見せればランチが500円 勢い続く「ランパス本」日経エンタテインメント!

「掲載されているお店のランチが500円に割引!」で話題のグルメクーポン本『ランチパスポート(ランパス本)』が全国レベルで快進撃を続けている。現在、全国41都道府県の70以上のエリアから発行されており、累計190万部という売れ行きぶりだ(2015年3月時点)。

『ランチパスポート』の仕組みはこうだ。各エリア約100店のランチ情報が掲載された同書を、お店でランチを食べる際に提示することで、通常700円以上する特定のメニューが500円になるというもの。有効期限は発行から3カ月で、各店3回まで使用することができる。読者は使えば使うほど得になるシステムのため、数回利用することで1冊1000円(税込み)の元は取れてしまう。財布に優しいのはもちろんのこと、会社によっては「ランチパスポート部」なるものが作られるなど、ランチコミュニケーションの促進にも一役買っている。

「ランチパスポート」は、掲載店に見せるとランチが500円に割引きされるという、1冊1000円のグルメクーポン本。2011年に高知県でスタートし、現在は全国41都道府県の70エリアから発売。「出版業界も地方がおもしろい」を合言葉に、地方から全国に広がるという、出版界では珍しい現象を生んでいる

もともと最初の『ランチパスポート』は、2011年4月に発売された「高知版」であった。地元でタウン情報誌を発行する出版社ほっとこうちが企画したもので、最新刊はVol.12を数える。企画開発部ランチパスポート課・山本真志氏によると「高知のいくつものお店から、外食でランチをする人が減ってきているという声を聞き、地元を応援する立場として何かできないか」と考えたのが出発点だったそうだ。

その後、商標登録を済ませ、愛媛の出版社SPCが持つ自動組み版システム「PuCS」を導入し、共同でランチパスポート事業を立ちあげた。システムだけなくノウハウも含めたソリューションサービスとして全国の出版社などへ販売を開始したところ、多くの問い合わせがあったという。そのためエリアごとにそれぞれ出版社が違うのも特徴だ。

『ランチパスポート赤坂版』などを制作する、東京の出版社ウィルメディアのコンテンツ事業部・西森康博氏は「自動組み版システムを使うと、写真を登録し、原稿を入れることで本ができてしまう。また表紙や本文ページも幾つかのパターンから選べるようになっており、本当によくできている」と語る。制作を担当する会社には出版経験のないところもあり、この充実したシステムが全国に広がった要因のひとつと言える。

「制限」を設けてヒットに

ヒット商品のため書店も協力的で、特設コーナーが作られることも多い。東京では発売3日で1000部が売れる店もあるという

では「ぐるなび」や「ホットペッパー」など、従来の割引きクーポンとはいったい何が違うのか。それは、あえて多くの「制限」を設けたことが挙げられる。

まずはランチに限定した点。サラリーマンなどにとって、ランチは毎日お金を使うもののため、彼らの需要と見事にマッチした。またネット展開は行わず、サービスを受けるためにはわざわざ本を持参する必要があることも大きい。サイズがポケットに入らない大きさに作られており、利用者が昼休みに持ち歩く姿が宣伝につながっている。発行部数に関しても、お店側のオペレーションを考慮して、最大で1万2000部に設定。基本的に売り切れるため、「急いで買わねば」という読者の購買意欲にもつながっている。

また「四方良し」と呼ばれるビジネスモデルも注目されている。お得に食事ができる読者。掲載料が無料のため、初期費用を抑えて新規顧客が開拓できるお店。短期間で確実に売れるめどのつく書店。そして年4冊刊行のヒットシリーズが得られる出版社。地域内で四者が得をしながらビジネスが回る仕組みとなっている。

2015年中に全県での発行を達成予定の『ランチパスポート』。今後について山本氏は「地方が盛り上がるような様々なイベントも提案していきたい」と出版の枠を超えた展開にも意欲を見せている。

(ライター 中桐基善)

[日経エンタテインメント! 2015年4月号の記事を基に再構成]