不用品処分の新常識 壊れていてもパーツに価値あり
掃除で見つかった"いらないもの"。捨てればただのゴミだが、リユース店に持ち込めば、お金に変わる可能性がある。ただ、近所にあるという理由だけでいつも同じリユース店を利用していると、損をしかねない。というのも、昨今は総合リユース店や専門リユース店が全国の至る所にあり、少し足を延ばすだけで、思わぬ高額で買い取ってもらえることもあるのだ。
さらに、実店舗を持たないネット専業のリユース業者も増えている。リアルもネットも、多くのリユース業者は送料無料の「宅配買取」を実施しており、利用者は全国どこからでも、品物を買い取ってもらえる。
しかも、宅配買取はほとんど手間がかからない。ネットや電話で申し込み、自宅まで引き取りにきた宅配業者に品物を渡すだけ。リユース業者によっては、配送用の段ボール箱を無料で提供したり、デジカメ写真を送れば事前に査定見込み額を通知したりするところもあり、とても使い勝手がいい。
では、あまたあるリユース業者のうち、どこで最も高く売れるのか。それは売る品物によって変わる。家電、家具、洋服、ブランド品から切手、書籍にいたるまで、さまざまな品物について約30の業者に取材、査定を依頼した結果、意外な違いが明らかになった。
また少しでも高く売るには、コツがあることもわかった。いつ売るのがベストか、箱や説明書は必要か、きれいにする必要があるのかなど、目からウロコのリユース新常識を紹介する。
近隣に店舗があれば「店頭買取」
捨てるだけで数百~数千円の処理費用がかかってしまう家電や家具。これをリユース店に持ち込めば、"出費"から"収入"に変わる。ならば利用しない手はない。
多くのリユース業者が家電や家具を取り扱うが、すべての品目を買い取るわけではなく、買取金額も千差万別。そこで、商品ごとに売り先を変えるのが得策だ。
ほとんどの業者が買い取るのが、デジカメ、DVD/ブルーレイレコーダー、パソコン、スマートフォン(スマホ)などのデジタル家電。店舗型やネット専業の総合リユース業者の他に、最近はビックカメラやヨドバシカメラなどの大手家電量販店もこの分野の買取サービスに力を入れている。
電子レンジ、炊飯器などの小型白物家電は、家電量販店は買い取らないため、店舗型かネット専業か、どちらかの総合リユース業者を選ぶことになる。
冷蔵庫、洗濯機などの大型白物家電や家具は、売り先がさらに狭まる。宅配便で送れないサイズのため、ネット専業の総合リユース業者の多くは買い取りをしていない。そのため、出張買取サービスを手がける店舗型の総合リユース店が狙い目になる。
では、一例としてデジタル家電の買い取り事情を見てみよう。
なるべく早めに売るのが得
デジタル家電は半年から1年でモデルチェンジするため、価格の下落が激しい。「最も高く買い取れるのは、まだ次期モデルが出ていない、発売後1年未満の商品」(じゃんぱら)。そこまで早く手放すのは難しいだろうが、不要になったらなるべく早めに売るのが第一のポイントだ。
こまめに買い替えるのも手だ。また、古いものであっても、付属品がすべてそろっていることが重要。充電池やケーブル類が1つ欠けただけでも、査定額は大幅に減額される。きちんと保管しておきたい。
デジタル家電は"鮮度"が重要なだけに、リユース業者の販売力によっても買取価格に大きな差が出る。未使用の最新モデルと状態が悪い経年品をそれぞれ査定に出したところ、リユース業者ごとの特徴が見えてきた。
最新モデルの査定額が最も高かったのは、ネット専業の総合リユース業者。主な販路はネットオークションやアマゾンマーケットプレイスで、状態が良ければ、新品と大差ない価格で販売が可能なためだ。
ただ、状態が悪い経年品については、「発売から5年以内」など買取条件を付けている業者が多く、査定額もさほど高くはなかった。ネット販売では購入者が状態を直接確かめられないため高値を付けにくく、積極的に買い取っていないのが実情だ。
逆に、経年品でも高めの査定額を付けたのが、家電量販店の買取サービスだ。最新モデルの査定額はネット専業とほぼ同額。査定が高額な傾向なのに加え、幅広い状態の商品を買い取る点で、有力な売り先といえる。
壊れたものも買い取る家電量販
総合リユース業者のなかには、動作不良品は買い取りの対象外とするところも少なくないが、家電量販店はパーツ一つひとつを細かく査定。デジタル一眼の場合、本体が故障していても、交換レンズ単体として金額が付いた。
なかでも、全体的に査定額が高めだったのがソフマップだ。同社は、グループ企業のビックカメラやコジマの店舗内にも買取カウンターを設置しており、その数は全国100カ所余りと家電量販店の買取サービスでは群を抜く。
