空き家対策と同時に住宅の総量規制が必要な理由不動産コンサルタント・長嶋修

ムダな公共工事よりたちが悪い

新築住宅建設による景気対策は基本的に業界に対するもので、ごく短期的な効果しかない。それどころか、長期的には大きなマイナスを生んでいる可能性が高い。公共工事でムダな道路を造るのと同じ構図だ。負債(住宅ローン)が個別の家計に集中する分、なおたちが悪いといえる。

一方で、中古住宅流通は個人間取引であるため、取引価格そのものは国内総生産(GDP)にカウントされない。しかし、もし日本の中古住宅が、築年数が経過してもその価値を維持することができていれば、それに応じたいわゆる「資産効果」により消費はより活発になっていたはずだし、担保価値上昇によって融資枠が生まれ、投資も相当程度増大していたはずである。「個人に資産を持たせることによる資産効果(内需経済誘発効果)」が中古住宅市場の活性化には、ある。

幅広い所得層に出る住宅の「資産効果」

米国や英国などでは1990年代を通じ株式市場が高騰を続けたが、2000年には下落トレンドに転じ、2003年まで調整局面にあった。にもかかわらず、住宅価格は一貫して上昇を続けたばかりか、上昇率はさらに高まった。

株価の調整局面当初は、株価下落が消費に与える逆資産効果が懸念されていたが、このころから住宅の資産効果が株式にとって代わり、経済は好調を続けた可能性が高い。株式保有は高所得層に偏在しているが、住宅は幅広い所得層に保有されていることのメリットが働いた可能性がある。もっともこの後、資産バブルに突入し、リーマン・ショックへと続くのだが、行き過ぎればどのような市場でもこうしたことは起きる。

住宅市場はもう何十年も、新築住宅建設に対する「大胆な金融政策」と「積極的な財政政策」がとられているが、とうの昔にその政策意義は失われている。住宅の「量の管理」が行われない市場では、都心や都市部の一等立地、地方などのほんの一部の人口偏在地域を除いて、その価値は下がるばかりだ。

たしかに住宅総量目安を設定してしまうと、いかに新築住宅を造り過ぎているのかが白日の下にさらされてしまうため、各所からの抵抗も強いはずだ。国が5年程度の行程表を示し、段階的に新築住宅数を減らしていく道筋を作るのがよいだろう。こうした政策が打たれない限り、一部を除いた住宅に安定的な資産性など望めないだろう。

長嶋修(ながしま・おさむ) 1999年、業界初の個人向け不動産コンサルティング会社「さくら事務所(http://sakurajimusyo.com/)」を設立、現会長。「第三者性を堅持した個人向け不動産コンサルタント」の第一人者。国土交通省・経済産業省などの委員を歴任し、2008年4月、ホームインスペクション(住宅診断)の普及・公認資格制度を整えるため、NPO法人日本ホームインスペクターズ協会(http://www.jshi.org/)を設立し、初代理事長に就任。『マイホームはこうして選びなさい』(ダイヤモンド社)『「マイホームの常識」にだまされるな!』(朝日新聞出版)『これから3年 不動産とどう付き合うか』(日本経済新聞出版社)、『「空き家」が蝕む日本』(ポプラ新書)など、著書多数。
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