企業再生ファンドが市民権を得るには(安東泰志)ニューホライズン キャピタル会長兼社長

2015/5/3

カリスマの直言

「企業再生ファンドは企業と二人三脚で再生をめざす『ハンズオン』型で価値を向上させようとしている」

4月1日、「全員が新入社員」という入社式が行われた。舞台は宝暦2年(1752年)に創業し、263年の歴史を持つ京都の老舗企業、「たち吉」だ。

同社は、全国の津々浦々の百貨店やアウトレットに売り場を持ち、全盛期には売上高271億円(1992年)を誇っていた和食器の大手だ。しかし、家族形態や食の嗜好の変化を受け、業界全体の売上高は減少の一途をたどり、たち吉の売上高も2013年度は約40億円にまで落ち込んでいた。今年3月末時点で、もはや現預金はゼロに近く、このままでは立ち行かない状況だった。近年は、資金難から十分な在庫が持てず、ブランドもどんどん毀損していた。

たち吉の経営再建に取り組んでいるのは筆者が運営するニューホライズンキャピタルだ。我々は、必要となるヒト・モノ・カネだけを新会社に切り出す「事業譲渡スキーム」を用いて同社の事業を存続させるべく、短期間で債権者、取引先、社員の方々などの同意を得て4月1日から「新・たち吉」をスタートさせた。

したがって、全社員は「新・たち吉」の新入社員というわけだ。今のたち吉は、3月までの旧会社とは異なり、財務面では優良企業に生まれ変わり、信頼を取り戻しつつある。

社会の中でこのような役割を担うのが企業再生ファンドだ。企業再生ファンドは、いざ企業の再生が必要な時に、経営陣の同意を得た上で資本性のお金を機動的に入れることが出来るのが最大の強みだ。

今年に入ってから、この企業再生ファンド(広義には「プライベート・エクイティ・ファンド」)の活躍がマスコミで報道される機会が格段に増えた。1月に民事再生法の適用を申請したスカイマークは、投資ファンドのインテグラルからつなぎ融資を受け、最終的には同社と全日空とが共同スポンサーとして支援する形で、再生計画案の策定を行っていくとしている。各種の報道によれば、インテグラルの佐山展生代表は、将来は債務の株式化(DES)という手法を用いて、融資を株式に転換する意向という。

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