加えて、宅配買取も比較的使いやすい。査定額が3000円を超える場合は送料無料になる。1点から送料無料で、査定額に不満なら無料で返却するネット専業の総合リユース業者には及ばないものの、家電量販店としてはハードルの低い条件だ。
また、売却した代金をソフマップのポイントで受け取ると5~10%増額になるのも特徴(コジマの買取カウンターを除く)。このポイントは、家電から玩具まで扱う同社のネット通販で利用できるため、使い勝手は悪くない。
店舗型の総合リユース業者は、新品、経年品ともにそれほど高い査定額が出なかった。総合リユース業者の多くは衣類や雑貨を中心に扱っており、デジタル家電を目当てに店舗を訪れる客はそう多くない。このため、家電量販店のような高額は付けにくいようだ。
しかし、白物家電など家電量販店が買い取らないジャンルでは、店舗型総合リユース業者が有力な売り先となる。
白物家電の高額査定のポイントも、まず第一は、付属品がそろっていること。例えば「ドラム式洗濯乾燥機には輸送中にドラムを固定するネジが付属しているが、これがないと2000~3000円の減額」(高く売れるドットコムを運営するマーケットエンタープライズ)というから要注意。ただ、デジタル家電と違って、外箱や梱包材の有無は査定にはほとんど影響しない。
また、季節家電は売り時も重要だ。扇風機なら夏前、暖房器具なら冬前といった需要期のほうが査定額が上がるという。これは、リユース業者の在庫リスクが少なく済むため。
なお、デジタル家電よりは価格の下落が緩やかな白物家電だが、それでも購入後5年以上経過すると、価格は付きにくくなる。
総合リユース業者のなかでも、特に家電製品に強みを持つのが、ハードオフやオフハウスを展開するハードオフコーポレーションだ。「店頭では、完全に動作しなくても安全性に問題がないものなら原則として買い取る」(ハードオフコーポレーション)。そういった状態が悪い商品は、動作保証をしない「ジャンク品」として売られる。
古い製品でも、「すでに販売が終了しているフィルムカメラやワープロ、ビデオデッキなどには根強いニーズがある」(同社)。実際、自宅に眠っていた30年以上前のオーディオ機器やフィルムカメラの査定を依頼したところ、それぞれ数百円の買取価格が付いた。
ただ、ハードオフにはフランチャイズ(FC)店も多く、その一部店舗はジャンク品は買い取っていない。FC店かどうかは明示されていないため、事前に買取可能かどうか問い合わせたほうがいい。また、宅配買取の場合は、白物家電は製造から5年、ノートパソコンは同3年、デジカメは同7年などの制限がある。
大型家電、家具もネットで売れる
店頭に持ち込むことが難しい大型家電や家具は、出張買取を依頼することになる。店舗型の総合リユース業者の場合、店舗ごとに出張エリアが決まっているため、候補となるのは近隣にある店舗に限られる。
そこで利用を検討したいのが、ネット専業総合リユース業者の「高く売れるドットコム」。ネット専業では珍しく、関東、東海、関西、九州エリアで出張買取をしたり、宅配便より大きなサイズを送れる家財便を利用したりして、大型家電や家具を買い取っている。
特徴は、電話などで品番や年式、キズや汚れの状態を伝え、査定額の目安を事前に確認できる点。その金額に納得してから引き取りを依頼する。まれなケースだというが、引き取り後に改めて査定した結果、金額が大きく変わった場合は、無料で返送も可能だ。
同社では、ドラム式洗濯乾燥機や大型冷蔵庫、高級家具など、ファミリー向けの高額商品を積極的に買い取る。「逆に、単身向けの冷蔵庫や低価格の家具は春先に在庫があふれるので、買取価格は低くなる」(同社)。
一方、単身向けの比較的小型で低価格な家電や家具を積極的に買い取るのが、セカンドストリート(運営はゲオ)。メインの客層が20~30代の独身層であるのがその理由だ。
対照的な両社だが、背景にはコスト構造の違いがある。高く売れるドットコムは、買取時に送料がかかり、販売時にも送料が発生するので、ある程度高額な商品でないとコストを吸収できない。そのため高額商品に重点を置き、1件当たりの買取総額は平均3万~3万5000円という。一方、セカンドストリートのような店舗型の場合、買い取るのも販売するのも近隣エリアで、輸送コストは高くない。むしろ問題は店舗内の展示スペースで、場所を取らない単身向けが歓迎されるわけだ。つまり、ファミリー向けはネット専業、単身向けは店舗型を第一の売り先として考えるのがいいだろう。
(日経トレンディ 内田久貴・佐藤嘉彦)
[日経トレンディ 新生活応援 増刊号の記事を基に再構成]
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