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京都・嵐山に外資が開業 純和風の最高級ホテル

2015/4/25

日経トレンディネット

森トラストグループは2015年3月23日、京都・嵐山の保津川沿いにスターウッドホテル&リゾートの最高級ホテルブランド「翠嵐(すいらん)ラグジュアリーコレクションホテル 京都」を開業した。スターウッドホテル&リゾート ワールドワイドは、米国を拠点に世界約100カ国で1200のホテルを所有・運営する。「セントレジス」「ウェスティン」「シェラトン」といった日本でもなじみのあるホテルなど9つのブランドを展開。なかでも最高級クラスに位置付けられる「ラグジュアリーコレクション」は、世界30カ国に85軒以上を展開し、翠嵐はその日本第1号となる。

場所は京福電鉄嵐山駅から徒歩約5分。有名な渡月橋の手前で右折し、保津川沿いに進むと標高381メートルの自然豊かな嵐山が望める。そのなだらかな稜線を借景に、純和風の門の向こうに静かにたたずむのが「翠嵐」だ。

約5400平方メートルの敷地に隣接して、世界遺産の天龍寺や宝厳院といった名刹があり、平安の昔から貴族が船遊びなどに興じてきた格式高い土地でもある。明治32年(1899年)には、川崎重工業の創始者、川崎正蔵が別荘「延命閣」を建設。「ホテル嵐亭」の時代に利用したことがある人も少なくないだろう。

なだらかな稜線が美しい嵐山を借景に、風情ある佇まいがいかにも京都らしい「翠嵐ラグジュアリーコレクションホテル 京都
ホテルの目の前の保津川はまさにエメラルドグリーン色。川越しに自然豊かな嵐山を望めることから、“嵐山の特等席”が翠嵐のキャッチコピー

かやぶき屋根の風情ある建物は、明治時代に8人の詩人が集まり、嵐山の四季の移ろいを詠んだという「八賞軒」。「茶寮八翠」として再活用された
嵐山の雄大な自然の中に溶け込む館内の庭園を抜けると、3階建ての客室棟へ。庭には保津川上流にある柚子の発祥地、水尾の柚子の樹が植わっている

門をくぐると、築100年を超えるかやぶき屋根の風情ある建物が目に飛び込んでくる。ここは明治時代、8人の詩人が集まり、嵐山の四季を詠んだことから「八賞軒」と名付けられた建物。新たに「茶寮八翠」としてオープンし、嵐山の絶景を望みながら茶菓子や軽食を味わうことができる。

驚いたのは、テラスから望む保津川が翡翠(ひすい)色(エメラルドグリーン)に輝いていたことだ。下流の渡月橋辺りの水の色より蒼さを増している。以前、体験した保津川下りのときにも見られなかった光景を目の前にし、ホテル館内に入る前から感動してしまった。

「茶寮八翠」のテラスは保津川沿いで渡月橋のあたりまで望める絶景ポイント。食事も楽しめるよう、春の特別弁当「桜物語」を用意。秋には月見会も計画中

茶寮の隣には純日本庭園が広がり、その奥には嵐山御殿と称された「旧延命閣」を生かしたレストラン「京 翠嵐」がある。このふたつの歴史的文化的価値のある建物をホテルの施設としてリノベーションし、新たに建てた3階建ての客室棟とで構成。2、3階のほぼすべての客室から保津川越しに嵐山を一望できるレイアウトになっている。今年は既に終わってしまったが、桜のシーズンには一面ピンク色に染まった美しい嵐山を独り占めできるという、春の嵐山ならではの“特典付き”だ。

実は、海外のラグジュアリーコレクションホテルも全てこうした絶景を望めるロケーションにあるという。世界遺産や歴史的建造物、風光明媚(ふうこうめいび)な自然に隣接するというぜいたくな立地が大前提。翠嵐の場合は「嵐山の特等席にふさわしい、この場所を確保できたから進出した」とは、翠嵐総支配人の河本浩氏。

