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「獺祭」新工場、タンク300本のローテク酒造り

内部を初公開

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NIKKEI STYLE

その12階建てのモダンな建物だけを目にして東京のオフィスビルだと言われれば誰もが信じるだろう。だが周りには古民家があり、のどかな田園風景が広がる。ここは山口県岩国市の山の中。建物は人気で品薄の日本酒「獺祭(だっさい)」をつくる旭酒造の新工場だ。さぞハイテクが満載と思いきや「品質の決め手は人の手をかけるローテクです」と桜井博志社長は笑った。

生産能力は3倍の年間500万本に

獺祭ブームはとどまるところを知らない。安倍晋三首相が4月末に出席したホワイトハウスの晩さん会で乾杯に使われたと報じられたこともあり、ゴールデンウイークは新工場の横にある本社販売店が大いににぎわった。同社は純米大吟醸酒に特化して生産しているが、需要が供給を上回り顧客が手に入れにくい状況が続いている。

新工場は品薄状態を解消し、海外への拡販にも備えようと約30億円を投じて建設した。酒の生産能力は従来の約3倍の年間500万本(1.8リットル瓶換算)に増大。設備は今月から順次稼働させる。稼働中の2つの酒蔵と合わせ3酒蔵の体制になる。

桜井社長の案内で新工場を見た。壮観だったのはずらりと並んだ醸造タンクだ。7~9階の発酵室には5キロリットルタンクが100本、3キロリットルタンクが200本入る。タンクは小ぶりだが実はここに獺祭の酒造りのカギがある。

同社では大手の日本酒メーカーがかつて生産量を増やす際に導入したような、容量の大きなタンクを採用することを意図的に避けている。

微妙な温度の上げ下げは手作業

「タンクが小さい方が1本1本、きめ細かく管理できる」(桜井社長)ためだ。従業員がタンクに櫂(かい)を入れ、もろみを混ぜて温度を調整する。「微妙な温度の上げ下げは手作業」と桜井社長。このほか、洗米も、麹(こうじ)造りも手作業。これがローテクの酒造りというわけだ。

麹造りをする4階と6階の麹室にはコメを均等に平らにして寝かす床台が合計40台入る。その後、麹菌の菌糸を伸ばすのに使う、車輪と電球、換気扇の付いた箱も88台ある。ともに同社ならではの酒造りを模索する中でできあがった特注品である。

「ローテク」であるがゆえに人手はかかるが同社では人をコスト要因とは考えない。「銀行では人が資産だといわれる。当社も同じ方向に向かっている」。2013年9月時点で90人だった従業員数が現在は160人に増えており、来年9月には200人になる見込みだ。

一方で品質分析や衛生管理には最新の技術を使う。1階の製造エリアの入り口に設置したのは「エアシャワー」。壁から空気を吹きつけ、服に付いているゴミなどを取り除く設備だ。

2階の検査室には巨大なホワイトボードがあった。すべてのタンク内部の状態をデータ化し、印刷してボードにペタペタと張り付ける。科学的なデータを駆使して「うまい酒」を導き出すという同社のお家芸だ。

同社の躍進を支えるのは手作業と最新技術の融合である。14年9月期の生産量は120万本、売上高は46億円だったが、新工場の稼働により、16年9月期は240万本の生産を計画している。品不足も緩和されそうだ。

ただ「500万本を生産するのは3年以上先になりそう」。というのも、当初は新工場に瓶詰めの機器も入れる予定だったが、異物混入対策の設備を導入したためスペースがなくなった。既存設備の瓶詰めの能力は年間300万本しかない。

このため、周辺に瓶詰め工場を新設する計画も進めていると桜井社長は明らかにした。15億円程度の投資を見込んでおり、年間500万本の瓶詰め能力を持たせる予定だ。3年先の18年ごろの完成を目指している。

「社長は現場にいるのが大事」

同社は酒が売れないという逆境に直面したのをバネに従来の酒造りの常識にとらわれない経営をしてきた。杜氏(とうじ)を置かず、室温を管理した工場で年間を通じて酒を製造する四季醸造を導入。しかし醸すタンクは小さい。酒米はすべて「山田錦」で、造るのは酒米を削り込んで精米歩合を50%以下にした純米大吟醸酒だ。

ただ、ホワイトハウスの晩さん会でも供された、720ミリリットル入りで1本3万2400円する自信作の「獺祭 磨き その先へ」は分類は普通酒で純米大吟醸酒ではない。精米歩合を公表していないのだ。最もうまい酒を追求したとき、条件によって精米歩合が異なってくるためという。さらに酒米農家を支援するため規格外のコメを原料に使う商品「等外」も売り出している。

斬新な数々の取り組みをみていると、思い浮かぶのはイタリアで新しいワイン造りに挑戦し続けているアンジェロ・ガヤ氏だ。ガヤ氏は大だるによる熟成が一般的だったイタリアのワイン造りにフランス式の小だるを導入、熟成に時間がかかっていたワインを早い段階でもおいしく飲めるようにした。フランス系のブドウ品種も栽培。自分の造りたいワインにするため、イタリアの最上級の格付けから外れた商品もある。今日のイタリアのワイン造りに大きな影響を与えたといわれる。ガヤ氏の造る旗艦ワインのバルバレスコやスペルスはとても高価だ。

桜井氏は新工場をこれまでの集大成と位置づけている。同氏もガヤのように酒の歴史をつくる人になるのだろうか。

新工場は本社も兼ね、1階は事務所になっている。社長室もあるが「たぶん私はそこにはいない。応接室になるだろう」と語った。「私はこの辺にいると思う」と指さしたのは事務所スペースの端っこだ。まだ机も置いていない部屋で「社長は現場にいるのが大事なんだ」とつぶやいた。変革の起点は現場にある、と桜井社長は考えているようだ。

(山口支局長 伊藤健史)

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