若い女性がのめり込む 日本刀擬人化ゲームが熱い
日経エンタテインメント!
2015年に入り「日本刀」がブームになっている。宝島社が発行するムック「日本刀」は、シリーズ2冊合計で32万部のヒットとなり、名古屋市の徳川美術館では、所蔵する脇差「名物 鯰尾藤四郎(なまずおとうしろう)」を4月中旬まで特別公開し、にぎわいを見せた。そして、これらの現象を支えているのは10~30代の女性だ。
この現象の原動力となっているのが、DMMゲームズがリリースするパソコン用ブラウザーゲーム『刀剣乱舞(とうけんらんぶ)-ONLINE-(以下、刀剣乱舞)』だ。太刀や脇差しなどの刀剣を擬人化したキャラクター「刀剣男士」を育成するこのゲームは2015年1月14日に正式サービスが始まり、半月で「50万人のユーザーが登録した」(DMMゲームズ広報、以下同)という。徳川美術館への問い合わせが急増した「名物 鯰尾藤四郎」もこのゲームに登場する人気キャラクターだ。
『刀剣乱舞』はこれまでヒットしてきた擬人化ゲームと異なり、ターゲットは女性だ。「登録ユーザーのうち、およそ7割が女性」だという。『刀剣乱舞』はDMMゲームズが予想していた以上の集客力を見せ、サービス開始直後はサーバーの満員状態が続いていた。
急速に人気を高めた『刀剣乱舞』の魅力はどこにあるのか。「刀剣男士」のビジュアル、人気声優の起用などいろいろと挙げられるが、一番の要因は企画・原作を担当しているゲームメーカー「ニトロプラス」が用意したストーリー性にある。男性向けに「Nitroplus」、女性向けに「Nitro+CHiRAL」と2つのゲームブランドで実績を持つニトロプラス作品の強みは、シナリオが練り込まれていることだ。
二次創作の余地が魅力
登場する刀剣男士たちには、それぞれモチーフとなった刀剣の来歴を基にしたバックグラウンドストーリーが存在している。織田信長や土方歳三など、著名な持ち主と刀との逸話がストーリーとして描かれる。さらに個別のキャラクターについてだけではなく、同じ刀匠、同じ持ち主といった複数のキャラクター同士が絡む関係性まで設定されていることが、二次創作の余地を生み出し、女性ファンの心をとらえているようだ。
一度好きになると、どこまでも愛をささげ続けるのがゲーム好き女子の特徴だ。彼女たちの間では、キャラクターグッズを身に着けることがステータスになっており、トートバッグに缶バッジなどのグッズを大量に付けた、通称「痛バッグ」はその象徴だ。『刀剣乱舞』でも缶バッジが発売されたが即完売。その後も、商品が入荷される店舗には行列ができる。ゲームの人気キャラクター「三日月宗近」を作った刀匠の子孫である奈良の刃物屋「三條小鍛冶宗近(さんじょうこかじむねちか)」では、銘入りの爪切りや、オリジナルのペーパーナイフを販売していたが、すぐに完売したという。
ゲームの魅力のみならず、関連グッズや、相次ぐ美術館による名刀の公開により、女性ファンによる「日本刀」ブームはさらに加速していきそうだ。
(ライター 竹石和幸)
[日経エンタテインメント! 2015年5月号の記事を基に再構成]
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