女子の心わしづかみ、ブログ発 注目の女性

雑誌やトークショー、ときに売り場イベントなどで、今引く手あまたの女性たちがいる。ラジオパーソナリティーなどを務めるジェーン・スーさん(41)とフードブロガーの平野紗季子さん(24)だ。2人とも世に知られるようになったのはブログに書いていた日記がきっかけで、その独特の視点が女性の心をわしづかみにする。ネット上で誰もが発信できる時代に、広く共感を呼ぶ彼女たちの魅力とは。(聞き手は井土聡子)

ジェーン・スーさん、自称「独身ジャンキー」

ジェーン・スー 1973年東京都生まれ。作詞家、コラムニスト。音楽クリエーター集団の活動に加え、ラジオ番組でパーソナリティーなどを務める。著書に「貴様いつまで女子でいるつもりだ問題」(幻冬舎)も。「商品数が多くてかぶらない」と、通販のニッセン好きとしても知られる。

「何歳までが『女子』なのか?」「SNSにアップされた子どもの写真にいらいらするのはなぜ?」――。世の女子たちが、日々何となく感じている違和感。今、これを解決してくれる女性といえば、スーさんだ。ラジオ番組や雑誌などで活躍するが、きっかけはミクシィで公開していた日記だ。

「世間で言われている、女子はこうあるべきだというものってありますよね。もともとそういうものから、自分がすごくはみ出ているなという実感がありました」

「好きなものには自分が投影されるし、もやもやするものには自分のコンプレックスが投影される。何で思い通りにいかないのか、徹底的に考えます。もやもやすることを自分の中でふに落とすために言語化するのが好きなんだと思います」

2013年10月発売のデビュー著書「私たちがプロポーズされないのには、101の理由があってだな」(ポプラ社)は30代前半のときに、ファミレスで友人とリストアップしたのが原型。

「まだ本気出してないだけで、本気出せばどうにかなると思っている」 「『アルマゲドン』を観て泣いている彼を、バカにした」

同著には独身女性なら誰しも思い当たるフシが101個。それぞれを、ときにぶった切ったり、慰めたりしながら、なぜプロポーズされないのか、ちゃっちゃと解説していく。自称「未婚のプロ」。

「独身で40(歳)になったらプロでいいかなと。結婚したいと言いながら、結局土壇場のところで自分らしさを選んでいるからしょうがない。最優先事項におけない時点で『独身お楽しみジャンキー』だなと思っています」

目下のもやもやは、世の中に広がる強迫観念。

「女性のバリエーションは最少でも『結婚する・しない』『子どもいる・いない』『働いている・いない』と、掛け合わせたら8パターン。昔に比べたら多様性が認められるようになったけれど、最近、どのポジションにいても、充実していなきゃいけないっていう強迫観念があるなと感じています」

「私も毎日充実しているわけではないし、私によって何かの強迫観念が生まれるのは嫌だなと思っています。私が唯一の正解ではないから」

3月にはパーソナリティーを務めるラジオの番組本を出版。共感する女子は多く、書店ではランキング上位に食い込む。

「正直不思議です。でも、自分の魅力は人が決めることだから(何が受けているのかは)確かめなくていいかなと思っています。それが分かってしまうと、それに応えようとして私が苦しくなってしまうので、あえてそこには鈍感でいたいです。使命感とかほんと嫌なので。人のために人生使いたくないんです。でも、まさか未婚がカネになるなんて(笑)。最近『ビジネス未婚』とか言われていますもん」

平野紗季子さん、食べ物は裏切らない

ひらの・さきこ 1991年福岡県生まれ。会社員、フードブロガー。小学生のときから食日記を付け始め、自身を「ピュアフーディー(生粋のごはん狂)」と呼ぶ。東京・新橋のジューススタンド「ベジタリアン」(写真上)はお気に入り。ルミネが今春開校するカルチャースクールの講師も務める。

大学生のときに書いていた日常の食にまつわるブログが話題となり、現在は雑誌「an・an」での連載を始め、各誌のフード特集から引っ張りだこの平野さん。昨夏には、伊勢丹新宿本店でイベントも開催した。彼女の食に対する思いはレシピを提案したり、グルメ情報を紹介したりする、いわゆるフードブロガーとは異なる。

「…アイスが、パイが、クリームが、ただでさえ豊かな個性のきらめきが、潰しあうどころか手を取り合って大爆発、…アイドルグループのマネジメントに携わる人はここのパフェを一度は食べるべきと思う。…」

「…小さい頃、人の家の麦茶が不気味だった。…味がまずいとかそういうことではなくて、どうにも生々しくていやだった。他人の、極めて個人的な部分が、なみなみと自分の喉を通って入りこんでくるのが。…」

昨年4月発売の著書「生まれた時からアルデンテ」(平凡社)から。発売直後に3刷になった同著は、彼女ならではの食べること論が繰り広げられる。

「食べ物だけは裏切らないという絶対的な信仰がある。食べるってアナログで、食べたら必ず実感が伴う。それは自分しか得られない感動で、確かなものという感じがする。自分は食べることで心揺さぶられる中毒なんだと思っています」

はやりのグルメには行列ができ、ネット上の星の数を信じてレストランを予約する今の時代。食べることもファッションの一部になりつつある。

「ただのおいしいもの情報は嫌いです。ご託を並べたり、上から目線で批評したりすることも。『食べログ』もいいんですけど、食べるってその瞬間しか存在しない行為なのに、情報になっていくむなしさを感じてしまいます」

「『あそこのもつ煮をうまいっていう人は信用ならない』とか、『食』って何かをジャッジする基準に利用されやすい。何を好んで食べるかは、自分をさらけ出すことで、ときに差別のきっかけにもなってしまう」

「ひとりで食べるの好きなんです。人と一緒だと、メニューを決めるのも焦っちゃってストレスだし、『これおいしい……でいいんだよね』という女子会とかでよくある『味の擦り合わせ』とか、つらい。食に関しては、極めて個人的でありたいと思っています」

大学卒業後、昨年から社会人に。会社員としても働く毎日だ。

「一日にひとつくらいはまだ食べたことのないものを食べたいけれど、なかなかそうはいかなくて。でも、限られた時間の中でのランチなど、抑圧された『OLの味』にも気づきました。相席のおじさんの注文がおいしそうに見えるとか……」

「今気になっているのは、申し訳程度にでる『打ち合わせのお茶』。テーブルの上には資料とかが置かれ、片隅に追いやられている。必要なさそうでいて、でも必ずあるという立ち位置。こっそり写真に撮って、コレクションしています」

[日経MJ2015年4月17日掲載]

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