事実を認めてこなかった。そのため、業界のこうした慣行を憂慮する有志によって、こうして証拠が提示されたというわけだ。わかりやすい売り主の損失例として、本データには「売り出し価格より高値でも買いたいといっている買い主を客にもつ業者が断られている場面」が複数記されている。

 調査報告書で実際にあった囲い込みの事例として報告されているのは50件。囲い込みを行ったとされる不動産仲介会社は誰でも知っている大手だ。大手がこれだけやっているということは、実際にはもっと広く、多くの不動産仲介会社が行っているであろうことは、業界関係者であれば誰もが知るところだ。

■囲い込み防止、制度化の動き

 売り物件情報を持つ不動産仲介会社が他社から物件情報の照会が入った際、情報提供を断る方法として「現在、商談中である」「契約済みである」「売り主要因で案内できない」などというパターンが確認されている。こうした対応は業界人にはなじみがあるだろう。これらがなぜウソだとわかるかというと、一般客として問い合わせると「情報提供可能」となることが示されているためだ。

 こうした事態を受けてついに政治が動き始めた。ほどなく自民党の中古住宅市場活性化小委員会から提出される提言には、横行する囲い込みに対する防御策がうたわれている。国交省が制度化の検討に入る見込みだ。

 例えば、物件データベースの登録情報を売り主が確認できるようにする。申し込みの有無などのステータスも確認できる機能を設ければ情報の隠蔽はできなくなる。

 囲い込みが行われた際の罰則強化も視野に入れる。米国では不動産仲介エージェントによる情報囲い込みは、「ポケットリスティング行為」として厳しく処罰され、度重なれば免許が剥奪される。

 しかしこうした方策が具体的に打ち出されるのはまだしばらく先のこと。現場ではいまでも相変わらず囲い込みが行われているはずで、筆者もその現場を複数確認している。

■「専任」ではなく「一般」で

 では現在不動産を売りに出している、あるいはこれから売りに出そうとする方が、物件情報を隠蔽されるのを防ぐにはどうしたらよいだろうか。

 担当者が「御社は物件情報を他社に出さず、隠蔽しますか」と聞くのはどうだろうか? ここで「はい、隠蔽します」と回答する可能性はゼロだと思われるが、一定の抑止力にはなろう。「確認のため、購入者を装った親族が連絡をすることがありますがよろしいですか?」と尋ねるのが良いかもしれない。

 一社のみに売却依頼をする「専任媒介契約」ではなく、複数社に依頼できる「一般媒介契約」で売却を進めるという手もある。ただしこの場合には、他社に販売されてしまい、手数料がゼロになる可能性があるため、広告や販売活動が限定的になる可能性が否定できない。売却不動産が好立地、希少性が高いなど、いわゆる「売れ筋」の場合に有効に機能するだろう。

長嶋修(ながしま・おさむ) 1999年、業界初の個人向け不動産コンサルティング会社「さくら事務所(http://sakurajimusyo.com/)」を設立、現会長。「第三者性を堅持した個人向け不動産コンサルタント」の第一人者。国土交通省・経済産業省などの委員を歴任し、2008年4月、ホームインスペクション(住宅診断)の普及・公認資格制度を整えるため、NPO法人日本ホームインスペクターズ協会(http://www.jshi.org/)を設立し、初代理事長に就任。『マイホームはこうして選びなさい』(ダイヤモンド社)『「マイホームの常識」にだまされるな!』(朝日新聞出版)『これから3年 不動産とどう付き合うか』(日本経済新聞出版社)、『「空き家」が蝕む日本』(ポプラ新書)など、著書多数。

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