■世界遺産の特別拝観や月見会など多彩な特別体験プログラムも

嵐山の特等席だからこそ実現できる特別体験プログラムが翠嵐の魅力。地域情報にも明るいコンシェルジュが、希望する規模と内容に応じて準備してくれる

絶好のロケーションに加え、ラグジュアリーコレクションの特徴といえるのが、ほかの土地では体験できない特別な観光プログラムの提供だ。サポートするのは、現地観光のエキスパートとしての資格を有するコンシェルジュたち。レストランの予約や交通手段の手配などコンシェルジュとしての通常業務はもちろん、多様な体験プログラムの情報提供やサポートにも手間と時間を惜しまないという。

例えば、スペインのリオハでは熱気球に乗って上空からぶどう園を眺めるツアーを用意。バンコクでは水上マーケットで料理を堪能したり、ウィーン国立歌劇場のボックスシートでオペラを鑑賞したりできる。「その土地ならではの格別の体験プログラムを提供し、一生の思い出に残る旅をサポートする」(翠嵐総支配人の河本浩氏)ことに重きを置いているという。

世界遺産に登録されている複数の寺院で特別拝観できるプログラムも計画中。内容はシークレットだが、通常は拝観不可能なものらしい

同ホテルのウェブサイトを見ると、現時点では世界各国で109の観光体験プログラムが用意されている。翠嵐では世界遺産の寺院などと提携し、通常は拝観不可能な所蔵物や建造物の特別拝観ツアーを計画。また、保津川沿いの日本庭園や茶寮での月見会や、著名な茶道家を招いての野点、ヨガなどここでしか味わえないプログラムを準備中だ。

ハード面では、旅館とホテルを融合したしつらえとデザインが大きな特徴。ホテルのコンセプトである「継往開来(けいおうかいらい)」の考えに基づき、日本のおもてなし文化を象徴する旅館スタイルに、国際基準のサービスと京都ならではの伝統とモダンな美しさを融合。「布団や座敷といった日本文化に慣れない外国人旅行者もストレスなく滞在できるよう随所で工夫している」(同)という。

■最高級ホテルが誇る最高級スイートの中身

スモールラグジュアリーホテルに分類される同ホテルの客室数はわずか39室。そのうち、スイートルーム4室を含む17室に、天然の温泉を引く本格的な露天風呂が付いているのも驚きだ。しかも全てヒノキ框(かまち)の露天風呂。3階の客室でも自然の風景や日本庭園を望めるようにレイアウトされているので、季節を感じながら湯船でゆったりくつろげる。

なかでも、94平方メートルと最大面積を誇る最上階の「温泉露天風呂付きプレジデンシャルコーナースイート・翠嵐」は、大きなガラス窓を多用し、開放感たっぷり。翡翠色の保津川越しに渡月橋までを望む景色は一枚の屏風絵のようにも見える。部屋中央に配した水回りスペースもガラス板で囲まれていて、部屋のどこにいても外の景観を楽しめるよう工夫されている。宿泊料金は消費税・サービス料別で1泊30万円。1室だけなので、桜や紅葉のシーズンには早めに予約を入れておくのが賢明だ。

「温泉露天風呂付きプレジデンシャルコーナースイート・翠嵐」。94平方メートルの広い室内はガラスを多用し、どこからでも眺めは抜群
一枚の屏風絵のように窓一面に嵐山の絶景が広がる空間には保津川を連想させる翡翠色のソファを配置。ここで朝食も楽しめる(露天風呂付プレジデンシャルコーナースイート・翠嵐)

シモンズ製ベッドと日本の伝統色、すみれ色のソファが一層格式の高さを漂わせる寝室。翠嵐は1室のみ。宿泊料金は消費税・サービス料別で1泊30万円
全39室のうち、スイートを含む17室が天然温泉の露天風呂付き。自動的に一定量の湯量を保てる仕組みになっている(温泉露天風呂付きプレジデンシャルコーナースイート・翠嵐)

