女性に多い片頭痛 半数は月経が引き金に

日経ヘルス

いわゆる“頭痛もち”の人の頭痛は「緊張型頭痛」と「片頭痛」の大きく2タイプに分けられる。このうち、片頭痛は急に激しい痛みに襲われるため、生活に支障が出やすい。痛みを怖がり、鎮痛薬を頻繁に服用すると薬剤の使用過多(乱用)になりやすいのも問題だ。今回は、片頭痛を引き起こす要因や、女性ホルモンとの関係について解説する。
(イラスト:いいあい)

ズキンズキンと脈打つような痛みがあり、吐き気があったりする。また、光や音に敏感になって痛みが増す。つらいので、できればじっと寝ていたい――。こんな症状のある人は、片頭痛の可能性が高い。

片頭痛は多くの場合、ストレスや肩こり、寝不足といった、体調を崩すような誘因がきっかけで発症することが分かっている。月経もその一つで、女性の片頭痛患者の約半数が、月経を誘因の一つに挙げる。

「月経時や排卵日は女性ホルモンのエストロゲンの血中濃度が急減する。この落差が片頭痛発症の引き金になると考えられている」と話すのは富士通クリニックの五十嵐久佳医師だ。

月経と片頭痛の意外な関係

「月経前に、多くの人がむくみや妙に甘いものが食べたくなる、あくびが出るなどの症状を訴えるが、実は片頭痛の前ぶれ症状も同じ」(五十嵐医師)。これらの症状は、脳でホルモン分泌や自律神経をつかさどる視床下部が引き起こすと考えられている。「女性ホルモンの急低下以外に、何らかの原因で心身のバランスが崩れたりすることが片頭痛の引き金になりやすい」(五十嵐医師)。

片頭痛は各年代とも男性より女性の方が多い。特に30~40代女性に多く、30代では5人に1人が片頭痛とも。50代以降は減少。(出典:Sakai F,Igarashi H.Prevalence of migraine in Japan:a nationwide survey.Cephalalgia.;17,15-22,1 997)
女性の片頭痛患者539人を対象にした調査では、7割近くが「肩・首の凝り」から片頭痛が起こると回答。「精神的ストレス」や「月経」が引き金になると答えた人も半数近くにのぼる。(出典:五十嵐久佳 日本頭痛学会誌;37,61-64,2010より改変)

人込みや換気の悪い場所、強い光、音、においなどが引き金になる人も多いが、何が引き金になるかは人によってさまざま。環境 や生活リズムの急な変化が片頭痛のきっかけになりやすいといわれる。食品は人によって誘因になるものが違うので、今までの経験から食べた後に頭痛を起こしやすいものを各自で把握し、控えることが大事だ。ただし、アルコールは誰にも高率で片頭痛のもとになるとされる。

また、母親が片頭痛の場合、子に体質が受け継がれやすい。だが、「親もそうだったし、体質だから仕方ないと我慢したり、自己流で対処してしまうのが問題。打つ手はある」と五十嵐医師は説明する。

「月経時に片頭痛を起こしやすい人は、エストロゲンがほぼ出なくなる閉経後は頭痛の頻度が減り、痛みも軽くなることが多い」と話すのは牧田産婦人科の牧田和也院長。「ただし、更年期の間はエストロゲンの値が不安定なため、頻度が増えることもある」(牧田院長)。

22人の女性を対象に、3カ月間の頭痛日記で発作回数を調べた。片頭痛はエストロゲンの血中濃度が急減するときに起こりやすい。月経初日前後や排卵日直後は要注意。(出典:五十嵐久佳 診断と治療;90,6,877-882,2002および峯岸敬 日産婦誌;59,4,N-41,2007より改変)※ホルモン値は月経第1日目までの表示となっている

一方、妊娠中はエストロゲンの分泌が高めで安定するため、片頭痛は起こりにくくなる。だが、出産後にホルモン分泌が元に戻ると再発し、育児ストレスや寝不足で妊娠前より起こりやすくなる人もいる。

(イラスト:いいあい)

片頭痛の痛みのメカニズムはまだ解明されていないが、「ストレスなどにより頭の血管を取り巻く三叉神経が刺激され、痛み物質を放出し、それが血管を広げて炎症を起こし、頭痛を引き起こすといわれている」(五十嵐医師)。

いつもと違う頭痛はすぐに受診を

頭痛には、何らかの病気が原因となって起きるものもある。特に、くも膜下出血や脳梗塞など脳の病気だと、命を脅かし一刻を争う。

これらの病気は40歳以上でリスクが高まる病気だけに、「いつもと違う痛みや今までなかったのに突然発症した場合は、すぐ頭痛外来か脳神経の専門施設で検査してほしい」(牧田院長)。直ちに命にはかかわらないが、甲状腺や鼻の病気にも注意が必要だ。

■この人たちに聞きました

五十嵐久佳さん
富士通クリニック(川崎市中原区)・東京クリニック 頭痛外来担当。北里大学医学部卒業。宮内庁病院第二内科医長、神奈川歯科大学附属横浜研修センター内科学講座教授などを経て2012年より現職。北里大学医学部客員教授兼任。日本頭痛学会理事・専門医
牧田和也さん
牧田産婦人科(埼玉県新座市)。関西医科大学卒業後、慶應義塾大学産婦人科学教室入局。2008年より現職。慶應義塾大学病院産婦人科に併設の更年期外来の診療も兼務。婦人科領域では数少ない頭痛専門医

(ライター 渡邉真由美、構成 日経ヘルス 黒住紗織)

[日経ヘルス2015年5月号の記事を基に再構成]

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