痛い・重い・だるい 腰の痛み、内臓疾患の可能性

日経ヘルス

背中から腰にかけて、痛い、重い、だるい……。そんな症状が現れることもある。原因は内臓の病気かもしれない。お腹の中の仕組みと、症状別に原因と思われるものを紹介しよう。

「体の後ろ側の『後腹膜(こうふくまく)』という場所の臓器に異常が起こると、背中や腰に痛みなどの症状が出やすい」と芝大門いまづクリニックの今津嘉宏院長。

図1 お腹の“外側”の後腹膜にあるのは、十二指腸や膵臓、腎臓など。また、心臓からの血液を全身に送る大動脈も背中側を走っている。これらに異常があると、背中や腰に症状が現れやすい

お腹の中には、腹膜で囲まれた腹腔というスペースがあり、この中には胃や肝臓、大腸などの臓器が収まっている。いわゆる“お腹”の臓器だ。この腹膜の後ろの場所が、後腹膜。ここには十二指腸や膵臓、腎臓などがある(図1)。「後腹膜はいわばお腹の“外”。だから、ここに異常があると背中や腰に症状が出やすい」(今津院長)

なるほど、お腹の“中”と“外”で症状が出やすい場所が異なるというわけ。たとえば、高熱とともに膀胱炎のような症状が現れる腎盂腎炎(じんうじんえん)。腎臓は“外”にあるので、背中から腰にかけて痛みが出る(図2)。

「子宮の場合は、半分はお腹の中にあるが、もう半分は外にある。このため、子宮内膜症の場合は、下腹部だけでなく、腰の方にまで重い痛みが出てくる」と今津院長。

また、胸膜の後ろを通る大動脈に異常が生じた場合も、背中に痛みが出やすい。

整形外科系の病気は、姿勢や動作に伴って痛みなどの症状が現れやすいが、内臓の病気の症状は必ずしも姿勢とは連動しない。図2で思い当たる症状がある人は早めに内科で受診を。

痛みの部位でわかる内臓疾患 (チャート図考案は今津院長によるもの)

【背中右上部に出る痛み】

▼肺炎、肺結核など「響くような痛み」

▼気管支炎など「背中全体に広がる痛み」

カゼや喘息、喫煙などが原因で、急性気管支炎になることも。咳や痰、胸の不快感のほか、咳をすると背中全体に痛みが広がる。肺炎や肺結核でも、咳き込むと背中にまで響くような痛みが生じることがある。痰のからむ咳や胸痛、発熱、息切れなども伴う。

図2

【背中右下部に出る痛み】

▼十二指腸潰瘍など「差し込むような痛み」

▼肝炎など「体のだるさを伴った痛み」

▼腎盂腎炎、腎結石など「発熱を伴った痛み」

十二指腸潰瘍は20~40歳の比較的若い人に多い。空腹時にみぞおちや右側の背中に、差し込むような痛みが生じる。肝炎の場合は、右わき腹から背中にかけて、だる重いような痛みが起こりやすい。痛みや発熱を伴う腎盂腎炎や腎結石は、左右それぞれ発症する可能性がある。

【腰まわりに出る痛み】

▼尿路結石など「間欠的な痛み」

▼卵管炎、子宮外妊娠など「高熱を伴った痛み」

▼子宮内膜症など「下腹部全体の重い痛み」

尿路結石では、七転八倒するような痛みが突然出現。痛みは出たり消えたりを繰り返す。細菌のクラミジア感染などで起こる卵管炎、受精卵が子宮外に着床する子宮外妊娠では、高熱を伴い腰まわりが痛む。子宮内膜症では月経痛が重く、痛みは下腹部から腰にまで及ぶ。

【背中左上部に出る痛み】

▼狭心症、心筋梗塞など「手で握られるような痛み」

▼解離性大動脈瘤、大動脈瘤など「引き裂かれるような痛み」

心臓の冠動脈が狭くなったり詰まったりして、心臓に血液が十分供給されなくなるのが狭心症や心筋梗塞。胸の痛みが一般的だが、背中にまで痛みが放散することも。大動脈の内膜が裂けて瘤(こぶ)ができる解離性大動脈瘤などでは、引き裂かれるような激痛が突然起こる。

【背中左下部に出る痛み】

▼膵炎、膵臓がんなど「耐え難い痛み」

▼腎盂腎炎、腎結石など「発熱を伴った痛み」

急性膵炎は、脂肪の多い食事をした後や過度の飲酒後に起こることが多い。胆石が原因で起こることも。耐え難い痛みが、みぞおちから左上腹部、背中側にまで及ぶ。細菌感染で起こる腎盂腎炎、腎臓に結石ができる腎結石では、痛みだけでなく、発熱も伴う。

この人に聞きました

今津嘉宏さん
 芝大門いまづクリニック(東京都港区)院長。専門は消化器外科、漢方など。慶應義塾大学医学部外科、麻布ミューズクリニック院長などを経て、2013年から現職。「頭のてっぺんから足先まで診る」がモットー。著書は『89.8%の病気を防ぐ上体温のすすめ』(ワニブックス)など。

(ライター 佐田節子)

[日経ヘルス2015年4月号の記事を基に再構成]

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