田舎の実家は隣家に売る 空き家バンクの利用も

市街地にはニーズがある

空き家の6割は市街地や市街地周辺の物件。このエリアで最も頼りになるのは、やはり地元の不動産業者ということになるだろう。「地元に根付いた、エリアのマーケットメイクができる業者を選ぶといい」と言うのは相続ジャーナリストの三星雅人さんだ。

とはいえ周辺に戸建ての空き家がどれくらいあるか、周辺の取引・賃貸相場がどれくらいか程度は最低限調べておきたい。相場が変動していたり、意外な潜在需要があったりするかもしれないからだ。

不動産関係者によれば「市街地の賃貸ニーズは根強い」。また、こうした需要を背景に「東京を中心にワンルームマンションの投資利回りが低下しており、投資家は東京近県などの市街地で安価な戸建てを物色している」と言うのは、投資用不動産情報サイトを運営する健美家社長の倉内敬一さんだ。

無論、なかなか買い手や借り手がつかないケースもあるかもしれない。しかしそういう場合も、市街地周辺に関しては「相場よりかなり安い価格設定にすれば、売ったり貸したりできる可能性が大きい」(前出の三星さん)という。

田舎の家は隣家に売る

最も深刻なのは、市街地ではない田舎の実家を相続した人だろう。それでも最近はシニア層を中心とする田舎暮らしブームが追い風となり、田舎の空き家物件の取引が増加する傾向にある。

長野県や山梨県など移住者に人気のエリアの実家なら、田舎暮らし専門の不動産業者に相談するのも一法だ。戦前に建てられた古民家などはプレミアムがつくこともあるという。

東京都在住者で実家が遠方にある場合、処分のために何度も帰郷するのも負担になりかねない。東京・渋谷のリーガルアクセス司法書士事務所では、そんな人たちのために田舎の不動産の相談窓口を設けている。名義変更(登記)業務がメインだが、オプションで実家の片付けや不動産の売却・解体に関わる業者の紹介、希望があれば作業の立ち会いもするという。

同事務所の代表、辻村潤さんが勧めるのは「まずはお隣を当たること」。特に田舎の土地の場合、最も成約に至る可能性が高い買い手は隣家などのご近所さんだという。

実家のある自治体が空き家バンクを運営しているのであれば、これを利用する手もある。登録するとウェブサイト上で物件の履歴や権利関係、希望価格などが公開され、誰でも閲覧できるようになる仕組みだ。

長野県佐久市は新幹線の停車駅があり、医療施設が充実しているなどの理由で、首都圏からの移住者が多い。空き家バンク利用者も大半がこの層だ。東京都内で移住相談も行っており、設立から7年で成約数は300件弱と、全国の空き家バンクでもトップクラスの実績を誇る。「家庭菜園用の広い庭のある物件などが人気。ただ、『まずは住んでみて様子を見たい』という利用者の意向もあり、成約は圧倒的に賃貸が多い」(同市観光交流推進課・中村慎也さん)。ウェブサイトには常時40~50軒の物件が紹介されている。

希望者が現れ、成約した際は自治体から紹介された不動産業者を通して契約する。2015年3月末時点で、北海道から九州まで1700自治体の4分の1強がこの制度を実施しているという。

過疎地では唯一の流通手段ともなるが、注意したいのは「自治体によって空き家バンクへの力の入れ具合に温度差がある」(空き家問題に詳しいアナリスト)ことだ。上の長野県佐久市のような例もあれば、ほぼ開店休業状態のところも少なくない。

貸すより売るべし

借地権で売るに売れない場合は別だが、多くの専門家は迷っているなら「貸す」より「売る」ことを考えるべきという。「キャリアの長いサラリーマン大家でもない限り、賃貸住宅のケアをしていくのは負担が大きい。離れた土地なら尚更」と言うのは前出の倉内さんだ。

司法書士の辻村さんは、「一旦賃貸に出すと返してほしい時に返ってこないかもしれない。かといって定期借家にすれば賃料ががくんと下がるので売却がベスト」と助言する。

(日経マネー 森田聡子)

[日経マネー2015年6月号の記事を再構成]

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