他の企業再生ファンドも、必ずハンズオンで企業価値を向上させようとしているはずだ。なぜならば、それがファンドに資金を投じている投資家が期待することだからだ。
唯一例外があるとすれば、政府系や銀行系のファンドだろう。政府系のファンドは、税金を元手にしているため、目に見える投資家が不在であり、投資家からのガバナンスが利きにくい。また、銀行系のファンドの場合は、自らの債権保全(融資の返済を確実にすること)が大事であり、株式の価値を上げたいという投資家の期待との間で利益相反がある。よって、日本が今後育成すべきなのは、あくまでも「民間・独立系の企業再生ファンド」なのだ。
たち吉の場合、もし経営が立ち行かなくなれば、同社に商品を卸している全国多数の窯元の経営も大きな影響を受け、ひいては日本の伝統工芸が失われることになる。このように、企業再生ファンドが担う社会的責任は重い。企業再生ファンドが活躍の場を広げて市民権を得るためには、ハンズオンで企業と二人三脚で再建に取り組む姿勢が欠かせない。政府も成長戦略の一環として、民間・独立系の企業再生ファンドに本格的に資金が流れる仕組みを確立することが重要だ。
安東泰志(あんどう・やすし) 1981年に三菱銀行(現三菱東京UFJ銀行)入行、1988年より、東京三菱銀行ロンドン支店にて、非日系企業ファイナンス担当ヘッド。90年代に英国ならびに欧州大陸の多数の私的整理・企業再生案件について、参加各行を代表するコーディネーターとして手がけ、英国中央銀行による「ロンドンアプローチ・ワーキンググループ」に邦銀唯一のメンバーとして招聘(しょうへい)される。帰国後、企画部・投資銀行企画部等を経て、2002年フェニックス・キャピタル(現・ニューホライズンキャピタル)を創業し、代表取締役CEOに就任。創業以来、主として国内機関投資家の出資による8本の企業再生ファンド(総額約2500億円)を組成、市田・近商ストア・東急建設・世紀東急工業・三菱自動車工業・ゴールドパック・ティアック・ソキア・日立ハウステック・まぐまぐなど、約90社の再生と成長を手掛ける。東京大学経済学部卒業、シカゴ大学経営大学院(MBA)修了。事業再生実務家協会理事。著書に「V字回復を実現するハゲタカファンドの事業再生」(幻冬舎メディアコンサルティング)。
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