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池袋駅ビルに保育園があったっていい

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日経DUAL
東京23区で唯一「消滅可能性都市」と名指しされたニュースも記憶に新しい豊島区。高野之夫(ゆきお)区長は、若い女性定着のため大規模"女子会"を開催する、2年後までに保育園を10園増やす計画など、素早い対策を打っていました。「消滅なんてさせない!」と職員の士気も高まる、豊島区の子育て支援策とは?

保育受け入れ枠を2年で1000人増に

DUAL編集部 共働き世代が関心を持っているのは、やはり待機児童問題です。2014年の豊島区の待機児童は240人ですが、今後どのような対策を取っていくのでしょう?

高野区長(以後、敬称略) 財政改革で保育園・保育所や人員を減らしたのですが、2008年まで待機児童はいなかったんです。でも、2008年で待機児童が50人になりました。待機児童の数が50人を超えると保育計画を出して国の指導を受けなければならないという決まりがあります。そのため、豊島区では2008年から待機児童対策が始まりました。

2年後までに、0~5歳児の認可保育園・保育所を10園増やします。待機児童は間違いなく増えていくことが見込まれているため、待機児童が1000人増えても対応できるようにするのです。

―― 新たに設ける10の保育園については、場所や規模などが確定されているのでしょうか?

高野 豊島区は土地に余裕が無いため、園庭のある施設の建設はハードルが高いのです。でもそこで諦めてしまったら、絶対に保育園・保育所を増やすことはできません。2015年4月から新制度に移行するなかで、認可の幅が広がりますので、ビルの中など、使える場所はどこでも使っていく方針です。もちろん「子どもにとって良い環境であること」を最優先に判断します。「保育政策担当課長」という専任担当がいて、この課題に対応しています。

―― 民間の保育園・保育所を誘致する担当ということですね。

高野 そうです。例えば、池袋駅前にあるデパートのワンフロアに保育園をつくったっていいと思うんです。そうすればお迎えに行った帰りに買い物だってできて便利でしょう。人口過密の豊島区では、そのくらい大胆な発想をしてもいいと思っています。

就任当時、都内で財政ワーストワン。破綻寸前の区政を預かることに

―― 区議会議員を6年、その後都議会議員を経て、1999年に区長に当選されています。

高野 都議会議員は3期、10年やりました。都政を通じて「東京の中の豊島区」として、豊島区を外から見る機会に恵まれたんです。その後国政に行く方法もありましたが、トップとして街をつくり上げていきたいという思いがあり、区長選に立候補したのです。いわば"憧れ"で区長になったのですが、実際職務に就いたら、豊島区の財政は大変なことになっていたんです。

当時の豊島区の年間の予算(一般会計)は984億円。それに匹敵する872億円もの借金があった。貯金はわずか36億円。区民1人当たり約34万円の借金があった。これを知っていたら区長にはなりませんでしたね(苦笑)。

あのころの行政は、今ほど情報公開はしていなかった。この状況を乗りきるのは情報公開しかないだろうと。それで「スッテンテンな状態を区民に見せる」ことを決めたんです。

―― どのように実践したのですか?

高野 まず財政白書を作り、公開しました。こうした情報公開は23区で一番早かった。

当時の豊島区は「福祉ナンバーワン」と言われるくらい、福祉を大事にする区政をしていました。人口に比例した保育園・保育所の数、近接度、児童館の数などを見ると、子育てという面でも23区の中ではトップレベルでした。ただ、当時は子どもの数がそれほど多くなかったため、まず4園を廃園にしたのです。とにかく財政破綻寸前だったので、区民からの理解も得られました。

職員も施設も多かったため、退職した人員の補充はしない方針を取り、当時3000人いた職員は、10年後に1900人になりました。ただ、23区の人口比で見ると、現状でもまだ少し多いくらいの人数は確保できています。

財政は23年ぶりに好転し、2013年にやっと借金より貯金が少し多くなりました。区民1人当たり7000円の貯金があることになったのです。

―― 改革の結果が出たわけですね。

高野 私は夢とロマンを持って区長になったわけですが、とにかく財政がひどくて、「あれがやりたい、これがやりたい」と話しても、「区長、それをやったら財政面で潰れます」となってしまう。そうなると、あるものを利用してやりくりするしかないわけです。

そこで、小学校の学区ごとに設置されていた児童館や、お風呂まで付いていた老人福祉施設「ことぶきの家」も順次廃止し、2008年度から「区民ひろば」として統合しました。もちろん前の建物をリノベーションして使っています。

最近は、他の区でも施設の再編に苦労しているようですが、豊島区は財政難のおかげで、財政改革が10年先に行えたとも言えます。

あと2校で完成。すべての区立小学校に、学童保育が併設

高野 豊島区では、すべての区立小学校に「子どもスキップ」という施設が併設されます。10年がかりで進め、あと2校で完成です。学童保育を利用する子もしない子も、放課後は真っすぐ来られるという場所です。これも他の自治体が取り入れ始めていますし、国もこの仕組みを、子育て支援の中に組み込んでいます。

―― 全入の学童保育を親の視線から見ると「おやつはどうなんだ」といった細かな点に目が行ってしまいがちです。

高野 今まで児童館にいた先生が、学童以外の児童の面倒も見なければならないので、児童館と比較してしまうと、まだもの足りない面はあります。ただ、以前は、子ども達がいったん家に帰って、ランドセルを置いてから再び出かけなければならなかったものが、小学校併設の「子どもスキップ」になると移動の必要がなくなります。その点で安心できるので保護者からの評価は高いのです。