約90平方メートルに及ぶ、日本庭園と畳敷の和室を持つ「温泉露天風呂付きガーデンテラススイート・玉兎(ぎょくと)」は、3階にいることを感じさせない和のしつらえが特徴。障子を開ければ、縁側があり、灯篭(とうろう)とまっすぐに伸びた青い竹、敷き詰められた白い玉砂利が心を和ませてくれる。また、座敷に慣れていない外国人客の利用を考慮し、高めの座椅子を設置。和室の隣には、和の雰囲気を壊さず、外国人客にも対応した低めのシモンズ製ベッドが配置されている。ベッドからも外の日本庭園を望め、靴を脱いで過ごす和室ならではのリラックス感を得られるのがいい。料金は同23万円。

約90平方メートルの日本庭園を望む和のスイートルーム「温泉露天風呂付きガーデンテラススイート・玉兎(ぎょくと)」。外国人宿泊客も意識し、座椅子の座面は高め
1階にいるのかと錯覚してしまいそうな、広い日本庭園が3階のスイートルームにある。露天風呂や縁側で季節の移り変わりを感じられる贅沢な空間(温泉露天風呂付きガーデンテラススイート・玉兎)

■部屋にいながらスパを体験できる

女性客の人気を集めそうなのが、部屋にいながらスパトリートメントを体験できる「温泉露天風呂付きプレミアムキング・白菫(しろすみれ)」だ。59平方メートルの客室の奥に、スパコーナーを設置。ここでは茶の種子オイルでのボディーマッサージや、「京緑茶」のスクラブ、翡翠石や菖蒲を使用するフェイストリートメントなど、京都ならではメニューが用意されている。「聞香(もんこう)」「塗香(ずこう)」といった伝統的な香道を取り入れたセレモニーを体験できるのも楽しい。

スパサービス料は別途必要だが、宿泊料金は1泊12万円と手が届く範囲。自分へのご褒美旅行として利用する女性が殺到するかもしれない。スパサービスは、貸切露天風呂でも行っており、白菫を予約できなくても80分2万3000円から体験できるそうだ。

月白色をキーカラーとした明るく上品なデザインの「プレミアムキング・白菫(しろすみれ)」。広い露天風呂でゆったりくつろいだ後、スパサービスも受けられる女性受けしそうな客室
抹茶塩や京緑茶など京都ならではの素材や香り、音を用いた他にはないヒーリング体験ができる。1泊2食付き宿泊者限定メニューも用意(プレミアムキング・白菫)

ほかには、唯一掘りごたつを配した1階の和室「プレミアム和室・京 月琴」が同12万円、坪庭と露天風呂が付いた「デラックスツイン(キング)・柚葉」が同9万円。一番手ごろな「モデレートツイン・翠月」は同6万5000円だが、1室だけでテラスも付いていない。宿泊するなら最も客室数の多い「スーペリアツイン(キング)・月の音」には泊まってみたいところ。通常は同8万円だが、オープン記念価格同7万円で泊まれるので、ラグジュアリーコレクションならではのサービスを体験してみる絶好の機会だ。

和室とフローリングを組み合わせた「デラックスルーム・柚葉(ゆずのは)」。坪庭のあるプライベート空間で露天風呂に浸かりながらぜいたくなひとときを過ごせる
月をモチーフとした照明と、碧い水面に映り込む月をデザインしたカーペットが印象的な「スーペリアルーム・月の音(つきのね)」。宿泊料金は1泊8万円

■明治期に建てられた名士の別荘で新スタイルの和食を提供

通常、旅館では客室で夕食をとることが多いが、同ホテルでは1階のレストラン「京 翠嵐」で朝食と夕食を楽しめる。レストランの料理を客室でいただくことも可能だが、料金は若干高い。河本総支配人も「歴史的文化的な建物が持つ風情ある空間で料理を楽しんでほしい」と話す。

