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シャーロット人気? 名前に潜む「流行の法則」

編集委員 小林明

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NIKKEI STYLE

英王室のウィリアム王子の妻キャサリン妃が今月2日、第2子の王女を出産した。世界から注目された名前はシャーロット王女――。ミドルネームまで含めた正式な名前はシャーロット・エリザベス・ダイアナだという。

シャーロットはもともと祖父であるチャールズ皇太子の名前の女性形。ミドルネームは曽祖母のエリザベス女王と祖母の故ダイアナ妃の名前にちなんでいるとされる。

ところで最近の英国ではどんな名前が流行しているのだろうか?

調べてみると、興味深い流行のサイクルや法則が浮かび上がってきた。今回はそれらを皆さんに紹介しよう。

女児名の首位は目まぐるしく交代、3年が最長

まずは女性編。

表は過去12年間(2002~13年)の英国で生まれた女児の名前の人気ランキング。上位の顔ぶれを見ると、激しく変貌していることが分かる。首位の変遷はクロエ(CHLOE)→エミリー(EMILY)→ジェシカ(JESSICA)→グレース(GRACE)→ルビー(RUBY)→オリビア(OLIVIA)→アメリア(AMELIA)と入れ替わりが目まぐるしい。最長でもオリビア(OLIVIA)やアメリア(AMELIA)の3年間。早ければ1年ですぐに首位の座を明け渡しまうほどサイクルが速い。

上昇「アメリア」、下降「クロエ」、釣り鐘型「グレース」「ルビー」

変化はいくつかのパターンに分かれる。

人気の上昇ぶりが最も目立つのはアメリア(AMELIA)。03年の21位から「右肩上がり」に順位が浮上。11年から13年までトップに君臨しており、「最も勢いがある旬な名前」と言っていいだろう。逆に順位を大きく下げたのはクロエ(CHLOE)。02年にはトップだったがその後、急速に順位が下降して13年は18位。「右肩下がり」の軌跡を描いている。

一方、おわんを逆さにしたような「釣り鐘型」の放物線をたどるのはグレース(GRACE)やルビー(RUBY)。それぞれ06年と07年にトップに立つが上昇のあとにすぐ下降している。これらは「少し前にはやった名前」と考えることができる。このほかエミリー(EMILY)、ジェシカ(JESSICA)、オリビア(OLIVIA)は一貫して上位をキープしている「定番」。これらは過去12年間で不動の人気を誇る安定感の高い名前ということになる。

シャーロットの人気は? 今後は急上昇も

シャーロットの人気はどうだろうか?

とりあえず上位には入っているが、最近は人気がやや下降気味と言えるかもしれない。02年は7位だったがジリジリと順位を落とし、10年以降は20~21位で推移している。ただ今回、英王室に25年ぶりに誕生した王女がシャーロットと命名されたことから人気が復活する可能性も十分にある。

早くもベビー用品や雑貨・アクセサリー類、食品などで慶事にあやかったシャーロット商戦が過熱し始めているそうだ。

注目株はエバ、アイラ、ポピー、イザベラ……

最新の13年の女児の名前人気ランキングはアメリア(AMELIA)、オリビア(OLIVIA)、エミリー(EMILY)、エバ(AVA)、アイラ(ISLA)の順。

アメリア(AMELIA)は、女性として初めての大西洋単独横断飛行を成し遂げた伝説的な米国人パイロット、アメリア・イアハート(AMELIA EARHART)や人気の児童書「アメリア・ベデリア(AMELIA BEDELIA)」に由来する名前。エミリー(EMILY)やアマンダ(AMANDA)の人気に取って代わりつつあるらしい。エバ(AVA)とアイラ(ISLA)も注目株で首位をうかがう勢い。ポピー(POPPY)やイザベラ(ISABELLA)も人気が上昇している。

映画や歌姫の登場が「名付け」に影響

ところで名前の流行の背景には何があるのだろうか?

