商品届かぬ・連絡不能… 悪質通販から身を守るには

悪質なインターネット通信販売による消費者被害が拡大している。「代金を振り込んだのに商品が届かない」「連絡が急に取れなくなった」など、最初から詐欺目的が疑われるケースが急増。価格の安さや見栄えのするサイトのつくりにつられて後悔する人が多い。最低限気をつけるべきポイントは何か。近年の被害の傾向と自衛策を聞いた。
東京都江戸川区は悪質な通販サイトをわかりやすい形で公表する

「大好きなブランドの登山ウエアを探していたら、日本では品切れの色を見つけたので注文した。10日たっても届かなかったが、商品が海外発送なら仕方ないと思っていた」。東京都の女性Aさん(60)は昨年、悪質な通販サイトにひっかかったことを悔やむ。

日本では約3万円のウエアが「旧モデル整理のため」という理由で5割引きだった。「1円でも安い通販サイトを探すのが習慣になっていた」と話すAさんは、他のサイト同様に注文確定のメールがすぐ届いたので安心していた。クレジットカード不可だったが、振込先の指定が国内の銀行だったので翌日に手続きを完了。不審に思った2週間後から問い合わせのメールを何通か出したが、もう何の反応もなかった。

「海外通販のトラブルは明らかな偽物や粗悪品を送りつけるケースが多かったが、2013年からは代金を支払わせて何も送らずに連絡を絶つ悪質な事例が急増した」。通販大手が加盟する日本通信販売協会(東京・中央)消費者相談室の八代修一室長は分析する。ピークだった13年10~12月には同協会への相談だけで1262件に達した。

特徴の一つが銀行口座への前払い要求だ。カード払いは取引に不審な点があれば、間に入るカード会社が悪質業者への支払いを止めてしまう。それを逃れるために「システムの都合で現在カード決済ができません。下記の口座へ振り込みをお願いします」などと誘導して、入金と同時に引き出す手口だ。銀行も振り込め詐欺の一種として対応を急ぐが、口座凍結などの対策が間に合わない。

東京都の男性Bさん(46)は昨年、海外ブランドの高級腕時計を扱う通販サイトの「なりすましサイト」に引っかかりそうになった。華やかな印象の正規サイトをほぼ丸ごとコピーしているので、詐欺サイトと見抜くことは困難。Bさんも購入寸前までクリックを進めたが、「米国の業者のはずなのに、ネットアドレスのURLの末尾が他国のものだった」と気づき不審に思った。念のため口コミ掲示板を見るとすでに数人の被害が出ていると知った。

「怪しい通販はサイトのつくりが貧相で、不自然な日本語表記があり、激安価格を出している印象があった。ここまで完璧だとだまされてしまいそう」とBさん。これまで詐欺サイトはバッグや靴などのブランド品が中心だったが、なりすましサイトの増加で今では数百円の生活用品の被害報告もある。対策において、海外か国内かの線引きは無意味になりつつある。

自治体も被害の拡大に危機感を強めている。東京都江戸川区の消費者センターは13年夏から、区民が被害にあった通販サイトを独自に随時公表している。

「激安価格とうたう悪質な家電通販サイト 所在地や電話番号の記載がなく、典型的な悪質サイトです」。消費者センターが区民からの相談を基に発見した詐欺サイトのトップ画面は、豪華なマッサージ機の写真を中心に日本語の説明書きが付き、整然と構成されている。2月中旬にはアクセスできたこのサイトは、今は跡形もなく消えている。

「悪質業者は簡単にはなくならない。被害を未然に防ぐために具体例を示して、身近な問題として考える材料を提供したい」。消費者センターの田中弘毅所長は狙いを語る。

14年4~12月に区民から寄せられたネット通販詐欺の相談件数は135件に達し、既に項目別でアダルトサイト料金請求や架空請求などに続く5位に。「シニアより、通販に慣れた20~40代のスマホ世代の被害が目立つ」ため、啓蒙手法を工夫する考えだ。

国民生活センターは今年6月、海外通販のトラブルに対応する越境消費者センターを消費者庁から引き継ぐ。相談体制を順次拡大し、全国の自治体と連携して市民向けの情報提供を進める。

今や生活に欠かせない通販だが、不安に感じたら確認すべき点を表にまとめた(表参照)。まずは自衛が第一だが、Aさんのように「正規店で購入しなかったことを非難されそうで」泣き寝入りする人は多い。自治体や国民生活センター、通販大手の業界団体は警察などと連携して対策を進めている。あきらめずに相談してほしい。