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われら平成団地族 若い世代、改装で生活満喫

2015/5/24

古い団地がしゃれたデザインにリノベーション(改装)され、比較的若い世代からも見直されてきた。住民の高齢化に悩む団地が再生に向けた手がかりをつかみつつある。

東京・板橋に1970年代に完成した高島平団地。その一室に昨春入居した佐山憲司さん(仮名、32)は「思ったより広々としていて日当たりも良い」と満足げだ。

都市再生機構(UR)が「無印良品」の良品計画と組み賃貸団地の一部を改装。20~30代の独身者や若い夫婦を中心に抽選倍率が最大で20倍になるほど人気を呼んでいる。

古い団地を改装した「AURA243多摩平の森」(東京都日野市)

高度成長期にかけて各地に建設された団地。1958年には「団地族」という言葉も生まれ、近代的な住まいとして憧れの存在だった。しかしURがもつ全国75万戸の賃貸団地のうち7割は入居開始から30年以上が過ぎ、孤独死の問題なども取り沙汰されるように。若い世代をどう呼び寄せるかが課題になっていた。

ここにきて「平成団地族」とも言える新たな需要を呼んでいる理由には賃料の手ごろさがある。30代前半の平均年収は2013年までの15年間で12%減少した。佐山さんの場合、46平方メートルの部屋の家賃は月9万3000円で、ほぼ同じ広さの以前のアパートよりも3万円以上安くなった。

ただ、最近注目されるようになった魅力は安さだけではないようだ。平成団地族は新たな価値を感じ始めている。その一つが豊かな自然や住民とのつながりにあるようだ。

東京都日野市の賃貸住宅「AURA243多摩平の森」に入居する会社員の見塩伸子さん(37)は以前は中古のマンションを改装して住んでいた。ただ住民の交流は薄く不満を感じていたという。「今の団地は敷地に緑も多く、知り合った近所の人たちからお薦めの飲食店を教えてもらえるのもうれしい」と喜ぶ。

この住宅は築50年の古い団地を1棟丸ごと改装し、菜園などを整備した。11年の入居開始以来、やはり20~30代を中心にほぼ満室の状態が続いている。隣の2棟は若者向けシェアハウス、反対側2棟は高齢者住宅に改装された。見塩さんは団地のイベントに顔を出すうちシェアハウスに住む男性と意気投合。団地の集会所で結婚式を挙げ、今は9カ月の長女と3人暮らしだ。

DIY(日曜大工)人気に乗り、賃貸ながら住民が自由に内部を改装できるようにした物件も注目を集めている。

堀川団地の部屋を自分で改装して暮らす長屋洋平さん(京都市上京区) 

京都府住宅供給公社は築60年が過ぎた堀川団地(京都市)の再生に乗り出した。耐震補強は施したが、内装にかける予算に限りがある。そこで昨年にコンペを実施し、17人の応募者から4人を選定。センスの良い人を選び、入居者の負担でしゃれた内装に変えてもらおうというわけだ。

その一人がインテリアコーディネーターの長屋洋平さん(38)。壁にコウモリの模様を描き、お気に入りの部屋に仕立て上げた。ショールームとしても活用しており「住み心地は良いし、仕事場としても最適」と満足げだ。

団地ブームの背景に、若い世代にとっての目新しさもあると指摘する声もある。東京大学の大月敏雄教授(建築計画学)は「長崎県の『軍艦島』などと同じように、団塊ジュニアより若い世代にとっては団地が近代の遺産として魅力的に映っている面があるのではないか」と分析する。

クロス・マーケティングを通じて団地のイメージをネット調査したところ「プラス」と答えた人の割合は20代(27.5%)が30代(24%)、40代(18.5%)、50代(22.5%)より高かった。20代では住宅の「新築信仰」が薄れている傾向もうかがわれた。

明治学院大学の原武史教授(政治思想史)は「古い集合住宅には残すことで新たな価値が生まれる」と話す。空き家対策など古い住宅の有効活用は重要課題。若い住民が見いだした価値には、その処方箋が含まれているかもしれない。(本田幸久)

■団地に「好印象」、60代と20~30代で多く
インターネットを通じて、全国の男女に団地について聞いたところ、「プラスのイメージ」と答えた人の割合は60代が36.5%と最も高く、20代(27.5%)と30代(24%)がこれに続いた。
60代で割合が高いのは、団地が庶民にとってあこがれの近代的な住まいだった時代のイメージが残っているためとみられる。ただ、好印象を持つ人の比率は50代になると22.5%に急減。40代では18.5%とさらに減り、全世代のなかで最も比率が低くなった。住民の高齢化などで団地の印象が悪化していったことを反映しているようだ。
それより若い20~30代になると団地のイメージは次第に改善していく。とくに20代男性に限ると団地に好印象を持つ人の比率は34%。「将来、団地に住みたい」と答えた人の割合も18%にのぼり、あらゆる世代のなかで最も高くなっていた。
20代男性で「団地に住みたいと思う」と答えた人にその理由を複数回答で尋ねると、「賃料が安い」と答えた人が83.3%で最も多かった。「自然環境が豊か」(22.2%)、「近隣住民との結びつきが強い」(16.7%)、「懐かしく感じる」(16.7%)などの回答も上位を占めた。
調査では、住宅の「新築信仰」が若い世代ほど薄れていく傾向も浮かび上がった。住まいを選ぶときに新築かどうか気になるか尋ねたところ、「必ず新築が良い」と答えた人の割合は60代で33%に達したが、それより若い世代では50代(21.5%)、40代(22%)、30代(21.5%)とおおむね2割強どまり。20代では18%まで低下した。
この調査はクロス・マーケティングを通じて5月15日~17日、全国の20~60代の男女1000人を対象に実施した。

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