「消滅可能性都市」に名指しされて

―― 財政も改善し、これからいよいよ「攻め」の時期が到来したのでしょうか。豊島区といえば20~30代の女性の減少により将来、自治体としての機能が維持できなくなる恐れのある「消滅可能性都市」として名指しされたことでも話題になりました。民間の政策発信組織「日本創成会議」の分科会が2014年5月、全国の896の自治体名を挙げたうち、東京都内で唯一豊島区が入っています。

高野 「消滅可能性都市」として名指しされたとき、各部長を中心にすぐに対策本部を立ち上げました。池袋という大ターミナル駅を抱え、一日256万人という利用者数は日本で第2位の規模です。私の就任時は24万人だった人口も、財政改善とともに27万人に増えているんです。若い人も増えてきている。

安全・安心についても、長年の努力の末、いい結果が出てきています。危険ドラッグの事件が起きたときも、すぐ対策本部を作って区民の大会も開き、販売を撲滅させるよう取り組みました。「脱法ハーブ」という名称を「危険ドラッグ」に変えて国を動かすという成果も出しました。

ある住宅情報誌の「2014年版 住みたい街ランキング」では、1位・吉祥寺、2位・恵比寿に続き、3位が池袋だったんですよ。職員を挙げて「わ~っ」と喜んだ直後に「消滅可能性都市」ですから(苦笑)。

―― 消滅の理由は、若い女性の減少とのことですが。

高野 第1号の施策として、子育て世代である20~30歳代を主体とする「としまF1会議」を立ち上げ、当事者の意見やニーズを掘り起こす試みを始めました。そのキックオフとして「としま100人女子会」を開催しました。豊島区在住・在勤・在学の女性達が集まり、豊島区の未来を考えるイベントです。約100人の女性達が集まり、すごい熱気でした。2014年12月には「としまF1会議」の提言が出ました。ちょうど予算編成の時期です。

―― 提案を来年度の予算に活かすということですね?

高野 政策づくりに若い女性が参加するのは初めての試みです。

―― 改革のペースが速いですね。

高野 豊島区には、山も川も無い。神田川は新宿区のものです。畑も無い。公園はありますが、東京23区のなかでは区民一人当たりの公園面積が一番狭い。ついでにお金も無い。でも、人がいます。だから、みんなで知恵を出すのです。

高級地区になる必要はない。「庶民が住みやすい街」にしたい

―― その他、共働き世代が住みやすい自治体にするために、具体的にしていることがあれば教えてください。

高野 住まいですね。豊島区は単身者が多く、結婚したら郊外に引っ越されてしまう。家賃が高いのが原因です。でも空き家は2万戸以上もあるんです。安全・安心を保ちながら街を発展させるには、住みやすい環境を作らなければならないんです。そこで、区としては、高額な新築マンションではなく、割安で住みやすい環境を提供したい。高級な街でなく、庶民の街を作りたいんです。

―― 池袋駅の周辺には、高級ワンルーム物件も多いですが。

高野 投資用のマンションが多いですね。そこで30平米未満のワンルームマンションに課税するという措置を取りました。定住してくれるファミリー層を呼び込みたいのです。豊島区の良さは「ごちゃごちゃして、楽しい街」だから。そこに若い世代が思いを持って集まれば、いい場所になりますよ。大家さん、不動産業者とも話し、例えば賃貸住宅の壁を取り払って、広いスペースにしてもいい、といったふうに、貸す側もフレキシブルに対応していってもらう。また「リノベーションスクール」を設け、大家さんに、リノベーションの技術を持った人が教える試みもしています。

―― 大家さんの意識から変えていくのですね。

高野 リノベーションで物件の価値も上がるし、子育てしやすい環境をつくっていただく。リノベーションは「消滅可能性都市」への挑戦だと思っています。

高層マンションと一体化した新庁舎を建設

高野 2015年5月、連休明けに豊島区の新庁舎ができます。池袋駅の東側、廃校になった小学校の跡地です。9階までは役所があり、11~49階は430戸の高層分譲マンション。あっという間に完売したそうです。全部ファミリータイプです。[注1]

新庁舎の3~4階では、年末年始や祝日を除く345日は休まず役所業務を行います。土日開庁で、テナントの家賃も駅前と同じくらい高額になったそうです。街が活性化するのも移転の目的の一つですから、幸先のいいスタートです。仕事がお休みの土日に区役所が開いている、というのは共働きの皆さんにも喜んでいただけるのではないでしょうか。

実はこの場所は、面積のうち60%は豊島区が持つ小学校・児童館で、後は地権者の持ち物でした。その土地を合わせて市街地再開発事業を実施し、現在ある区役所の一帯に50~70年程度の定期借地権を設定し、その賃料で新庁舎を整備する計画を立てたのです。

最初は反対されましたが、まだ財政は立て直し途中ですから、これしか方法がありませんでした。「ばくち打ちの区長」と言われています(笑)。

今、一番重視しているのは教育と住みやすい地域づくり。消滅しないような豊島区をつくっていきます。どんなふうに"消滅"を回避していくのか、ご注目ください。

注1 豊島区新庁舎は2015年5月7日にオープンした。

(ライター 阿部祐子、撮影 鈴木愛子)

[日経DUAL 2015年3月3日付の掲載記事を基に再構成]

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