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起業の決め手は子どもの後押しだった

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日経DUAL
働くお母さんたちの子育てと仕事の両立を助けたい!という熱い思いから、17年勤めていた会社を退職し、2001年に保育サービスの「マザーネット」を起業した上田理恵子さん。病児保育からスタートし、今では保育所への送り迎えから宿題のサポートや家族の夕食作りまで、サービス内容は多岐にわたります。上田さんご自身の子育て体験と起業のきっかけ、現在の働くお母さんが抱えている問題についてお話をうかがいました。

「子どもが病気のときに預けるところがない」を解決したくて起業

──2001年に保育サービス「マザーネット」を起業した上田さんも、かつて保育所探しに苦労された経験があるそうですね。

長男を産んだのが1992年11月。翌年の4月なら公立の保育所に入れるだろうと思っていたんですが、市役所に行くと「4月から7月に産まないと入れない」と言われて愕然としました。何度も何度も掛けあって、なんとか第8希望の保育所に入所できました。

そこで次は計画的にと思い、2年後に次男を7月に出産。これで大丈夫だと安心したのもつかの間、長男が3歳になっていないので「産休中でお母さんが家にいるなら退所してもらいます」となって。

市役所の人に「そういうことはどこにも書いてありませんが」と聞くと「お母さん、普通、第二子は3年は空けるでしょう」って言われたんです。腹が立って「じゃあ、この市では第一子を4月から7月に産んで、第二子は3年後の4月から7月に産めばいいんですね」と言ったら「みなさん、そうされてますよ」って。

この言葉を聞いて私の中で何かがプツンと切れましたね。

──それで、どうされたんですか。

4月から2人を同じ公立の保育所に入所させようと希望を出したんですが、落選。でもあきらめずに何度も市役所に通い「家計を支えるためにも、どうしても仕事をしないといけないんです!」と訴えました。すると突然「そんなにうるさいんやったら、入ってもらいます」と言われ、第2希望の公立保育所に長男と次男がそろって通えることになりました。

──執念ですね。会社を辞める、という選択肢は考えなかったんでしょうか。

総合職第一期生でしたし、育休も会社で第一号。ここで辞めたら後輩たちに「やっぱり子育てと仕事の両立は無理なんだ」と思わせてしまうんじゃないかな、という思いはありました。

働きながらワーママのコミュニティを設立

──そういうことが、働く母親同士で情報交換ができるコミュニティの立ち上げにつながったんですね。

そうです。当時はインターネットも普及してなくて、お母さんが働きつづけるために本当に必要な情報がなかった。これから出産するお母さんたちには、私のようなつらい気持ちを味わってほしくない!という思いから、働くお母さんたち同士で情報交換や悩み相談ができる場「『キャリアと家庭』両立をめざす会」を作りました。次男出産の3日前のことです。

新聞に会の発足が載ったこともあって、その日のうちに全国から70名の申し込みがありました。「私が働くことに、夫も母親も会社の上司も反対。誰も頼るところがなく、こういう会ができるのを待ってました」という声があったのが印象的でした。

──お悩み相談もたくさん受けていたそうですが。

会員には自宅の電話番号を公開していましたから、いっぱいかかってきました。7年ほど会を続けていく中で、2万件の悩み相談を受けました。一番多かったのは「子どもが病気のときに預けるところがない」。ある時は「私は明日、会社を休んだらクビになってしまう。上田さんにうちの子を預かってほしい」という悲痛な声もありました。

──子どもが病気、だけど仕事は休めない、となると本当に困ります

働くお母さんを応援しているのに、一番困っているときに何もしてあげられない。そんな葛藤があって、17年勤めた会社を退職し、思い切って2001年にマザーネットを創業しました。

