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相続トラブル百科

現金に手を出すな 「タンス遺産」に要注意 司法書士 川原田慶太

2015/5/15

 亡くなった親の家を整理していると、タンスや戸棚などから多額のお金が出てくることがあります。いわゆる「タンス預金」と呼ばれる現金です。もちろん、出どころが亡くなった人のお金であれば、この現金も遺産の一部として相続の対象財産に含まれてくるでしょう。

 いわば、「タンス遺産」とでもいうべきものですが、ここで忘れてはならないことがひとつあります。それは、相続のルール上、遺産には種類ごとに異なる取り扱いが存在する場合があるということです。出てきた遺産をほかの種類の財産と混同して、下手な対応を取ってしまうとトラブルを呼び込むケースもあるのです。

:「ねぇ、そっちは片付いた? こうやって久しぶりに実家の納戸を開けてると、昔を思い出しちゃうわね。よくここでかくれんぼして遊んでたじゃない」
:「子どもの頃は、ずいぶん大きな場所だと思ってたんだけどなぁ。あらためて見ると、こんなに狭かったんだ」
:「ほら、これ見て。母さんったら、昔の歌謡曲のカセット、ちゃんと取って置いてあるのよ。テープを聞けるデッキなんてもう持ってないのに」
:「なかなか捨てられない性格は、亡くなるまで変わらずだったね」
:「ほんとにそうよ……。あれ? なんか変な包みが出てきた。わっ、これ見てよ!」
:「うわぁ、お札じゃないか! それも、こんなにたくさん。そういや母さん、昔からまとまったお金を都合してくれるとき、納戸のあたりをゴソゴソやってた気がするなぁ」
:「どうしよう、このお金……。来週には業者さんが残った荷物を片づけに来るから、このまま置いとくわけにもいかないし」
:「うーん……。そうだ、姉さんと僕、それに兄さんで3等分して、とりあえず僕らの分は各自で持って帰ったらいいんじゃないかな? 兄さんの分は預かっておいて、後で渡せばいい。事後の承諾になっちゃうけど、忙しいからって手伝いに来ないのが悪いんだし」
:「そうね、平等に分けるんなら大丈夫よね。じゃあ、そうしときましょ」

 実家の整理をしていたら故人のタンス預金が出てきたので、いったん、自分の相続分にあたる金額だけを持って帰ることにした――。一般的な感覚では、とくに問題はないようににも思えます。

 亡くなった母の相続人が兄・姉・弟の3人だけならば、法律に定められた相続分は各自3分の1ずつとなります。自分の法定相続分なんだから、少なくとも3分の1を持って帰るのは構わないだろうという理屈です。

 例えば遺産が銀行の預金だった場合は、そのように「自分の分だけ払い戻してもらう」という取り扱いを認めた裁判例などが実際に出ています。誰でも簡単にできる手続きではありませんが、金融機関の預金であれば、ケースによっては自分の法定相続分だけ持って帰ることができる方法が存在しています。

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