武器はライブとネット テレビ局がアイドル事業拡大
日経エンタテインメント!
アイドルブームが息長く続く理由に、テレビ局が有力コンテンツとして早くから目を付けてきた背景がある。2015年に入ってから、その動きがさらに加速している。2010年から毎年夏に「TOKYO IDOL FESTIVAL」(TIF)を開催し、アイドルシーンの多様化の一翼を担ってきたフジテレビは、2015年3月から同イベントのスケールを拡大し、「TOKYO IDOL PROJECT」をスタートさせた。夏に行われるTIFを軸にして、ライブとウェブでの展開を大幅に強化する。
ライブ面では、数組のアイドルを集めた「TOKYO IDOL PROJECT LIVE」を毎月開催する。ライブの模様などは、ネット配信のほか、地上波、BS、CSなどでも展開。2015年3月30日には、地上波で『TOKYO IDOL PROJECT TV』を特番で放送した。また「TOKYO IDOL PROJECT WEB」では、独自ニュースやインタビューの掲載などを含めたアイドルに関する情報発信を幅広く行う。
「アイドルシーンの底上げをさらに進め、情報発信を強化することで、一般層へもアイドルの魅力を伝えていく」と2015年から総合プロデューサーを務める、コンテンツ事業局の濱田俊也氏は話す。
「テレ朝動画」で、ももいろクローバーZやでんぱ組.incの番組を手がけてきたテレビ朝日は2015年1月、ガールズコンテンツに特化したサイト『LoGiRL(ロガール)』をスタートさせた。ネットのライブ配信番組が柱で、現在毎週月~金の19~23時を中心に、1時間枠の生番組を15組以上のグループが発信している。アイドル関連のニュースやライブの写真なども含めすべて無料配信している。
「放送に依存しないメディアをインターネット上に新しく創ることが目的。無料動画、テキスト&フォト、生配信の3つのコンテンツが相互補完することで、相乗効果を狙う」(総合ビジネス局デジタル開発部長の西村裕明氏)
今後の事業化については「まずは認知度を上げることが最重要課題。無料サービスから付加価値を付け、有料サービスにシフトしていく『フリーミアム』の考え方を準用している」(西村氏)。将来は、広告運用やコンテンツのソフト化を視野に入れているという。
ローカル局からの発信も
こうした動きを始めているのはキー局だけではない。静岡朝日テレビは2015年3月、博報堂DYメディアパートナーズ(MP)と組み、アイドル動画サイト「ピンクス CHANNEL」を立ち上げた。
同局は2010年から、ティーン向けのアイドル情報番組『ピンクス』を放送してきた。現在Juice=Juiceの宮本佳林やSUPER☆GiRLSの浅川梨奈などを、まだ研修生だった時にいち早くナレーターやキャラクターに抜てき。現在、ハロー!プロジェクト所属グループの作詞を手がける児玉雨子が、当時高校生だった番組開始当初から参加し、オリジナル楽曲の作成や関連ライブなども積極的に行うなど、放送されていない首都圏のアイドルファンからも話題になっていた。
「もともと、プロダクトプレイスメントの受け皿として、博報堂DYMPさんとの共同企画の番組。その分、他の番組ほど視聴率に左右されないため、長期的なプランを立てやすく、未来の才能を番組で起用し続けることができた」(同番組担当者)
今回立ち上げたサイトでは、これまで放送してきた『ピンクス』とその関連番組のほか、メイキングなどを配信。博報堂DYMPは動画配信のためのサーバーやオンライン環境を提供する。視聴は無料で、今後は動画コンテンツにどのように広告を挟み込めば効果的かを検証しながら、新たな動画広告モデルの構築を目指すという。
「ネット上にも広告モデルの配信プラットフォームを作ることで、地方局を含めたテレビ局は、ストックされている映像コンテンツを生かせるようになる」と博報堂DYメMPメディアビジネス開発センターの内山昌弘氏は話す。
アイドルは番組のコンテンツとしてだけではなく、動画配信事業、グッズ販売、イベント事業などの面でさらなる広がりや成長できる可能性を秘めていると、各局とも判断していると言えそうだ。
(日経エンタテインメント! 上原太郎)
[日経エンタテインメント! 2015年5月号の記事を基に再構成]
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