「京 翠嵐」は川崎正蔵の別荘として建てられ、嵐山御殿と称された「旧延命閣」を修復、復元したもの。金砂子を用いた床の間や川崎家の家紋入り七宝釘隠など、古くから受け継がれた装飾と、組みひもをイメージしたシャンデリアなど新しいインテリアとが融合した豪華でモダンな空間が印象的だ。

1階のレストラン「京 翠嵐」は川崎重工業の創始者である川崎正蔵の別荘「延命閣」を再活用。梁に取り付けられた家紋入りの七宝釘隠にも翡翠(ひすい)色が取り入れられている。44席

料理は、日本料理とフランス料理のシェフ2人により考案されたディナーコースと、和洋の朝食を用意。ディナーは、世界無形文化遺産として注目を集める和食のスタイルと技法に、フレンチの美意識を融合したメニューが提供される。京都の伝統野菜をふんだんに使っているのも特徴だ。

またシェフが目の前で調理してくれる4人限定の鉄板焼き用個室と、12席のテーブル席を配置した畳敷の個室もあるので、祝い事や接待など用途に合わせて利用できそう。料理の試食はしていないのでリポートできないが、最高級クラスのホテルブランドが挑戦する新スタイルの料理ということもあり、期待が膨らむ。

特別な空間を演出する鉄板焼きレストラン「観山」。4人限定の個室でシェフが目の前で焼いてくれる。貸し切り料金は昼2時間3万円、夜5万円
日本庭園を望むテーブル席が12席ある個室「松月」。和モダンな空間で誕生会や食事会などプライベートなイベントに使えそう

レストランのディナーコースは2万1000円の予定。八寸の山城産タケノコ、お椀の稚アユ、嵯峨野味噌など京都ならではの食材をふんだんに使っている

■世界各地を旅慣れた「グローバルエクスプローラー」がターゲット

京都市内ではここ数年、外資系ラグジュアリーホテルの開業が相次いでいる。2006年に「ハイアットリージェンシー京都」、2014年2月には「ザ・リッツ・カールトン京都」が開業。「フォーシーズンズホテル京都」も2016年をめどに営業開始を予定している。

進出の背景には、円安基調やビザ発給要件の緩和などにより、外国人観光客が急増していることがある。さらに2014年、世界的な旅行雑誌が行う読者投票「ワールドベストアワード」で、京都が初めて世界1位の都市に選ばれたこともあり、海外からの注目度が一層高まっている。

ただ、外資系ラグジュアリーホテルの多くは市内観光やアクセスに便利な京都市内の中心部に進出。いずれも客室数100室以上と規模も大きい。一方、翠嵐はラグジュアリーコレクションとはいえ、中心部から離れた嵐山のリゾート地に小規模ホテルとしての展開だ。しかも、保津川沿いの奥には国内で知名度の高い星野リゾートが、「水辺の私邸」をコンセプトに展開する高級旅館ブランド「星のや」を構える。さまざまなアクティビティを用意するなど、翠嵐のコンシェルジュサービス戦略と競合する部分も多い。まだ知名度の低いラグジュアリーコレクションに勝算はあるのだろうか。

この疑問に対し、河本総支配人はラグジュアリーコレクションというグローバルブランドの強みを強調する。スターウッドグループが展開する国内のホテルでは5割以上が外国人旅行客。翠嵐でも同程度の比率を想定しているという。「特に世界各地を旅慣れた“グローバルエクスプローラー”をコアターゲットに設定。ぜいたくなロケーションと特別な体験プログラムの提供、日本流のさりげないおもてなしで、国内での認知度も高めていきたい」と意気込む。

レストランから日本庭園と嵐山を望む。手入れされた美しい庭園はヨガなどのイベントやパーティにも使われる予定

(ライター 橋長初代)

[日経トレンディネット 2015年3月25日付の記事を基に再構成]

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