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いま一度、日本語の美しさを実感 大和言葉入門

2015/5/20

日本は古くからほかの国々の言葉を巧みに取り入れながら、豊かな表現世界をつくり上げてきた。しかし、日本固有の大和言葉は影を潜めつつあるという。美しく味わい深い「和の表現」を使いこなせば、これまでとは違った印象を残せるはずだ。

日本語は、その生い立ちから大きく3つに分けることができる。日本で生まれ育った「大和言葉」、中国から取り入れた「漢語」、さらに中国以外の国々から入ってきた「外来語」だ。

この3つを、普段は特に意識することなく使って暮らしている。しかし近頃は漢語や外来語に押され、大和言葉があまり使われなくなっているという。『日本の大和言葉を美しく話す』(東邦出版)の著者、高橋こうじさんは「日本固有の美しい言葉がたくさんあるのに、もったいない」と嘆く。

大和言葉とは、どんな言葉なのか。例えば万葉集に収められた歌は、わずかな例外はあるものの、ほぼすべてが大和言葉。誰もが一度は耳にしているであろう『故郷』など、「千年以上の後、明治期に作られた唱歌も、ほとんどに大和言葉が使われています」(高橋さん)。

声に出して読むと、どちらも耳に優しく響き、なぜか心に染みる。「それこそが大和言葉の良さ。初めて耳にした単語も、どこか懐かしく、美しいと感じるのは、やはり日本の風土のなかで生まれ、大切に育まれてきた日本固有の言葉だからなのだと思います」(高橋さん)。

ではなぜ、人々の口に上らなくなったのか。漢語が多用されるようになったのは、実は明治期以降。漢語は造語能力が高く、『経済』『哲学』など抽象的な概念や新しい物事を表現するのに便利だったからだ。また、頭に「新」と付ければ新しく、「再」なら繰り返しと分かるなど、「漢語は文字を重ねて次々と新しい単語を作ることができる。横文字(外来語)も、新しさや一見おしゃれな感じが好まれて、ますます増えています」(高橋さん)。

アイデアや発想は「ひらめき」、手紙・書状も「文・便り」など、探してみると身近なところに味わい深い大和言葉が眠っていることに気づく。仕事の場面でも「漢語や外来語が並ぶなかに、『たまさか』『憚(はばか)りながら』など大和言葉を1つ挟むとそれがアクセントになり、聞き手の印象に残る」と言う。

また「気に入った大和言葉を心に留めておくだけでも、表現の幅はぐっと広がります。初めは古めかしく感じるかもしれませんが、年を重ねるほどにしっくり来ます」(高橋さん)とも。

ただし使い過ぎは禁物。使い慣れない言葉は妙に目立ってしまう。

「繰り返し使って、しつこいと思われては逆効果。まずは、スピーチや手紙などあらかじめ準備できるものに、ひと色差すようなつもりで盛り込むとよいでしょう」(高橋さん)

■知っているようで知らない「大和言葉」10の問い

耳にしたことはあっても、実はその意味を知らなかったり、誤解していたりする大和言葉も多いのではないだろうか。美しい言葉は正しく使ってこそ生きるもの。まずはこの10の問いで、「大和言葉力」をチェックしてみよう。語源を知ると正しい意味や使い方を覚えやすく、日々の会話でもさりげなく使えるようになる。

【Q1:手だれ】

(1)手癖が悪い

(2)優れた技を持っている

(3)手先が器用

【答え:2】

「名人」「達人」など漢語でも表現できるが、「手だれ」「腕利き」など、体の名称を使った大和言葉のほうが、技を繰り出す巧みな姿が生き生きと伝わってくる。

【Q2:きざはし】

(1)廊下

(2)橋

(3)階段

【答え:3】

「きざ」は刻む、「はし」は橋。その昔、橋は「2カ所をつなぐもの」という意味で使われ、「はしご」もそこから来た言葉。きざはしは、2つの地点をギザギザと刻む道という意味。

【Q3:まろうど】

(1)主人

(2)客

(3)料理人

【答え:2】

語源は「まれ(稀)ひと」。たまに来る人、つまり客人を指す。『枕草子』にも、急用があるときに来て「長言(長話)するまらうと」にはイラッとする、と使われている。

【Q4:しもたや】

(1)普通の民家

(2)商店

(3)盛り場

【答え:1】

「仕舞(しも)うた屋」が語源。つまり今は商いをやめた家、の意。店じまいという言葉は今もよく使うが、廃業するなら「店を畳む」と言ったほうが誤解を生まない。

【Q5:目もあや】

(1)野暮(やぼ)ったい

(2)暗く、地味

(3)きらびやか

【答え:3】

「あや」は「怪しい」。身に着けた衣服や飾りがあまりにきらびやかで、目がクラクラするほど、という意味。「派手」よりも激しい表現だ。

【Q6:ゆくりなく】

(1)手際よく

(2)思いがけず

(3)なんとなく

【答え:2】

どことなくのどかな響きがあるが、実は「突然のことで」と驚きや戸惑いを表す言葉。パーティーの席などで「ゆくりなくもスピーチのご指名を受け…」などと使う。

【Q7:誼(よしみ)を結ぶ】

(1)親しくする

(2)結婚をする

(3)養子縁組する

【答え:1】

「誼」は親しく思う気持ちや、そこから生まれる交流・交遊を指す。目上の人と付き合いがあることを、「○○様と誼を結ばせていただいております」などと使う。

【Q8:敷居が高い】

(1)難易度が高い

(2)高級過ぎて行きづらい

(3)心苦しくて訪問しづらい

【答え:3】

よく使われる慣用句だが、「あのレストランは高級で、どうも~」は誤用。恩師など世話になった人に不義理や失礼をしたままで心苦しい、顔向けできないというときに使う。

【Q9:むべなるかな】

(1)意外に思う

(2)なるほどと思う

(3)簡単だと思う

【答え:2】

「むべ」は「なるほど」という意味。驚いたり感心したりしたことの背景を聞き、「ああ、なるほど!」と納得したときに「それは“むべなるかな”です」などと使う。

【Q10:ほんのお口汚しですが…】

(1)「まずいものですが」

(2)「量が少ないですが」

(3)「見栄えが悪いですが」

【答え:2】

おしなべて食べ物は口を汚すもの。量が十分なら腹は満ちるが、口を汚すだけで腹の足しにならないほど少し、という意味。お茶菓子や酒肴(しゅこう)を出すときに謙遜して使う。

この人に聞きました

高橋こうじさん
文筆家。1961年、埼玉県生まれ。慶應義塾大学文学部在学中からテレビ番組の企画に携わり、卒業後ライターに。主にドラマや商業演劇の企画を行う。昨年出版された著書『日本の大和言葉を美しく話す』が22万部のベストセラーに。

(ライター 大旗規子)

[日経おとなのOFF 2015年4月号の記事を基に再構成]

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