英政府統計局が面白い分析を公表している。人気映画や有名人の登場が名付けに大きな影響を与えているというのだ。

たとえば01年に公開されたフランス映画「アメリ」――。

パリ・モンマルトルのカフェで働く女性アメリの日常を描いた話題作。英国や日本など世界中で大ヒットした。統計でアメリ(AMELIE)と命名された英国女児の数を追い掛けてみよると、映画公開に符合するように01年から急増しているのが分かる。映画のヒットに名付けが影響を受けたのだ。

ちなみに最新の13年の人気ランキングで首位だったアメリア(AMELIA)も01年以降、順位を一気に上げている。アメリア(AMELIA)とアメリ(AMELIE)は同じ派生グループに属する名前。もしかすると、映画「アメリ」のブームにも影響を受けていたのかもしれない。

人気歌姫との関連も面白い。

世界的なポップ歌手、ブリトニー・スピアーズ、シャキーラ、リアーナ――。

ブリトニー(BRITNEY)、シャキーラ(SHAKIRA)、リアーナ(RIHANNA)と命名された英国女児の数を追い掛けると、代表的なヒット曲のリリースに合わせてそれぞれの名前が急増しているのが分かる。人気歌手の活躍も名付けに影響しているわけだ。

男児名は女児名より流行に鈍感?

男性編に移ろう。

表は過去12年間(2002~13年)の英国で生まれた男児の名前人気ランキング。首位の変遷を見ると、女児ほど目まぐるしくは入れ替わっていないという印象を受ける。ジャック(JACK)が02年から08年まで首位をキープした後、オリバー(OLIVER)とハリー(HARRY)が首位を競い合っている。12年間で首位に立った名前は3つだけ。同じ期間に女児では7つもあった。

順位の動向も女児ほど激しくは動いていない。ジャック(JACK)、ジョシュア(JOSHUA)、トーマス(THOMAS)、ジェームス(JAMES)、オリバー(OLIVER)、ハリー(HARRY)などの上位の名前は順位変動が比較的緩やか。あえて急上昇を探せばジェイコブ(JACOB)やオスカー(OSCAR)、レオ(LEO)などが目立つ程度だ。

ランキング上位の動向を見る限り、女児の名前の方が流行により敏感で、男児の名前は流行にはそれほど影響されずに安定している――。英国の名付けにはこんな傾向があると言えるかもしれない。

ジョージ王子誕生の効果は?

最新の13年の男児の名前人気ランキングはオリバー(OLIVER)、ジャック(JACK)、ハリー(HARRY)、ジェイコブ(JACOB)、チャーリー(CHARLIE)の順。昔からランキングに顔を出してきた常連が多い。首位のオリバー(OLIVER)は女児ランキングで2位のオリビア(OLIVIA)の男性形。ともに豊かさと平和を意味する「オリーブの木」に由来する名前だとされる。

ちなみにジョージの人気はどうなっているだろうか?

ジョージは13年7月に生まれたウィリアム王子とキャサリン妃の第1子である王子の名前。表を見ると、全体として緩やかな上昇傾向にあるようだが、急激な変化は読み取れず、誕生した13年はやや上昇した程度。とはいえウィリアム王子とキャサリン妃は身近な王室として親しみがあり、国民の好感度がかなり高い。状況次第では今後の動向に大きな影響を与えるかもしれない。

ベッカム夫妻の子どもの名前も影響

最後に英国で国民的スターとして常に話題を振りまくベッカム夫妻――。

元サッカー選手のデビッドさんと元人気歌手のビクトリアさんには子どもが4人(3男1女)いるが、それぞれ誕生した直後に同名の新生児が急増しているのが分かる。グラフは長男のブルックリン(BROOKLYN)君、次男のロメオ(ROMEO)君、3男のクルス(CRUZ)君、長女のハーパー(HARPER)ちゃんの生まれた年と、同じ名前を命名された英国の新生児の数を示したもの。ベッカム夫妻の社会的な影響力の大きさがうかがえる。

有名人にあこがれ、その人気にあやかろうという風潮は国・地域を問わず、やはり世界的な現象でもあるようだ。

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