──それにしても、起業は勇気がいると思うんですが、よく決断されましたね。

そうですね。相談した方の95%は反対でした。

二人の息子が「会社を作りたい」という母の夢を後押し

でも、出産してから働く意味を考えるようになりました。自分しかできないことは何だろう。ずっと考えていました。悩み相談が2万件も寄せられるのは、神様がワーキングマザーの応援をしなさい、と言ってるのでは。みんなの声に背中を押されて、自然な形で起業することになったのだと思います。

ただ、現実的にはお金の工面が一番大変でした。当時は資本金1000万円を用意しないと開業できなかったので。

子どもが小さいころ、毎晩、2人の子どもと手をつなぎながら、親子で夢を語り合っていたんです。息子たちはプロ野球の選手になるのが夢で、長男は「イチローになる」、次男は「新庄になる」。私は「会社を作りたい。仕事の途中でも子どもの授業参観に行っていい会社」と。当時、授業参観には行きにくい状況でした。

その後、私がその夢をあきらめたんじゃないかと心配した息子たちが「お母さん、夢はあきらめたらあかん。これで会社作り」って、自分たちの貯金箱を差し出してくれました。1200円と676円。私はここで引いたら子どもも夢を描けないようになる、と思ったんです。家計を見直して作った貯金、退職金とベンチャーキャピタルからの出資金で、ようやく創業にこぎつけました。

──ご家族は起業を応援してくれたんですね。

いえ、夫はずっと反対でした。

当時は家計に必要なお金を折半して夫と私が出し合っていましたので、「今までと同じだけのお金を家に入れるならやってもいい」と、プレッシャーをかけられました。ちょうど、創業した月に夫が転勤で単身赴任になり、私の収入が減った分、家計は大変でしたね。だから必死にがんばって。創業3年目から単年度黒字になったときはホッとしました。

──軌道に乗るまではご苦労も多かった?

当時、派遣型の病児保育はありませんでしたから、最初は看護師さんを派遣すればいいと思っていました。新聞の取材を受けて、紙面に「大阪に新会社、子ども病気時に看護師派遣」と出たら、ハローワークから電話がかかってきて「看護師の派遣は法律で禁止されてます。即座に事業を辞めてください」と。大阪府からも止められました。

──そういう下調べもされてなくて。

そうなんです、気持ちで始めたんで(笑)。それで、子育て経験のあるベテラン主婦の方々をスタッフとして採用し、派遣することにしました。看護師資格を持つ方もいますが、医療行為は一切出来ません。

当社の事業が新聞で紹介されてからは、サービスを利用したいというお客様、働きたいという方からの電話が鳴りやみませんでした。やっぱりみんな同じことで困っていたんだな、と実感しました。お客様からの電話があると思うとなかなか帰れないので、息子が熱を出したときには、事務所に寝かせながら仕事をしました。

──病気の子どものケア、残業時の保育園へのお迎えといったマザーケアサービスのほかに、家事代行、夏休み・冬休み中の自然体験スクールなど、設立以来、マザーネットはサービス内容がどんどん増えていますね。

マザーネットの事業内容は自分がこれをやろうと決めるのではなく、働くお母さんが求めるもので、他社がやってなくて行政にもない、というものをやると決めています。事業を作るのは利用者のみなさんなんです。長期休暇中の自然体験スクールも、「小学校4年生になったら夏休み中に預けるところがない」という悩みからスタートして、もう13年ほど続いています。鳥取県智頭町の新鮮野菜を届ける宅配サービスも「子どもに安心・安全な食材を食べさせたい」という声をいただき、昨年11月からスタートしました。

管理職など責任ある仕事を引き受けるべきか。不安を訴える声が急増

──創業前から20年以上にわたって働くお母さんたちの状況を見てきて、変化を感じますか。

社員や管理職など周囲の理解は、多様性を認める方向に少しずつ変わってきたと思います。2005年に次世代育成支援対策推進法が施行されてからは、育児と仕事の両立支援に力を入れる企業が増えてきました。

とはいえ、国の政策にはもっとできることがあると思います。働くお母さんが増えたということもありますが、待機児童の問題は依然として解決されていませんね。幼児保育施設も増えていない。結局、そこでくじけてしまうお母さんは多いんです。

