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ヒット総研の視点

気にしたい空気の汚染 不安症の原因にも(下) 日経BPヒット総研 西沢邦浩

2015/5/2

日経BPヒット総合研究所

エンターテインメント、トレンド、健康・美容、消費、女性と働き方をテーマに、ヒット案内人が世相を切るコラム「ヒットのひみつ」。今回のキーワードは【空気の汚染】です。大気汚染がある時、屋外での運動は果たして健康にプラスなのでしょうか、それとも控えた方がいいのでしょうか。

■室内では建材や家具から出る化学物質に注意

体内に入ってくる重量が最も多いとされている「室内の空気」の汚染物質はどうか。

まず、室内の空気のPM2.5濃度を一気に高めるのがたばこの煙だ。

環境省による、PM2.5の「注意喚起のための暫定的な指針」によると、大気中の濃度が1日平均で70μg/m3(マイクログラム/立方メートル)を超えたら「不要不急の外出を控える」とされているが、自由喫煙の居酒屋だと500~700μg/m3、タクシー内で一人以上が喫煙した場合1000μg/m3を超えるとする報告もある。

在中国米国大使館の観測データによると、北京で濃霧状にPM2.5が発生している日には300μg/m3を超えているので、喫煙により引き起こされるPM2.5濃度の高さがわかる。

最近、日本で35歳以上の女性1万5719人を15年以上追跡した研究結果が発表されたが、夫が喫煙者で自分が非喫煙者の妻が乳がんにかかるリスクは、夫婦が共に非喫煙者の場合の1.98倍だった。非喫煙者だったら受動喫煙に注意するに越したことはない。[注8]

ほかにも、建材や家具などから揮発する化学物質が主な原因となるシックハウス症候群がある。東海大学医学部の坂部貢教授が研究代表者を務める『シックハウス症候群の診断基準の検証に関する研究』によると、一般人のうち約18%に同症状が認められるという調査もあるという。

「2003年に改正建築基準法で建材についてはホルムアルデヒドの使用が制限されたが、フタル酸エステルなど新規の環境ホルモン様物質が壁材や接着剤などから検出されている」(坂部教授)

規制もあり、一時に比べ低くなっている傾向はあるが、東アジアの国で作られた家具や遊具、IH調理器などから高い濃度のホルムアルデヒドやトルエンなどが検出されることがあるそうだ。

「空気は目に見えず拡散し、調べるのが難しいため、食品などに比べると圧倒的にリスク研究が遅れている。これらの物質に対する反応には個人差があるが、アレルギー疾患がある場合、シックハウス症状が増悪することも多いので気を付けてほしい」(坂部教授) 

[注8]Cancer Science. DOI: 10.1111/cas.12619

■部屋には炭を置く。屋外での運動は健康にプラス

では、私たちは汚染された空気にどう立ち向かえばいいのだろう。

屋外なら「光化学スモッグが発生しているときはできるだけ外に出ない」(大河原さん)、室内なら「最低2時間に1回は換気し、冬は、できるだけ燃焼型の暖房器具の使用をやめる。また、新しい家具を買って開けた瞬間に強い臭いがするような場合には注意」(坂部教授)といったことが基本になりそうだ。

マスクや空気清浄機も役立つだろう。こうしたグッズの売り上げが伸びていることは、2014年8月このコーナーに掲載された「PM2.5はシミ増やす 美容業界が注目する新市場」の記事を参照されたい。汚染された空気から肌を守る化粧品や洗顔ブラシもあるようだ。

室内空気の汚染対策として坂部教授は「活性炭を含むフィルターなどで化学物質やハウスダストを吸着するタイプの空気清浄機、もしくは備長炭のような炭そのものの設置」を薦める。「炭は、普通の家庭の部屋なら一部屋に1、2カ所に置いておくだけでも違う。1カ月に1回程度、沸騰したお湯で15分くらい煮沸して乾かせば、何度でも使える」(坂部教授)。ハイテクな器具もさることながら、改めて炭の力を見直した。

また、特定の物を使ったときに臭いや不調を感じるときは消費生活センターへ、部屋にいると調子が悪いがその原因がわからないというときは、シックハウス症候群の可能性も否定できないので、地域の保健所の生活衛生を担当する課に問い合わせるとよいそうだ。

自分のシックハウス症候群リスクが高いかどうかは、千葉大学予防医学センターのホームページ内にある「ケミレス必要度テスト」などでチェックできる。[注9]

少しくらい大気汚染があっても、気にせず運動をしたほうがプラスというデンマークの研究も発表された。

5万人を超える都市住民を追跡したところ、大気汚染度が比較的高い地域であっても、屋外でスポーツやサイクリング、ガーデニングをして体を動かしていた人のほうが、がんや心血管病、糖尿病による死亡リスクが低下していたという。[注10]

PM2.5やホルムアルデヒドなどを検知する「Aware」(ブルーエア社)

どうあがいても毎日とてつもない量の空気が体内に入ってくる。汚れた空気から逃げる方法がなかなか思いつかないとしたら、しっかり体を動かしてそのダメージを帳消しにする効果を得てやろうと考えた方が、気が楽かもしれない。

ちなみに、大気汚染状況は、国立環境研究所の「大気汚染濃度予測図」、環境省の大気汚染物質広域監視システム「そらまめ君」などで確認できる。[注11]

「空気を読む機械」も登場する。それが、スウェーデンの空気清浄機メーカー、ブルーエア(Blueair)がこの6月に発売する、PM2.5やホルムアルデヒド、ハウスダストなどを検知する「Aware」。瞬時に検知した情報を携帯端末に送り、その情報をもとに空気清浄機を調整できるという触れ込みなので、話題になりそうだ。

[注9] http://check.chemiless.org/
[注10] Environ Health Perspect; DOI:10.1289/ehp.1408698
[注11] 大気汚染濃度予測図http://envgis6.nies.go.jp/osenyosoku/
  そらまめ君http://soramame.taiki.go.jp/

 

西沢邦浩(にしざわ・くにひろ)
日経BPヒット総合研究所 上席研究員・日経BP社ビズライフ局プロデューサー。小学館を経て、91年日経BP社入社。開発部次長として新媒体などの事業開発に携わった後、98年「日経ヘルス」創刊と同時に副編集長に着任。05年1月より同誌編集長。08年3月に「日経ヘルス プルミエ」を創刊し、10年まで同誌編集長を務める。早稲田大学非常勤講師。
[参考] 日経BPヒット総合研究所(http://hitsouken.nikkeibp.co.jp)では、雑誌『日経トレンディ』『日経ウーマン』『日経ヘルス』、オンラインメディア『日経トレンディネット』『日経ウーマンオンライン』を持つ日経BP社が、生活情報関連分野の取材執筆活動から得た知見をもとに、企業や自治体の事業活動をサポート。コンサルティングや受託調査、セミナーの開催、ウェブや紙媒体の発行などを手掛けている。

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