空き家対策と同時に住宅の総量規制が必要な理由不動産コンサルタント・長嶋修

「空き家等対策の推進に関する特別措置法」が今年2月に施行され、防犯、景観などの観点から認定された「特定空き家」について、固定資産課税台帳を参照し所有者名義を簡単に特定できるようになった。

また空き家への立ち入り調査も行えるほか、修繕や撤去を命令、さらに強制代執行で建物を解体、その費用を所有者に請求できる。また税制改正では、空き家を放置することによる固定資産税の軽減措置も見直した。しかしこれはあくまで対症療法だ。

新築住宅建設に歯止めを

新築住宅がどんどんできる一方で、空き家が増えることの社会的「コスト」にもっと目を向ける必要がある(老朽化して取り壊しを待つ空き家、東京・足立)

空き家という「結果」に対処する一方、空き家が生まれる「原因」である「住宅の過剰供給」にも手を付ける必要がある。そこで筆者がかねて提案しているのが、多くの国で実施されている「住宅総量目安」あるいは「住宅供給目標」の設定だ。

これには「新築住宅建設は経済波及効果が高い。新築住宅を抑制して、経済はどうするのだ。景気が悪化してもいいのか」という反論がありそうだ。特に昨今は消費増税に伴う景気の腰折れ懸念もあり、もっともな意見に聞こえる。

とはいえ、このまま新築住宅建設を続けるのは、人口・世帯数が長期的に大きく減少するなかで、持続可能ではない。もし続けるのなら、少子化対策にもっと本腰を入れたり、移民を受け入れたりするなど、日本の人口トレンドを根本的に変える何らかの施策を早急に検討、実行に移さなければならないが、とても間に合いそうもない。

長期的には疑わしい経済波及効果

総務省を中心に各省庁共同で5年ごとに作成されている産業連関表によれば、我が国では新築住宅建設には2倍以上の生産誘発効果(経済波及効果)があるとされる。3000万円の注文住宅を1棟建てて売れれば、資材や設備等の発注、職人さんなど関係者の給与が生じ、そしてそれらが消費に回るなどして、全体としておよそ6000万円の経済波及効果があるというわけだ。従って、常に景気浮揚策のトップに挙げられ、そのたびに実行されてきたのが新築住宅建設・販売促進策だ。

しかし本当にそれほどの効果があるのか。人口減少・世帯数減少局面では、新築が1つ建てられれば、その分以上に空き家が発生する。この空き家が放置されれば倒壊や犯罪の温床となるリスクが生まれ、景観として街の価値を毀損する。

こうした外部不経済がもたらすマイナスを差し引いたら、果たしてその経済波及効果はいかほどか。各自治体で行う空き家対策費も膨大だ。「空き家対策法」では、国から各自治体に対し、空き家対策費が計上されるが、こうしたコストはもちろん産業連関表には含まれていない。人口密度がまばらになり、行政効率が悪化する、地価が下落する影響などもしかり。

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