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男の更年期対策 「漢方常備菜」でホルモン力アップ

2015/5/6

更年期というと、女性特有の不調のことだと考える人は多いかもしれない。しかし、男性にだって更年期があることをご存じだろうか。

エネルギーに満ちた気力、豊かな毛髪、精力といったいわゆる男らしさをつかさどる男性ホルモン「テストステロン」の分泌は40代後半から低下するといわれており、この頃から男性の老化は加速する。加齢による男性特有の不調については、約2000年前に書かれた東洋医学の教科書『黄帝内経(こうていだいけい)』に既にある。その記述によれば、男性の体は8歳、16歳、24歳…と8の倍数の節目で大きな変化を迎え、32歳が最も心身が充実する時期。40歳を過ぎると徐々に老化が始まり、さまざまな不調が表れ始める。「40代になったら、食養生による更年期支度を始めてほしい」と言うのは中医師の邱紅梅(きゅうこうばい)さんだ。

「閉経という象徴的なサインがある女性と違って、男性は更年期を自覚しづらい点でより注意をしなければなりません。自覚はなくとも体の中では老化が少しずつ進行していて、症状が起きてからでは対策が後手に回ってしまいます。特に48歳から64歳までは、体力・気力・生殖能力の低下が急速に進む時期。昇進・左遷・退職など社会的立場の変化の影響を受けて、心身の不調が深刻になるケースも少なくありません」(邱さん)

「俺に限って」という自信過剰な人ほど油断は禁物だ。加えて、関心を向けるべきは「精力減退」だけではない。

「ED(勃起不全)は一つのサインにすぎません。同時進行的に毛髪や皮膚、視力、筋力、そして内臓機能など全身に老化症状が出ています。実際、妻に連れられて相談にいらっしゃる50歳前後の男性は、自覚しているよりずっと老化が進んでいますよ」(邱さん)

■食養生のポイントは補腎と活血

では、どう備えるべきか。東洋医学がその長い歴史のなかで推奨してきたのが「食養生」。つまり、毎日の食事で若さと健康を保つ方法だ。まず日々の食習慣で不調を遠ざけ、それでも対処できない症状について薬を処方するという考えが基本にある。身近な食材が体にどのような作用を及ぼすか、体験と観察による研究の蓄積が東洋医学の歴史でもある。

中医学では、人体を1つの大きな有機体として捉える。胃腸など個別の組織が独立して働くのではなく、「五臓」と呼ばれる5つの働きが互いに影響し合いながら機能を果たすと考えるのだ。五臓とは、肝(かん)・心(しん)・脾(ひ)・肺(はい)・腎(じん)に分類され、それぞれが全身の生理機能を維持する「気(き)・血(けつ)・水(すい)」の生成と貯蔵をつかさどる。五臓の働きを活性化して気力に深く関わる「気」、全身に栄養を運ぶ血液のような役割を果たす「血」、体に必要な水分を与え、循環を促進する「水」という3つのエネルギーのバランスが整ってこそ、健康は維持される。

「五臓のなかで老化に深く関わるのが『腎』。成長や生殖能力、自律神経やホルモンバランスなど、若さやエネルギーをつかさどる機能です。体力・気力・精力の衰えに負けないために、腎を活性化する『補腎』の食材を積極的に取りましょう」(邱さん)

もう一つ、心がけたいのは「活血」。血の巡りを良くする食材をふんだんに取り入れることで、栄養分を体の隅々にまで行き届かせるという。血の巡りが良くなれば体がぽかぽかと温まり、気力も満ちてくる。「最近は、男性にも冷え症状が多く見られます。血の巡りが悪いと、脂肪の代謝も低下してしまいます。メタボ予防のためにも活血は重要なのです」(邱さん)。

「補腎」と「活血」を毎日の食卓に取り入れるため、邱さんは「漢方常備菜」を推奨する。混ぜるだけ、煮込むだけ、漬け込むだけの簡単レシピで保存も利くから、週末にまとめて作って冷蔵庫に保存しておけば、気軽に食事に取り入れられる。鍋物や冷ややっこの薬味や調味料として、副菜として、自由にアレンジもできるから飽きずに続けられるのも魅力だ。

「漢方の食養生は“たまに食べる”では意味がない。毎日少しずつ摂取してこそ、効果が期待できます」(邱さん)

■更年期は2つのアプローチで乗り切る、ホルモン力アップの漢方食材

更年期に負けない体をつくるために今日から始めたい食養生。まずは「補腎」と「活血」に働く食材をそろえよう。どれも一般的なスーパーで手に入りやすい身近な食材ばかりだ。

衰えを遅らせ、パワーみなぎる若々しさを保つ「補腎」の食材。その筆頭として邱さんが薦めるのはヤマイモだ。滋養強壮、強精に効く生薬として古くから用いられてきた。黒豆、黒ゴマ、焼き海苔など「黒い食材」もいい。強い香りが特徴のニラも、下半身全体を強化するといわれている。

補腎作用の高いこれらのメーン食材に、温め作用や気を巡らせる作用のある赤身肉、味噌、魚介類などのサブ食材を組み合わせることで、より効果が期待できる。

「活血」のメーン食材としては、ニンニク、玉ネギ、ショウガ、カレー粉、五香粉(ごこうこ)。全体的にスパイシーな香味の食材が目立つが、「これらを多く食す習慣のある中国寒冷地帯には薄毛の発症が少ない」(邱さん)。いずれも血流を促進し、体を温める作用が強い。こちらも赤ワイン、黒酢、オリーブオイルといったサブ食材と組み合わせるのがお勧めだ。意外なようだが、西洋からシルクロードをやって来たオリーブの若い実も生薬として使われてきた歴史がある。

なお、食材の力は野生に近いほど高まると考えられており、畑で栽培されるナガイモよりも山に自生する自然薯(じねんじょ)のほうがパワフルだ。また、温かい状態で食べることも、衰えを防ぐ食養生のポイントだ。

この人に聞きました

邱 紅梅さん
桑楡堂薬局顧問・中医師。内蒙古生まれ。北京中医薬大学医学部卒業後、同大学病院に医師として勤務。WHO国際伝統医学養成センター非常勤講師などを経て来日。東京学芸大学大学院生理・心理学修士号取得。婦人科系や不妊の漢方指導が得意。

(ライター 宮本恵理子 写真 福知彰子)

[日経おとなのOFF 2015年3月号の記事を基に再構成]

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