管理職になったらゼロ? 「残業代」を正しく知ろう
Answer:これは会社がよく使うセリフですが、すぐに信用するのは禁物です。
法律上、「管理監督者」には残業代を支払う必要はありませんが、「管理監督者」にあたるかは、「店長」や「部長」などの肩書で決まるものではなく、以下のような事情を考慮して判断されます。
(1)職務の内容、権限、責任
(2)出退勤等についての自由度
(3)その地位にふさわしい処遇か否か
したがって、管理職と社内で呼ばれているからといって、必ずしも「管理監督者」にあたり残業代がもらえないというわけではありません。ご自分の職務の内容や権限を再度確認してみてください。
Answer: 営業手当が出ているからといって、残業代が発生しなくなるわけではありません。
営業手当の性質にもよりますが、毎月固定の残業代として営業手当が支払われているのであれば、残業代は原則として請求できません。しかし、営業手当を残業代として支払っている会社はまれでしょう。また、仮に毎月固定の残業代として営業手当が支払われていたとしても、毎月の残業代の金額が固定の営業手当を上回る場合は、その差額を残業代として請求することが可能です。
そのため、営業手当がどのような性質のものかを会社に確認することが重要になります。
Answer: 飲食業の中には、残業代を不当に支払わない会社もありますね。
しかし、飲食業であっても、所定労働時間を超えて労働した場合には、その分の賃金を請求する権利が当然あります。飲食業だからと言って不利に扱われることは一切ありませんのでご安心ください。「飲食業では残業代は出ないのが当たり前だ」という会社の言い分をうのみにしないで下さい。
Answer: 残業代を請求すると、今後の転職活動に不利な影響を与えるのではないかと心配される方は多いですね。しかし、採用先の会社が、退職理由を前の職場に問い合わせることはありますが、残業代請求をしたか否かまで問い合わせることは通常は考えられません。自分で採用先に言わない限り、残業代を請求していることは採用先にはわからないでしょう。
ですから、転職活動中か否かはあまり気にせず残業代は請求した方がよいと思います。
Answer: 会社は割増賃金として、
(1)1日8時間、週40時間を超える労働は25%割増の賃金
(2)1週1日、4週4日の法定休日の労働は35%割増の賃金
(3)午後10時以降午前5時までの深夜労働は25%割増の賃金
を支払う必要があります。
[注:1カ月に60時間までの時間外労働・深夜労働の場合]
割増額以外にも残業代の計算には複雑な箇所がたくさんあります。ご自分で計算することはかなり難しいので、弁護士にご相談されることをお勧めします。
[注:残業代には時効があり、給料日から2年以上経過すると残業代を請求できなくなります。]
現在でも残業代を支払わない会社は数多くあります。会社の利益を増やすために残業代を削減することもよく行われます。未払いの残業代を計算すると、かなりまとまった金額になることが多いので、残業代が支払われていないのではないかと疑問を抱いたら、すぐに弁護士に相談してみてください。
この人に聞きました
弁護士(東京弁護士会所属)。慶應義塾大学経済学部卒業後、首都大学東京法科大学院から都内法律事務所を経て、アディーレ法律事務所へ入所。司法修習第63期。パワハラ・不当解雇・残業代未払いなどのいわゆる「労働問題」を主に扱う。動物が好きで、最近フクロウを飼い始めた。労働トラブルを解説した書籍『ブラック企業に倍返しだ! 弁護士が教える正しい闘い方』(ファミマドットコム)が発売中。『弁護士 岩沙好幸の白黒つける労働ブログ』も更新中。
[nikkei WOMAN Online 2015年3月3日付記事を基に再構成]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
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