──家事代行の利用が増えているようですが。

料理や掃除などの家事代行の利用者がここ2年くらいで急激に増えていますね。やっぱりみんな、帰宅時間が遅くなっている気がします。長時間労働が進んでいると感じますね。

働くお母さんの悩みで最近多く聞かれるのは「管理職になるようにと上司に言われた。やってみたいけど、今ですら育児と仕事の両立がこんなに大変なのに、管理職の仕事ができるかどうか不安」というものです。やりがいのある立場を用意するのも大切ですが、より働きやすい環境づくりも必要だと思います。

──これから力を入れようと思っているサービスはありますか。

保育所にスムーズに入所するための情報提供やアドバイスをする「保活コンシェルジュサービス」を2013年12月からスタートしています。これは、法人会員向けのサービスなのですが、ダイキン工業様や関西アーバン銀行様など7社と契約し100名くらいの育児休暇の方をサポートしてきました。企業側も早く保育所を決めて、復職してほしいと望んでいるようです。

それと、最近は結婚するのが遅くなっているせいか、子育て世代のご両親がすでに高齢であるケースが多くなっています。現在は高齢の元気なご両親の家事サポートも行っていますが、ゆくゆくは介護と仕事の両立というニーズにも応えていく必要があるのでは、と考えています。

「なぜ働くのか」。その理由を子どもにしっかり伝えてほしい

──働くお母さんの先輩として、共働き世代のみなさんにアドバイスをお願いします。

自分はなぜ働くのか。その理由をハッキリさせておくことです。それも「自分にとっての意味」と「社会にとっての意味」の2つをハッキリさせる。この2つの「働く理由」が明確になっていれば、何かあったときも乗り越えられると思います。

私は大学でも講義をしているのですが、「働く意味を見つけられない」という学生が多いんです。お父さんやお母さんがなぜ働いているのかを聞いたことがない、と言います。

自然体験スクールの夜、小学生にいつも聞いてみるんです。「お父さん、お母さんはどうして働いてるの?」と。すると答えはいつも3種類です。

「働いてなかったら、かわいい服が買えない」

「働いてなかったら、家族で外食に行けない」

「働いてなかったら、マンションのローンを払えなくなる」

子どもにはわかりやすい理由を言っているのでしょうけど、本当は違いますよね。だから、お父さん、お母さんには自分が本当に思っている2つの「働く理由」を語ってあげてほしい。そうすることが、子どもたちが将来、働くことに夢をもつことにつながると思うんです。

上田理恵子(うえだ・りえこ)
 1961年鳥取県生まれ。大阪府在住。大阪市立大学卒業後、ダイキン工業に入社し、業務用食器洗浄機の開発、新規事業開発等に携わる。1992年に長男、1994年に次男を出産。同年、働く母親たちのネットワーク「『キャリアと家庭』両立をめざす会」を設立し、ワーキングマザーの情報交換会を始める。2001年に退社し、マザーネットを創業。2007年内閣府「女性のチャレンジ支援賞」、2010年関西財界セミナー賞「輝く女性賞」など受賞多数。同年より甲南女子大学人間科学部特任准教授就任。著書に『働くママに効く心のビタミン』(日経BP社)。
マザーネット会社概要
 2001年8月27日創業。子どもの病気や親の残業時に、子育て経験者や看護師・保育士資格を持つ「ケアリスト」を派遣するマザーケアサービスを中心に、家事・育児代行、悩み相談、育児休業復帰セミナー、長期休み中の子ども自然体験スクールの開催、月刊情報誌の発行など、きめ細かいサービスを展開。本社所在地は大阪市。東京、長野、福岡に支社がある。現在の会員数は6850名(個人会員5400名、法人会員1450名)で9割が女性会員。

(取材・文 田北みずほ 写真 水野真澄)

[日経DUAL 2015年3月3日、5日付の掲載記事を基に再構成]

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