20代・30代・40代 年代別「疲れない心」のつくり方
年齢とともに形を変えていく、働く女性のストレスや心のモヤモヤ。正しい心の解きほぐし方をレクチャーします。
物事に固執しやすい人はメンタル不全の予備軍に
働く女性が陥りやすい心の悩みは世代によって異なるもの。
「20代は、描いていた理想と現実とのギャップに悩みがち。希望の仕事をさせてもらえない、環境になじめないなどの不満から、モチベーションが上がらないケースが多い」(産業カウンセラーの大野萌子さん)。それまで順調に生きてきた人ほど悩みを抱えやすい。「焦らず、小さな目標を立てて目の前の仕事に集中することで扉が開いていきます」
結婚、出産、キャリアなど、生き方に違いが表れだす30代は、他人と自分とを比較しがちに。そんな心をコントロールするには、自分の本心に向き合うことです。「自分にとって本当に大切なものが分かれば、『人は人』と考えられるようになります」
仕事で責任が増す40代は、心とカラダのバランスが乱れがちに。「仕事を抱え込みがちな人は、周囲を信頼して任せることで心が楽になります。独身者は交流できる友人が減り孤独を感じやすい時期。いろんなコミュニティーに参加し、緩やかで心地いい人間関係を持っておきましょう」
どの世代でもストレスを抱えやすいのは、「物事に固執しやすい『べき思考』の人」と大野さん。柔軟に物事を捉えるしなやかさを身に付けていきましょう。
慣れない仕事に戸惑い、理想と現実とのギャップに悩む
先輩や上司との「縦の関係」になじめない、望むような仕事をさせてもらえず、やりがいを感じられない…思い描いていた理想とのギャップに「こんなはずじゃなかった」とモチベーションが上がらず、モヤモヤ。そんな状態のまま、仕事の忙しさに追われ、人間関係に悩みだすと、さらに焦りが募ってしまう。
□ 不特定多数の人とのコミュニケ-ションが負担
□ 「こんなことをやるために入社したんじゃない」と思う
□ ワークライフバランスが取れないことがストレスに
→これで心が強くなる
5年後ではなく半年以内の目標を立てる
先の目標を描いても実感しづらいもの。「『自分の担当エリアの顧客を覚える』『パソコンのスキルを上げる』など、半年以内の短いスパンで実現できそうな目標を立て、達成感を積み重ねて」(大野さん)
先輩や上司に対して「聞き上手」になってみる
上司や先輩との縦関係がうまくいくと職場に溶け込めるようになり、仕事での情報も得やすくなる。「『先輩はどう思いますか』と相手の考え方や過去の経験を聞くと、視野も広がります」
信頼できる友達に思いを吐き出す
モヤモヤした気持ちを誰かに伝えると、感情が整理されて心の浄化作用につながる。「信頼できる友達や恋人に愚痴を言って気持ちを吐き出すことも、心を守るためには大切だと考えて」
同世代の生き方が多様化し、人と自分を比べてイライラ
さまざまなライフイベントを迎える人が増える30代は、それぞれの生き方の違いが明確になる時期。独身者は結婚や出産のリミットにせき立てられ、育児中のワーキングマザーは思うようにキャリアを積めずに気持ちが焦る。「どの立場の人も、どこか『不完全感』を抱え、他人と自分とを比べがちに」
□ 育休から復帰後、職場で自分が置いていかれている気分になる
□ 独身者は結婚・出産リミットに焦り、既婚者にイライラ
□ 人の価値観に流されて本音を押し殺し、心が不安定に
→これで心が強くなる
1日に1回は、ひとり時間を持つ
自分の心に潜むモヤモヤした感情と向き合うための「ひとり時間」を持つこと。「スマホを置いて、ゆっくり自分と対話を。時間のない人は、入浴中や通勤時間を思考タイムに充ててみて」
本当はどうしたいのか自問自答してみる
「自分の心が本当に求めているもの」を知ることで、他人の目や世間の評価などの雑音に振り回されなくなる。「今、自分が何に対して心地よさを感じ、何をしたいのか、自問自答を繰り返して」
怒りや悲しみの感情を押し殺さずに味わう
マイナスの感情を無理に抑え込むと、心のなかでくすぶり続けて不眠や自律神経を乱す原因に。「怒りや嫉妬、悲しみなども自分にとって必要な感情。その気持ちを否定せずに受け止めましょう」
責任ある仕事や更年期でバランスが崩れがちに
キャリアを重ねて責任が増し、プレッシャーからストレスが増加する世代。また、ホルモンバランスの乱れから、原因の分からないイライラやモヤモヤなどの更年期症状が出始める時期でもある。「真面目で責任感の強い人ほど、ひとりで物事を抱え込んで自分を追いつめ、心身のバランスを崩しがちに」
□ 責任ある立場になって仕事を抱え込み、大きなストレスに
□ 更年期の症状が始まり、イライラや不調が起こりやすくなる
□ 独身の場合は遊べる友達が少なくなり、寂しくなりがち
→これで心が強くなる
仕事やプライベートで人に任せることを覚える
ひとりで仕事や家事を抱えてつぶれてしまうと、結果的に周りに迷惑をかけることに。自分でやったほうが早いと思うことも相手を信頼して任せてみて。「シェア上手」が自分の心を守る秘訣。
気楽に振る舞える仕事以外の居場所をつくる
興味のあるコミュニティーには積極的に参加して、利害関係のない気楽な『横のつながり』をつくっておこう。「自分のいろいろな顔を持つことで、ストレスの逃げ場ができ気持ちが安定します」
居心地のよくないコミュニティーからは離れる
無理をせず、自分が心地いいと思える人間関係を大切にすること。「居心地の悪い相手や、惰性で続いていたお付き合いからは徐々にフェードアウト。人間関係を再検討する時期と捉えて」
この人に聞きました
産業カウンセラー。法政大学卒業後、日本通運を経て産業カウンセラーとして独立。官公庁や大手企業などで年間120件以上の研修を行う。著書に『「かまってちゃん」社員の上手なかまい方』(ディスカヴァー携書)など。
(ライター 西尾英子)
[日経WOMAN 2015年5月号の記事を基に再構成]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。
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