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不動産リポート

物件引き渡し前に大地震 泣き寝入りしないために 不動産コンサルタント・長嶋修

2015/5/13

4月24日に政府の地震調査委員会が公表した「全国地震動予測地図」の最新改訂版が話題を呼んでいる。東日本大震災を契機に改良されたモデルでシミュレーションした結果、マグニチュード8クラスの大地震が30年以内に起きる確率が、昨年12月に発表された確率よりも最大5%引き上げられたからだ。こうした地震が起きたときに、もしも不動産売買契約をしていて、かつ引き渡し前だったら……。

不動産の売買契約のあと、完成引き渡し前に、地震や火災、風水害、雪害などの天災地変で建物が被害を受けても、契約を白紙解除にはできず、損害賠償の請求を行うこともできない、ということをあなたはご存じだろうか。

今後30年間に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率(2014年12月19日発表、文部科学省提供)

地震をはじめとする天変地異など、売り主・買い主どちらの責任でもない理由で建物に被害が生じた場合の規定については、次のように、売買契約書に明記されているのが一般的だ。

「売り主は自己の責任においてこれを当初の計画通り修復して買い主に引き渡すこと」

この場合、修復のために引き渡し期日が延期されても、買い主は何ら異議・請求を行うことはできないことになっている。しかし毀損の程度が重大であったり、建物が滅失してしまった場合には契約は白紙解除、それまでやりとりされていた手付金などは返還される。

要するに、建物が潰れてしまった時は、契約は解除となり、白紙に戻せるが、損害賠償は請求できない。建物が潰れていない場合、修復可能な場合は直して引き渡されるが、やはり損害賠償は請求できない。被害が大きすぎて修復にお金がかかり過ぎると売り主が判断したときは、売り主側から契約は解除できる。つまり買い主には事後処理に関しての選択権はないのだ。

一戸建てなど注文住宅の建築請負契約の場合は原則、注文主負担になる。天変地異などで工事に損害が出た場合、「施工会社が善良な管理者として注意した」、つまり施工会社側に非がないと認められるときは、損害は注文者が負担することになる。

売り主が倒産した場合などに備えた「住宅完成保証制度」は任意で利用可能だが、買い主が引き渡し前の天災地変に対して備えることができる保険はない。一方、売り主には、不測の事態に備えた建設工事保険といった商品がある。売り主にこうした備えがあるか、念のため確認しよう。

いずれにしても、災害時に、「着工の延期」「仕様の変更」「完成引き渡し時期が未定」などの事態が生じた場合は、契約内容の記述がすべて。スケジュールが狂うと、買い替えなどの場合、売却不動産の処分時期や売却代金などにも影響することが考えられる。契約関連書類は事前に取り寄せ、その中身をよく確認しよう。

長嶋修(ながしま・おさむ) 1999年、業界初の個人向け不動産コンサルティング会社「さくら事務所(http://sakurajimusyo.com/)」を設立、現会長。「第三者性を堅持した個人向け不動産コンサルタント」の第一人者。国土交通省・経済産業省などの委員を歴任し、2008年4月、ホームインスペクション(住宅診断)の普及・公認資格制度を整えるため、NPO法人日本ホームインスペクターズ協会(http://www.jshi.org/)を設立し、初代理事長に就任。『マイホームはこうして選びなさい』(ダイヤモンド社)『「マイホームの常識」にだまされるな!』(朝日新聞出版)『これから3年 不動産とどう付き合うか』(日本経済新聞出版社)、『「空き家」が蝕む日本』(ポプラ新書)など、著書多数。

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